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ここにだけ書き記す『Editorial』

2021.8.18『Editorial』発売



発売日から遅れること4日、やっと頭から最後までアルバムを通して聴いた。
発売日にはちゃんとBlu-ray付きが家に到着していたのに。


聴けなかった。
端的に言うと、怖かった。


最近、自分の気持ちが変わっていき始めているのを薄々自覚していたからこそ、この『Editorial』を聴いた時に自分がどう思うのか、どう感じるのか、全然想像できなかったから。


だから聴くのが怖かった。

でも今日やっと向き合ってみる事にした。


私はSpotify派でドルビーアトモスを体感できないので、とにかくイヤホンで音量を目一杯上げて1音も1言も溢さないように、と願いながら聴いた。


まず、“アポトーシス” の後に聴く “I LOVE…” は全然違う曲に聴こえた。
“115万キロのフィルム” を聴いてる時の感覚と似ていて、目の前に人物がいるかのように、手を伸ばせば皮膚に触れそうなくらいにリアルで。そこに “お互いを大事に想い合っている2人” がいる。
その感覚を、この“アポトーシス”からの“I LOVE…”の曲順だと特に強く感じた。


そして、そのリアル感がより一層大爆発し、私の中で大問題だった“Shower”

驚いた。3分の1ほど曲が進んだ時、勝手に目から水滴が落ちた。
でも正直なところ、それは感動や共感の涙ではなくて。
「あ、私、この曲、最後まで聴くの無理だ………」の涙だった。


誤解のないように言っておくと、私は彼らのリアコではない。
この曲を聴いて流れた涙はその辛さによるものではないのは断言できる。


何というか、とにかく生々しく、そして自分とのコントラストが激し過ぎたのだ。


この曲は「他人と寄り添って生きる幸せをちゃんと感じた事がある人しか描けない曲」だと思ったから。


決してそれが悪いのだと言いたい訳ではないし、むしろその幸せを知っている事は誇るる事だと思う。
きっと私は人一倍その幸せに憧れがあるからこそ、この曲に心を抉られたのだと思う。


自分とは正反対、S極とN極みたいに、絶対に自分と交わる事のない世界線の歌のようだと自分勝手に感じてしまっただけ。
でも、ダメージを真正面から受けて、アルバムのちょうど中間地点でHPはあっという間に0になった。


それを癒してくれたのは“フィラメント”、“みどりの雨避け”、“Bedroom Talk”だった。


個々人の好きな音楽、言葉の選び方の色がはっきり出ていて、この一見すると混ざらなそうな全く違う色が1つのアルバムの中に無理なく同居している事にとても安心感を覚えた。


そして、

“Shower” で大ダメージを受けた後には、めちゃくちゃ正直に言うと「なんて事をしてくれたんだ、さとしふじはら………」と恨み節が頭をよぎったのだけど。


“ペンディング・マシーン”、“Lost In My Room” を聴いた後には「何も知らない奴が好き勝手思ってごめん、さとっちゃん………」と180度 手のひら返しで、脳内でスライディング土下座をした。


この2曲には「生きていればそういう幸せを感じる瞬間だけが訪れる訳じゃないよね」と、これまたリアルに描かれていて。


しんどいし、うざったいし、迷うし、全然思った通りに上手くいかないし、誰かに内臓をジワジワと掴まれているような、ストレスが毎日少しずつ着実に積み重なっていく、あの感じ。


しかも彼らのように表に立って第一線で活動していたら色々と………そりゃ苦しいよな〜〜……………(突然のPretender)


とにかくこのアルバム、聴くと感情のメーターが右に左に振り切れて、全曲聴き終わった後にフゥ〜〜…と1つ大きく息を吐き出してしまうほど、とても体力を消費したな。


『Traveler』は全曲リード曲だと本人達も言っていたように 全方位向けにド直球を投げてくれていたのでこちらもスコンッと打ち返しやすかったのだと思うけど、
『Editorial』は今までに見た事がない意図的な変化球をどう打ち返せばいいのか、聴く側が相応の覚悟を持って受け取らなければいけないというプレッシャーを凄く強く感じた。


否定している訳ではない。

セカンドアルバムでこれを差し出してくる彼らは変わらずに音楽に真摯に向き合う人達なのだという事、そして私はすでに彼らと離れる離れないの次元にいないという事を 改めて思い知った。


こんな風に全っ然まとまらない感情を書き殴ってしまい「全部消そうかな…」なんて考えていたら、私の中のさとっちゃんがケロケロボイスで歌い始めた。

伝えたい だけど語れない
そんなこの気持ちの後先を
ここにだけ書き記す
だけど上手く書けず喜んでる
そっちの方が幸せだから
   - Editorial -  Official髭男dism


なので、まとまらなくてもぐちゃぐちゃでも、初めて『Editorial』を聴いたままの感情を、ここにだけ書き記すよ。
上手く書けるようになるまでちゃんと聴くね。
そっちの方が愛しそびれない気がして幸せだから。

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