日記(10) -親知らず抜いた-
親知らずを抜いた。上の歯を1本。
虫歯になりやすいから、遅かれ早かれ抜いたほうが良いよ、と4年ほど前からかかりつけの歯科医で言われていた。でも親知らずを抜くって…痛いんでしょ?夫の経験談やネットの記事を見るたびにあおられる恐怖心。しっかり磨いて絶対虫歯になんかさせないぜ!
と、頑張っていたものの、この度ついに抜歯することとなった。結局、親知らずと隣の奥歯のすき間にしっかりと虫歯ができていたからだ。
抜歯の予約を取ってから、ネットの情報に振り回される毎日。
「上の親知らずの抜歯は痛くない」「腫れない」「いや、私は痛かった」「腫れた」「もう二度とやりたくない」
そんな情報を見るたびに虫歯になったことを悔やんだ。もう遅いけど。どちらにせよ抜歯後は痛みと腫れがあるだろうということで、抜歯翌日の仕事は休みにさせてもらった。
当日。夕方、閉院間際の歯科医院についた私の心臓はバクバク。深呼吸して落ち着こうと思うも、名前を呼ばれた瞬間一気に血圧が上がった。
明らかに元気のない私を見た先生は「痛くないから大丈夫だよ」となだめてくれた。補助の歯科衛生士の女性も「頑張ってくださいね~」と隣でずっと励ましてくれた。30代も半ばになって情けない。けど、未知なる体験(手術)することがこんなにも怖いとは。「あ~、本当に今すぐ家に帰りたい。」椅子を倒されながら思った。が、もうやるしかない。
麻酔され、口の中の一部の感覚がなくなる。口の中に広がる変な味と違和感。器具が入り、先生がものすごい力で親知らずに「何か」をしている。怖くて目は絶対に開けない。痛みはないのに振動だけが骨に響く。「本当に抜けるのか…?」と途方に暮れながらも恐怖に耐えること30分。縫合を終え、椅子が起こされた。
抜けた親知らずは絵にかいたような「歯」だった。根もしっかりあり、「これを抜くんだからそりゃこれだけ大変なわけだ」と変に納得した。
1週間後の抜糸の予約をし帰宅。約2時間後から歯茎に痛みが出る。麻酔が切れたのだ。食事の代わりにゼリー飲料を飲み、鎮痛剤を服用しその日はすぐ布団に入った。
不安と緊張で、精神的にも身体的にも疲弊した1日だった。
翌朝、少し腫れた左頬。口の中は血の味。おそるおそる歯を磨く。
腫れも痛みも想像していたほどではなかった。が、抜歯後は食事など気を使うことも多く、なんだかんだ辛い。次の抜糸まではまだまだ気疲れする毎日を過ごすことになるのだろうと思い、途方に暮れた。でも、もし放置していたら‥?数年後、親知らずを抜かなかった自分を後悔する気もする。
親知らずは抜歯後の痛みに耐えるのはもちろんだが、まずその前に抜くという恐怖を乗り越える必要がある。30代半ばにしてやっと経験した親知らず抜歯。歯医者が怖いなんてこの年で思うとは‥私はまた一つ人生をしっかりと歩んだんだ…と言い聞かせた。親知らずの抜歯に意味を持たせこの経験を受け入れるのであった(え?)
とにかくもう二度とごめんだ。