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ビザ申請で「パートナーとの関係性」を証明する方法とは?【オーストラリアのビザの話8】
2人の関係が本物で、社会に認められていて、家庭生活も共にしていて、長期的な展望も持っている、という「証拠」を示すのは簡単なことではない。オーストラリアでパートナービザを申請する場合、それらを全てオンラインで提出する必要がある。何の書類が何の説明として機能するのか、足りない証拠はないか、僕がパートナービザ申請の際に悩みに悩んで提出した書類の数々を、誰かの参考になればと思い挙げてみる。
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結婚・事実婚の証明書だけでは足りない
専門のビザエージェントに頼らず、自力で書類集めからビザ申請までを行ったのが2018年。結論からいうと、この時に申請した僕のパートナービザ(サブクラス820)は無事に発給された。
パートナービザの申請では、「Identity documents(身分証明書)」や「Character documents(人格・性質についての書類)」と並んで、「Your relationship with your partner(あなたとパートナーとの関係)」の証明を提出する。
この「証明」は、2人が相互にコミットメントを持ち、他の人とは異なる特別な関係であり、関係が本物で継続中であり、2人は一緒に暮らしていて(例外あり)、親族や親兄弟とは異なりカップルであることを示すものでなくてはいけない。まずベースとなるのは、以下の2つだ。
2人の関係性のヒストリー(ビザ申請フォーム内にて文章で説明)
結婚や事実婚の法的な証明書(スキャンしてPDFに)
しかし、これだけでは2人の関係を証明し、説明するのに十分とは言えない。
「2人の関係性」を証明する4つの補助的証拠
上の2つを裏付ける情報として、「Supporting evidence of the relationship(2人の関係性についての補助的な証拠)」も求められる。これは以下の4つのジャンルにわたって用意する。
Finances(経済事情)
Your household(家庭内の状況)
Social matters(社会的な出来事)
Commitment(コミットメント、関わり方)
この4つについて僕がまず最初につまずいたのが、「何を求められているのか正直よく分からない」という点だった。例えば「家庭内の状況って具体的に何だ?」「2人のコミットメントを示すって、どうやって?」という状態から、それぞれの項目の解説を熟読し、ネット検索などもしながら必要書類が何かを考え、準備を進めていった。
1.経済事情(Finances)
2人の関係性を経済事情から示す方法として、移民局のサイトでは以下のような書類を提出することが挙げられている。
joint mortgage or lease documents(共同名義の不動産・賃貸契約書)
joint loan documents for major assets like homes, cars or major appliances(共同名義のローン契約書:家屋、車、主要な家電など)
joint bank account statements(共同名義の銀行口座明細)
household bills in both names.(家計費の共同名義の請求書)
「Finances」のために僕が用意した書類
僕らの場合は、Financesの項目について以下のような書類を用意した。
アパートメントの賃貸契約書(2人名義。最新のもの)
購入した家電の領収書(2人名義)
共同名義の銀行口座明細
電気代、インターネット料金の請求書(2人名義)
賃貸契約は入居の際に2人名義にしておけば、自然と契約書が証拠として手に入る。僕らの場合は一緒に暮らし始めるタイミングで電気やインターネットの契約も2人名義にした。ただし、NSW州では車は共同名義への変更ができないと言われ、証拠として使えなかった(※2018年時点の情報)。
高額なローンを組んで買ったものもなかったので、代わりとしてオンラインで購入した家電の購入者名を2人にしておき、領収書を提出した。
銀行の共同名義口座は、パートナービザをいつか申請すると決めた時点で銀行で作っておいた。毎月決まった金額を2人で入金し、2人で使うものや食費、家賃、光熱費などをここから支払うようにした。口座明細を提出するからには、ただ共同名義というだけでなく継続的な入出金が記録されている必要があるだろう。明細はオンラインで取得できた。
2.家庭内の状況(Your household)
外からは見えにくい家庭の中の状況を説明する方法としては、文章での説明と、以下のような書類の提出が推奨されている。
a statement about how you share housework(ビザ申請フォーム内で家事の分担を文章で説明)
household bills in both names(家計費の共同名義の請求書)
mail or emails addressed to you both(2人宛の手紙またはEメール)
documents that show joint responsibility for children(子供に対する2人の共同責任を示す書類)
documents that prove your living arrangements(居住地・形態を示す書類)
「Your household」のために僕が用意した書類
家事の分担は文章であらかじめ書いておき、ビザ申請時にフォーム内に記入。字数が入り切らない分は「残りはWordファイルで添付します」と記載した。ちなみに家事の分担の内容は、「平日の夕食の調理は2人で交互に担当し、週末は2人一緒にキッチンに立って朝食と夕食を作ります。僕はアジアンフードをよく作り、パートナーはイタリアンと中華が得意です」といったことを事細かに書いた。
他に、以下のような証拠を用意した。
業者からのEメール(2人のメールアドレス宛)
友人・家族からの葉書やクリスマスカード(2人宛)
ネット購入の日用品など配達ラベルと領収書(2人宛)
アパートメントの賃貸契約書(2人名義。最新のもの)
「居住地・形態を示す書類」については、先の「Finance」の項目でも使った賃貸契約書が目的を兼ねていると判断(このように1つの書類が複数項目の証拠として使われることがあっても構わないそうだ)。同時に、2人宛の葉書などの郵便物が賃貸契約と同じ住所になっていたことで、居住の実態を説明できると考えた。
3.社会的な出来事(Social matters)
社会から見た2人の関係性を示す上で、この項目では
Evidence that others know about your relationship(第三者が2人の関係性について知っているという証拠)
を出す必要があり、「 Form 888 – Statutory declaration by a supporting witness(宣誓供述書)」という書類を、「条件を満たす人物×2人」に書いてもらう。カップル両方を直接知っていて、その関係性についても知っている18歳以上の人で、なおかつオーストラリア市民か永住者という条件がある。僕らは、付き合い始める前からの共通の友人2人にお願いして書いてもらった。
この「Social matters」については、他にも以下のような書類を提出する。
joint invitations or evidence you go out together(2人宛の招待状や2人が一緒に出かけた証拠)
proof you have friends in common(2人に共通の友達がいる証明)
proof you have told government, public or commercial bodies about your relationship(政府、公共機関、民間組織に対して2人の関係を説明した証明)
proof you do joint sporting, cultural or social activities together(2人でスポーツや文化・社会的アクティビティに参加した証明)
proof you travel together(2人で旅行をした証明)
「Social matters」のために僕が用意した書類
あまりアクティブでない僕らにとって、日頃からかなり意識しておかないと証拠を集めるのは難しかった。最終的に出したのは以下のような書類だ。
友人からのホームパーティーの招待メール(2人のメールアドレス宛)
外食や買い物などの際に2人で撮った写真
共通の友達と一緒に撮った写真
ディファクトの証明書(Relationship certificate)
民間保険のカップルプランに加入した領収書
2人で出かけたイベント、映画のチケットと会場で撮った写真
2人で旅行した際の航空券、宿の領収書(2人名義)、写真
どうしても写真に頼る部分が多くなり、セルフィーを多用した。友人らと写っているものは特にそれぞれの写真に説明を付けて提出することで、どういう状況で、いつ、誰と何をしたかが分かるようにした。
ホームパーティーの招待メールは、事前に頼んで2人宛に送ってもらうようにした。幸い、パンデミックが起きる前だったので、2人で参加できるイベントがあったおかげでどうにかなったともいえる。
僕らのケースでは「Finance」や「Commitment」の部分で提出できる情報が多くなかったので、せめて「沢山提出できる部分は多く出そう」と考え、写真や領収書の時期がバラけるように意識して集めた。
4.コミットメント、関わり方(Commitment)
日本語に直訳しにくい「commitment」という言葉には、「責任、約束、言質、参加」などの意味もある。ここでいうコミットメントは、2人の関係が長く深いものとなる予定であり、両者がそれに責任を持っていることのようだ。その証拠を示す必要がある。
have knowledge of each other’s background, family situation or other personal details(互いの生育歴や出身、家族の状況、個人的なことを知っているか。ビザ申請フォームに文章で回答)
have combined your personal matters(個人的な問題を共有した証拠)
stay in touch when apart(離れている時に連絡を取り合った証拠)
are not related by family(親族や親兄弟ではない証拠)
can also provide the terms of your wills as evidence(遺言)
「Commitment」のために僕が用意した書類
僕はパートナーとよく話をするほうなので、育った環境や価値観、家族との関係、未来のビジョンなど聞いて印象に残っていたことを文章にまとめた。特に、2人の共通点や、違ってはいるものの互いに影響し合った点などを中心に書き、2人が一つの将来のビジョンに向かっていることが分かるようにした。他には以下のような書類を用意した。
スーパーアニュエーション(年金)の死亡時受取人の証明書(declared beneficiaries)
まだ別々に住んでいた時、数週間離れていた時のテキストメッセージのログ
戸籍謄本の写し
遺言を用意するのは時間的な問題もあったのでパスして、代わりになるか分からないが遺産として、片方が先に亡くなった時に年金の受取人としてお互いを指定する書類を作った。これはスーパーアニュエーションの会社のサイトにログインし、指定フォーマットを印刷して記入し、証人のサインをもらって郵送して完了した(会社によるかもしれないので要確認)。
テキストメッセージのログは、日本語でやり取りをしていたものは専門のNAATI翻訳家によって英語にしてもらう必要があった。
必ず、最新情報の確認を
パートナービザに限らず、ビザ情報は予告なく条件が追加されたり、変更されたりすることがある。ここで挙げたのはあくまでも2022年9月現在の移民局のウェブサイトに載っている情報であり、僕個人の解釈(翻訳)も加わっている。
実際にビザを申請し発給までたどり着いて思ったのは、「移民局が求める証拠書類がないなら、じゃあ何でそれを代用するか」をしっかり考えたのはよかったのかもしれない、ということだ(正解は移民局のみぞ知る、だけど)。例えば、「共同名義のローン契約書」が無い代わりに共同名義で買った家電の領収書を提出する、といったこと。こうして1つずつの項目に対して抜けがないかをチェックし、1つずつ丁寧に対処していくことが必要なのかもしれない。
僕が提出した書類の例も挙げたが、それが本当に正解だったのかどうかは分からず、専門家ではないので責任を取れるものでもない。あくまで一つの参考程度として受け止めてもらえたらと思う。必ず移民局のウェブページの「Step by step」のタブを一度通して読んでから、書類集めをスタートしてほしい。なんなら最新情報は僕がここに書いたこととは違っているかもしれない。
いずれにしても用意するものがとにかく多い。僕の場合は、必要書類リストを作って優先順位を決めて取り掛かったのは良かったと思っている。