ネオ・トゥリーズの歌唱力から生まれる、音楽を身体で味わう感動
第3期BiSが僕の推しグループになったのは、『STUPiD』が第3期の楽曲として最初に公開された日だったし、ネオ推しになったきっかけもこの音源で聴いたネオちゃんの歌声でした。全員の声を聴き分けられてはいなかったけどネオちゃんの声だけははっきり分かって、この人をライブで観れるの楽しみだなって思うようになりました。観たらやっぱりめちゃくちゃ好きだった。
ネオちゃんはよく歌唱力が高いと評されます。サウンドプロデューサーの松隈ケンタさん曰くピッチ(音程)、声量、リズム感といった歌に関わるあらゆる能力が高いそうです。特に動画で紹介されてた、地声でかなりの高音が出せるっていう話はインパクトが強くて、研究員以外のWACKのオタクにもかなり知られてきたんじゃないかと思います。
これから先、BiSがもっと大きなグループになっていったら音楽の専門家がネオちゃんの歌唱力について分析する記事とか動画がきっと出てくるでしょう。そうなる前に、オタクもオタクなりの言葉で形にしておこうと思います!
多少楽器が弾けるものの素人に毛が生えた程度の知識しかないので、客観的な分析をすると見せかけて好きなポイントをただただ主観的に語ります。長くなりますが、お付き合いいただけたらうれしいです。
デビュー当時から圧巻の正確さ
いきなりですが、自分がアイドルになったところって想像できますか?読者の大半を占めるであろうそこのおじさんたちも考えてみてください!!
約2カ月で、完全な新曲を16曲、人前で歌えるようにならないといけません。曲を覚えることは当然として、さらにクオリティを高めていかなければいけないとしたら、何から練習してどんな優先順位で精度を高めていきますか?
僕だったらですが、
曲を聴きながら歌のメロディと歌詞を併行して覚えて、それから大きい声で歌えるようにしていくと思います。さらにダンスしながら歌えるようにしないといけない。それ以外のことは後回しになるか、そもそも何をすべきか思いつかなさそう。
で、ここからが本題です!僕の過去のツイートをご覧ください。
第3期BiSの初ワンマンライブはメジャーデビュー4日後に開催されました。その映像を何度か観た後の感想がこれです。
ピッチが正確だし声も強くて、なんて上手い子なんだろう、好き、と思いながら観ていました。
ただ、観ているうちにだんだん気付いていきました。踊りながらでもリズムが乱れてない。天才なんじゃね?と。まだライブ慣れしてなくて俯きがちだったけど、そんなアイドルとは思えない、強すぎる歌声がかっこよかった。
人間はテンション上がったり心拍数上がったりするとリズムよくわかんなくなっちゃうことがあります。ライブでアンコールって叫んだり手拍子したことある人ならなんとなくわかると思いますが、自分は一定のつもりでも、周りが速くなっていったらリズムをキープするの難しいですよね。
ライブ中のステージ上も似たようなもので、ふとした瞬間にリズムがずれてしまうことがあります。誰かがずれると、それに周りが引っ張られてしまうこともあるから大変です。
例えば『absolutely meeeeee!!』とか『strawberry girl』のサビのような、メンバーの声が交互に重なる歌って、先に声出してる人のリズムが少しでもずれてると、後から入っていく方ってかなり難しいです。
だけどネオちゃんは多少のずれなんてものともせず、自分のパートになったらバチっとリズムに合わせていました。歌がリズムに合ってるとお客さんもノリやすいよね。
音楽=リズムって考え方があるくらいリズムは大切なんだけど、大御所歌手がよくやるような、わざと少し遅らせて“タメ”を作る表現があるくらいだし、リズムって多少アバウトでも音楽として成立しちゃう気がしませんか?
歌詞を間違えるとか、音程を外す、そもそも声出てないっていうミスに比べると、他者からも自分からもわかりづらいから、リズムを初めから強く意識できる人はなかなかいないように思います。
ただ、ノリや一体感を生み出すうえでは、やっぱりリズムって超重要になります。BiSはゆったりした音楽というより、テンポの速い曲が多いからなおさらです。
だけどネオちゃんにはノリを人並外れたリズム感が備わっていて、このリズム感から、素晴らしい音楽が生まれました。
リズム感から生み出される感動
そのリズム感に目を付けて、とんでもない曲を作ってきたのが松隈さんでした!
5月26日(なんと明日です!!)発売の『TOUCH ME』。この落ちサビがすごい。こちらのYoutubeリンクがちょうどいいところから始まります。
8小節、約10秒にわたってネオちゃんの声だけになります。CDを買った人はinstrumentalの方を聴いてみるとネオちゃんのすごさが実感できると思います。無音。すっっごい無音。
生演奏だったら歌にバンドが合わせられるし、イヤモニしてればクリック(メトロノーム的な音)を聴きながらテンポを保てますけど、BiSはイヤモニなしで音源を聴きながら歌ってるから正しいタイミングで入るのはめちゃくちゃむずい。
この曲は2020年7月に発売されたカセットテープ『イミテーションセンセーション』にシークレットトラックとして収録されたけど、CD発売も音源配信もないまま、10月のライブで初披露されました。ライブは生演奏じゃないし、イヤモニも、クリックの入った音源も当然用意されてない。
ライブまでの期間、こんなのできるわけがないというネオちゃんの涙ながらの訴えは無慈悲なスタッフさんたち(いつもありがとうございます)に却下され、ひたすら練習を重ねて成功率を上げてくしかなかったそうです。
BiSはライブ音源にメンバーの声が入ってるのでそれが唯一のヒントになるかもしれないけど、同じ声なんだから混ざっちゃってほとんど聞こえないはずです。ていうか声に合わせて歌おうとしてたら遅れていくし、おそらく力ない歌声になってしまいます。
だけど、歌声は本当に力強かった。初披露の日も、それ以降の公演でも、しっかりとリズムキープしてTOUCH MEを歌い上げました。自分に厳しいから彼女の中では100点じゃなかっただろうけど、研究員からすれば100点を遥かに越えるくらいの感動でした。
感動したのはリズムキープできてるからじゃありません。無音の会場に響く声の迫力に引き込まれたからです。アカペラって、気持ちとか歌詞に込められたメッセージがいつもと違ったニュアンスで伝わってくるんだってことをあの時に初めて知りました。あれは、何度でも、ライブで味わいたい。たくさんの人が、あの声に触れて欲しいと思います。
“音楽そのもの”みたいな声
まだ第3期BiSのメンバーが顔出しもしていない頃のインタビューで、ネオちゃんは自分の歌声についてこんな風に話してました。
「可愛い声とかが一切出せないので、ただ地声でワーワー歌う感じ」
なるほど。トギーちゃんは独特な口調が使えたり、ティ部ちゃんはナチュラルにセクシーなクセがあったりしたので、比べてみるとそうかもしれません。たしかにネオちゃんは声の強弱で曲の雰囲気を表現することが多かったように思います。
ただ、大きく出せる地声がとんでもない長所でした。地声で高音を出せる話はさきほどしましたが、低音も他のメンバーたちと同じように出せます。なので高い声が出せるっていうより、音域が広い人なんですよね。
ネオちゃんの声質はBiSのなかで比較的強く、太い方だと思います。この声で繰り出される低音域はかなりの迫力です。吐き捨てるような歌い方や、がなり声も声質に合った表現だと思うし、叫ぶようなロングトーンは圧がすごい。ロングシャウトといえば『FUCKiNG OUT』です。
余談ですが、このリキッドの映像もいいけど、LINE CUBE SHIBUYAのFUCKiNG OUTがすごいっていうかとにかく良いので、2nd EP「KiLLiNG IDOLS」の初回限定盤Blu-rayを観たことがない方にはオススメです。
このシャウトに限らずですが、ネオちゃんが声量全開で歌ってる時って、歌声が会場を埋め尽くして、収まりきらなかった分が四方八方からドンッて襲ってくるみたいに感じます。音が反響してるんだから当然のことを言ってるみたいだけど、その圧が強いんです。野外のライブだと、真っすぐ伸びてくから飛距離すごそうだなーとか思ってます。
WACKにはアイナ・ジ・エンドさんというすでに音楽業界ですごい存在感を放ってる歌姫がいます。松隈さんはネオちゃんに「アイナを超えろ」とか難易度高いことを言ってるらしいです。ただ、長所が被ってたら世に出ていくのは難しいかもしれませんが、幸い2人はタイプが違うからチャンスは存分にあるように思います。
ライブで聴いた回数がそれほど多くないので的外れだったら申し訳ないのですが、アイナさんの歌声は、彼女のこれまでの人生とか人間性が声にのっかって、全身からにじみ出してくるような歌だなって思っています。心とか感情に沁み込んでくる印象です。
ネオちゃんの場合は、正確な音程とリズム、真っすぐなでっかい声で、音楽そのものが身体と脳にぶつかってきます。音を浴びせられる感じ。
こう表現するとなんだか無機質で機械的な印象になるかもしれません。でも、BiSとして活動するまで感情を失ってたっていう、ネオちゃんのキャラクターにはすごく合ってると思いませんか??白くて消えちゃいそうとか、宇宙人みたいとか言われるような人でしたから。
とにかく正確ででっかい歌声に、BiSでの経験を通して取り戻した、あるいは新しく獲た感情が込められていくところを2年間でたくさん観られたように思います。意志の強さとか、逆に弱い部分とか、やさしさとか、音楽を届けたい相手への愛情とか、ライブを楽しむ気持ちとか、BiSとしての覚悟とか。
そういう変化を見られるのってすごく素敵なことだと思うし、オタクにとっては本当にうれしいことです。
さらにうれしいことに、ネオちゃんの表現力が増していくためには、それを受け取る研究員がきっと欠かせないんですよね。そんなうれしいことはないので、研究員としても、できる限りの声援と愛を返し続けていこうと思います。
それが続いていけば、すでに素晴らしすぎるくらいの歌声が、もっともっと魅力的になっていくんだろうなと思います。ネオ・トゥリーズの歌唱力は、きっとまだまだ伸びますよ。