学校は子どもの安全を第一に考えるところではないのか

 学校は子どもにとって安全な場所であるべきなのに、本当に残念だが8月22日に北海道伊達市の小学校2年生児童が体育の授業を終え、校舎に戻る途中で意識不明になり救急搬送されたが帰らぬ人となってしまった。熱中症によるとみられている。
 北海道のエアコン設置率は小中学校16.5%と全国平均に比べ圧倒的に低い。それは「寒冷地」なので空調設備は不要という、これまでの考え方に依っている。しかし、今や北海道は東京や沖縄より気温が高い日が何日もあって、これまでの「常識」では計り知れない状態になっている。
 児童が亡くなった日は、炎天のもと2年生全クラス(3クラス)で3時間目、4時間目の2コマを使って「体力テスト」の練習を行なっていたという。教員ら7人がついて、児童に6回の給水をさせていたと報じられている。日陰があれば随分と体感は違ったかもしれないが、この小学校に昼の時間帯、日陰はほとんどない。ボール投げや雲梯などをする順番待ちはさぞ暑かっただろう。この小学校では水筒持参だが、水筒の中は水飲みに限定されていた。この日、伊達市は過去最高の33.5度を正午過ぎに記録した。
 北海道教育委員会は、今年も5月に「学校における熱中症対策について(通知)」を出して注意を呼びかけている。夏季は「暑さ指数」を確認して授業するよう促している。ちなみに28度を超えると「熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。10〜20分おきに休憩を取り、水分・塩分の補給を行う。暑さに弱い人は運動を軽減または中止」と「暑さ指数を用いた活動判断」を例示している。
 この日は、2学期が始まって最初の体育授業だったという(北海道は夏休みと冬休みを半々に分ける学校が多いので、夏休みは8月20日くらいに始まる学校が多い)。北海道は「体力テスト」の結果が全国平均より下回っているので、少しでも記録を伸ばすよう練習することを北海道教育委員会は奨励している。「全国学力テスト」でもそうだが、こうした事情が体育授業を他の教科に振り返ることを躊躇わせたのだとすれば、子どものより学校の事情を優先させたことにならないか、モヤモヤは募る。
 現場の教員は直に子どもと接しているから、どうすれば子どもの学習意欲を高められるかを理解しようと努力しているし、その判断は尊重されるべきだ。
 でも、先述のような事情が横槍のように挟まってくれば、その判断は従持ってしまうかもしれない。

 考えるべきは2点。
(1)子どもたちが学ぶ環境がとってもひどい
屋外は言うまでもないが、教室内も気温も30度を超えることが多く、空調設備が整っていないので、扇風機を2台用意しているくらい。暑い空気をかき回しても涼しくはならないのは自明。旭川市は盆地なので特に夏季は暑く、教室内は35度を超えることもあるという。
給水も、たとえばスポーツドリンクを用意できるよう国が補助を出すよう財源化することも求められる。水筒に水しか入れないと学校が指示を出すのは、水しか持ってこれない家庭があるからだ。
直ちに快適に学習できる施設の整備を行うべきだ。自治体にその施設整備を負わせるのは財源上厳しいので、国の補助が早急に必要になる。
(2)「〇〇テスト」対策はやめるべき
今回の事故は「体力テスト」対策の体育の授業中に起こった。「体力テスト」対策でなければ、他の授業に振り替えられたかもしれない。熱中症予防措置を学校に求める北海道教育委員会は一方で「体力テスト」の結果向上を求めて練習を促している。そもそも、「〇〇テスト」は児童生徒の成長の過程を図るもので、抽出調査で数年に一度行えば統計的に足りると言うのが一般的に認められたエビデンスだ。
それを毎年、全員に求めること自体、それを競争と捉えさせ、競わせる狙いが透けて見えている。それは誰のためのテストなのか。学校では子どもの学力や体力を把握するために、授業のかなで大なり小なりテストを行っている。その結果が子どもに返されて、学びの道筋を示すようになっているのではないか。
「〇〇テスト」のための授業は、そこを過ぎれば忘れられてしまう「定着性」の至極低い学びと言える。そのための準備に授業を当てるのは本末転倒と言わざるを得ない。

 この2点を、今回を教訓に考えていってもらいたいと、全ての学校に申し上げたい。学校というより教育委員会、教育委員会というより文部科学省に。

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