横須賀シップインフォメーションというのがあった。
それは2001年9月15日、アメリカ同時多発テロでニューヨークの国際貿易センタービルに旅客機が激突した9.11テロから4日後まで続いていた関係者だけが知る非公式テレフォンサービスだった。
「横須賀シップインフォメーション」の利用者は艦艇に乗船している乗組員の家族がいつ、帰ってくるか一々問い合わせる事なくこのテレフォンサービスを聞けば簡単に済むという誰か賢い人が考えたもので、佐世保など他の海軍基地にはないサービスだった。
利用するのは乗組員家族だけではない。地元商店会も利用者だった。
例えば当時、横須賀基地に前進配備されていた巡洋艦バンカーヒル(CG-52)やモービルベイ(CG-53)の乗組員は1隻で358名、駆逐艦オルデンドルフ(DD-972)やオブライエン(DD-975)の乗組員は1隻で最大で339名、フリゲート艦カーツ(FFG-38)やマックラスキー(FFG-41)の乗組員は1隻あたり航空要員込みで225名。これに航空母艦インディペンデンス(CV-62)の乗組員2900名+航空要員2279名。旗艦ブルーリッジ(LCC-19)の司令部要員約190名と攻撃型原潜としてロサンゼルス級の潜水艦に133名。これだけの人が帰港と共に顧客としてクリーニング屋さんに正装を出し、酒を飲みに繰り出し、補給物資の発注がまとめてやってくる。クリーニング屋は出港日前日までには絶対に顧客に渡さないといけない、発注商品は出港何日前までに完納しなければいけない、家族はいつまで一緒にいられて送り出す日に備える。誰もが生活に密着した大問題の情報源、それが横須賀シップインフォメーションでした。
それほどに必要とされているものの、非公式であるが為に品質がイマイチだったのがテープに録音する人が一人でない為に、時々大変な目にあってしう事だった。録音時の声が小さくで聞こえない、発音が明瞭でない。しかし一番、手こずったのは。訛りがひどくて何を言っているのか全く判らない。これだけはどうにもならなかった。記録的には前日の記録から推測するしかない。そこは非公式なんだから仕方がない。
とにかくテープで流れるアナウンスを一度聞いて判るものではないので録音し、何度も聞き返してようやく判る状態。
この横須賀シップインフォメーションをインターネットが普及する以前のパソコン通信で当時の大手プロパイダだったNiftyの会員向けサービス「フォーラム」の中に私が作った軍事情報フォーラム「ディフェンス・レビュー・フォーラム」で日々、文字情報としてアップデートしていました。
しかし2001年9月11日の同時多発テロの4日後にサービスは停止し、5日目以降、テレフォンサービスに電話しても「間抜け野郎はとっとと帰って来い」としかアナウンスせずで終了となりました。
最後に2000年10月8日のシップインフォメーションを文字化したものを載せましょう。
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1.滞在艦
クラス名 No 艦 艇 名 桟橋
ブルーリッジ級揚陸指揮艦 LCC19 ブルーリッジ 6
アーレイバーク級駆逐艦 DDG54 カーチス・ウィルバー MW
スプールアンス級駆逐艦 DD975 オブライエン 8
スプールアンス級駆逐艦 DD985 カッシング ME
オリバ-・ハザード・
ペリー級フリゲート FFG48 バンディ・クリフト d4
オリバー・ハザード・
ペリー級フリゲート FFG51 ゲアリー 3
3.出港艦(10/10)
クラス名 No 艦 艇 名
アーレイバーク級駆逐艦 DDG54 カーチス・ウィルバー
スプールアンス級駆逐艦 DD975 オブライエン
*桟橋略号
ME=ハーバー・マスター東桟橋 MW=ハ-バー・マスター西桟橋a
MEa=ハーバー・マスター東桟橋a MWa=ハ-バー・マスター西桟橋a
d5=ドライドック5 d6=ドライドック6
a=“aboard”停泊している艦艇の隣に接岸する事
NP=横浜港瑞穂埠頭(ノースピアFAC-3067)或は鶴見貯油施設
(FAC-3411)のどちらか
A=anchorage;投錨地;A1・A12=給油ステーション
湾内=No tack;航路外に投錨
notes;
1)10月8日・9日の予定はありません。
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こんな感じでした。