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フルーツバスケット S1 ~7話 春になりますね~

「おい!あいつまた家を出たぞ!!」
夾が慌てて居間の扉を開ける。

「透くんなら友達の家に出かけたよ。」と紫呉。
「人の話もまともに聞けないのか。」と由希。

「珍しく出かけたりするあいつが悪い!!」
そう言いながら恥ずかしくなって顔を赤くする夾。

***

透は草摩家の立派な門の前に立っていた。
前日にはとりから電話で1人で来るようにと
言われていたので由希達には内緒。

しばらくして「Hello!!」と紅葉がひょっこり現れる。
はとりのところまで案内してくれるようだ。

***

はとりの家に到着。
診察室のような客間に通される。
机に1人の女性の写真が飾ってあった。
厳しそうで怒っているように見えるはとりが
こんな風に写真を飾っているのは意外だと感じる透。

はとりは草摩の主治医で1族の人間しか見ないという。
そして大半は病気になりやすい草摩の当主、慊人の世話係だと。

草摩では本家を「中」と呼び、それ以外を「外」と呼ぶ。

「中」…50人ほどいて、十二支や身内、その秘密を知る人たち。
「外」…100人ほどいる。お世話係や働く人など?

「十二支の秘密を知っている人は少数しかいないので、
外部の人間(透)に知られてしまった場合
本来であればすぐに隠蔽するのが普通だ。」

はとりが淡々と話す。

「君は紫呉の家で暮らすのは楽しいか?」

透が少し萎縮しながらも「はい、とても」と答える。

「俺は出ていくことを勧める。これ以上草摩に関わるな。
草摩は奇怪で陰湿で…呪われている。

物の怪に憑かれた草摩の暮らしは想像するほど楽しくない。
後悔する前に出ていけ。
慊人はお前を利用しようとしている。」

そう言った後、玄関のチャイムが鳴る。
はとりはその場を去る。

***

はとりがここまで言うのには理由があると紅葉。

はとりにはかつて恋人がいた。
「カナ」と言う女性で、はとりの机に飾ってある写真の人だ。

カナは草摩家に関わる人物で(おそらく「外」の人)
医者であるはとりの助手だった。

明るく前向きで優しいかカナに、はとりも惹かれていった。
十二支の秘密がばれた時カナは、はとりを優しく受け入れた。
2人は結婚の約束をした。

でも慊人が許さなかった。
当主である慊人は絶対なので慊人がダメと言ったらダメ。
慊人は怒り、はとりの左目にケガを負わせる。
そのせいで今、はとりの左目はほとんど見えない。
それでもはとりは慊人を責めなかったという。

はとりのケガは自分のせいだと責任を感じたカナは
自分を責め続けて心の病気になってしまう。
もう以前のような関係には戻れなかった。

そんな壊れていくカナを見ていられなかったのか
2人がともに過ごし、愛し合ってきた記憶を自らの手で消した。

はとりのもとを去るカナ。
はとりは泣いていた。
それでもやっぱり慊人を責めなかったという。

***

「…どうして。」と泣きながら紅葉に問う透。


「それが呪いだから。」

「ハリー(はとり)はもう、カナみたいな人を出したくないんだ。
透にはカナみたいに傷ついて欲しくないんだよ。」

紅葉の言葉を聞いてその場に座り込み泣く透。
自分が何かしたせいで透が泣いたと思って焦り謝る紅葉。

「違うんです。はとりさんがあんまりに優しい方だから。
私は皆さんと出会えて良かった。
もし本当に何かに利用されて今の暮らしがあるのなら
私はありがとうと言いたいです。
関わらなければ良かったなんて後悔は絶対にしません!!」

少し安心したような表情を見せる紅葉。

「大丈夫ですよ!!透くんを利用なんてしてませんから。」

振り向くと紫呉とはとりがいた。
先ほどのチャイムは紫呉だった。

なぜここへ?と透が紫呉に聞くと
紫呉曰く「小説家の第6感が働いた」らしいが、
本家での正月の様子を見に来た様子。
(草摩家ではお正月は1大イベントで
この時期は「中」も「外」も大忙しらしい。)


はとりは本当に透が心配で呼び出したらしい。(半ば強引に)
今日はすまなかったと透に謝り正門まで見送るはとり。

道中にある階段で足を滑らせた透を助けようとして
はとりと透はぶつかってしまう。

スーツの中にちょこんといたのは小さなタツノオトシゴだった。
そう、はとりの十二支の姿は「辰」である。
(そして、そのことをとてもコンプレックスに感じている。)

辰に変身し、ピチピチと跳ねるはとりを見て
「水?海水?どちらですかー!?」と
慌てる透の声を聴きながら、はとりはカナと出会った時の事を思い出す。
(カナも初めてはとりの姿を見た時に透と全く同じ反応をした。
そして辰のはとりを風呂に入れた。←笑)

***

「質問です。雪が溶けると何になるでしょう?」と、はとりに聞くカナ。
「水になる。」と答えるはとりに
「ぶっぶー!!春になるんですよ!!私、春が1番好きです。」
そう言って微笑むカナを思い出す。

はとりにとってカナは「春」だった。
文字通り恋をしたという意味もあるけど
暗く沈んだ雪のようなはとりの心をカナは溶かしていった。

結果は記憶を消すという辛いものとなったけど。

自分はずっと暗い雪の中にいて死んでも構わないから
どうか、どうか、カナには幸せが訪れますように…

***

「はとりさん!!はとりさん!!大丈夫ですか?」
目覚めると透が横にいた。

草摩の敷地内にあるベンチに寝かされていた。
透に変身した姿を見られたことにへこむはとり。(←笑)

途方に暮れていると後ろで複数の女性たちが
通りすがりに話しているのが聞こえた。

「そっか。ついに結婚か。おめでとう!!カナ!!」
「旦那さんどんな人なの?」
「一緒にいて安らげる人。あ、でも顔ははとりさんの方が
カッコいいけどね。ずっと憧れだったから。
片思いで終わったけどねー。」

2年ぶりに見たカナは、あの頃と同じように笑っていた。
その顔を見て優しく見守るはとり。
「おめでとう。」とつぶやく。

雪が降ってきた。
「どうりで今日は冷えるはずです。」と少し嬉しそうな透。
落ちていく雪を見ながらどうか、どうか幸せになって欲しいと
カナの幸せを願うはとり。

ふと、カナの言葉を思い出す。

「君は、雪が溶けたら何になると思う。」と透に聞くはとり。

「そうですね…。春になりますね!!
今はどんなに寒くても、春は必ずやってくる。不思議ですね!!」

そう答える透を見て少し微笑みながら「そうだな。」と返すはとり。

***

はとりが透を正門まで見送ると1台の車とすれ違う。
透と慊人が初めてお互いに目が合った瞬間だった。

***

7話終わり。


*ここ好きポイント

◆やっぱ辰になってピチピチしてるはーさんかな。
自分も辛いのに人の幸せを心から願える人は強い。
私なんて心がミジンコだから慊人を一生呪うだろうね。←

はとりとカナのお話は何度見ても泣いてしまう。
こんなにお互いを想って愛してるのに
なんで、なんで…。ってなる…。
私は雪が降ったらはとりの幸せを願うようにするよ。
滅多に降らないけど。









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