2019年 高崎経済大学 二次試験 日本史
かっぱの大学入試に挑戦、21本目は高崎経済大学の日本史。2020年度の問題を入手できなかったため、2019年度の問題を解きます。時代は古代で1題・中世・近世で1題、近代で1題、近現代で1題の計4題。形式は用語記述+語句選択。では、以下私なりの解答と解説。
第1問 古代の外交
問1.(1)解答 ①:高句麗 ②:新羅
解説 古代の外交の基本問題。①は「中国東北部から起こった」「313年に楽浪郡を滅ぼした」といった記述から判断。②は「辰韓から」おこったとあり、しかも直前に「馬韓から百済が」とまで書いてあるので流石に間違えようがない。
(2)解答 う・お
解説 中国の南北朝時代の南朝といえば宋・斉・梁・陳と移り変わっていくが、日本史のみの知識では斉を南朝と判断するのはやや難か。金は鎌倉時代、秦は弥生時代、清は江戸時代における中国の王朝ということは理解しておきたい。
(3)解答 玄菟郡
解説 難。というかこれを問うのは些末だろう。漢の武帝が楽浪郡と共に設置したの四郡とは真番郡、臨屯郡と玄菟郡であるが、高校日本史において理解する必要があるかは疑問。
問2.(1)解答 ③:渡来人 ④:五経博士
解説 古代の外交の基本問題。③は「鉄器・須恵器の生産、機織り・金属工芸などの諸技術」を伝えた人たちとなると渡来人が適切だろう。④は「百済から」「儒教を伝え」た者といえば五経博士である。五経とは儒教の経典を指す。
(2)解答 う
解説 「倭の五王」の記事が掲載されている中国の歴史書は『宋書』倭国伝。「魏志」倭人伝は邪馬台国について、『日本書紀』には南朝への朝貢について記載なし、『後漢書』東夷伝は奴国の金印の話など弥生時代の記述、『漢書』地理志は『後漢書』よりも前の弥生時代の小国分立状態の倭国について記されている。
(3)解答 江田船山古墳
解説 「漢字の使用」「熊本県」「銘文が刻まれている鉄刀が出土」と言えば江田船山古墳。埼玉県の稲荷山古墳と区別しよう。
問3.(1)解答 ⑤:橘諸兄 ⑥:和同開珎
解説 奈良時代の基本問題。⑤は「吉備真備や玄昉」を重用したこと、「738年に右大臣」になったことから判断。⑥は「日本で708年に鋳造」から判断。
(2)解答 い
解説 894年に遣唐使の大使に任命となれば菅原道真である。粟田真人・藤原清河・石上宅嗣は奈良時代に遣唐使に任命された人物。小野篁は平安時代初期に遣唐使に任命された人物。
(3)解答 契丹(遼)
解説 渤海を10世紀半ばに滅ぼしたのは契丹と呼ばれる民族で、後に国号を遼として中国東北部で勢力を伸ばした。
第2問 室町時代の外交
問1.(1)解答 ①:勘合 ②:寧波
解説 室町時代の外交の基本問題。①は「遣明船」「明から交付」「証票」と来れば勘合貿易の勘合であろう。②は遣明船が入港した都市ということでやや難しく感じるが、16世紀半ばに大内氏と細川氏が日明貿易の拠点で争ったことを想起して答えたい。
(2)解答 あ
解説 明からは洪武通宝や永楽通宝といった貨幣が輸入された。至正通宝はマニアックだが元の貨幣、開元通宝は唐の貨幣、寛永通宝は江戸時代の貨幣、乾坤通宝は後醍醐天皇が建武の新政で鋳造しようと計画した貨幣。
問2.(1)③:李成桂 ④:応永の外寇
解説 室町時代の外交の基本問題。③は「1392年」「朝鮮を建国」した人物と言えば倭寇討伐で名を挙げた李成。④は「日朝貿易」を「一時中断」させた「1419年」の出来事ということで、朝鮮軍が倭寇の本拠地とみなして対馬を攻撃した応永の外寇である。
(2)解答 釜山
解説 朝鮮の三浦の中で一番分かりやすいところ。富山浦が釜山、乃而浦が熊川、塩浦が蔚山に当たる。
(3)解答 い・お
解説 やや難。日朝貿易における朝鮮からの輸入品と言えば木綿・大蔵経が筆頭に挙げられるが、米や麦も輸入された。銅・刀剣・工芸品は当時の日本の輸出品にあたる。
問3.(1)解答 ⑤:尚巴志 ⑥:コシャマイン
解説 室町時代の周縁史の基本問題。⑤は「三山を統一」して「琉球王国」を建国した人物と言えば尚巴志。⑥は「1457年」「アイヌ」「大首長」「蜂起」とくればコシャマインである。江戸時代のシャクシャインと区別。
(2)解答 1609年
解説 薩摩の島津家久による琉球王国制圧の年代。何のおもしろみもない問題だが、江戸時代初期ということをよく把握しておこう。
(3)解答 え
解説 やや難。道南十二館に当てはまらないものを選べといっても、中国銭の大量に出土した志苔館と、現在につながる箱館以外はなかなかおさえられないだろう。勝山館は蠣崎氏の祖の武田信広がコシャマインの戦いの後に築城したものである。
第3問 近代の政治・文化・外交
問1.(1)解答 ①:超然主義 ②:民力休養 ③:松方正義
解説 明治時代の政治の基本問題。①は「政府は政党の意向によって左右されない」という定義までしっかり示されており、超然主義とわかる。②は「第一議会」において「民党」が主張した「政費節減」とならぶキーワードと言えば民力休養である。③は「第1次山県有朋内閣」の後であり、「第2回総選挙で激しい選挙干渉」を行った内閣なので第1次松方正義内閣の事である。
(2)解答 憲政党
解説 「自由党」と「進歩党」が1898年に合同した政党と言えば憲政党である。しかしすぐに旧自由党系の憲政党と旧進歩党系の憲政本党に分裂した。
(3)解答 吏党
解説 初期議会において、立憲自由党や立憲改進党など反政府野党が民党、政府支持党が吏党と呼ばれた。
(4)解答 品川弥次郎
解説 第2回総選挙における「激しい選挙干渉」と言えば長州出身の政治家である品川弥次郎が中心に行ったものである。
問2.(1)解答 ④:張学良 ⑤:満蒙 ⑥:犬養毅 ⑦:溥儀
解説 満州事変に関する基本問題。④は「張作霖の後継者」「国民政府に参加」から、張作霖の息子の張学良が当てはまる。⑤は「軍や右翼が」「危機を叫んでいた」と言えば満蒙(満州と蒙古=モンゴル)の危機である。⑥は「第2次若槻礼次郎内閣」の後で、「1931年」に組閣した「立憲政友会総裁」なので犬養毅。⑦は「清朝最後の皇帝」で満州国の「執政」となったのは溥儀である。
(2)解答 板垣征四郎
解説 やや難。「満州事変を計画した関東軍の参謀」だが石原莞爾ではなく、「第一次近衛・平沼両内閣で陸軍大臣」と言われてもピンとこない受験生も多かっただろう。正解は板垣征四郎で、戦後A級戦犯として死刑となった。
(3)解答 石橋湛山
解説 『東洋経済新報』の記者であり、「第二次世界大戦後は首相になった」と言えば鳩山内閣の後に首相となった石橋湛山である。石橋は『東洋経済新報』において満蒙権益放棄論などを主張していた。
(4)解答 十月事件
解説 このころ「未遂に終わったクーデタ事件」と言えば三月事件と十月事件があるが、満州事変勃発後に若槻首相の殺害を目論んだのが十月事件である。2つの事件の違いはやや難しかったかもしれないが、起きた時期から考えることもできる。
(5)解答 傀儡
解説 もはや言葉の問題であるが、「他国による実質的な支配が行われている政権」を傀儡政権と呼んだ。満州国以外にも、日中戦争中の汪兆銘政権などが挙げられる。
問3.(1)解答 ⑧:ロマン主義 ⑨:自由劇場
解説 明治時代の文化に関する基本問題。⑧は「自由な精神と感情表現を重んじる」「北村透谷らの雑誌『文学界』がその拠点」からロマン主義文学と判断。⑨は「日露戦争後」「小山内薫ら」「新劇といわれた」とあり、自由劇場である。小山内薫といえば築地小劇場も有名であるが、こちらは1924年に創設。
(2)解答 あ・い・お
解説 森鴎外の作品と言えば『舞姫』『即興詩人』『阿部一族』『高瀬舟』などがある。『海潮音』は上田敏、『雪中梅』は末広鉄腸の作品。
(3)解答 『明星』
解説 与謝野晶子の詩が掲載された雑誌といえばロマン主義運動の中心にもなった『明星』である。
(4)解答 『一握の砂』
解説 「石川啄木の第一歌集」なので『一握の砂』が正解。なお、第二歌集が『悲しき玩具』である。
(5)解答 硯友社
解説 「尾崎紅葉・山田美妙らによって結成」された「写実主義」のグループは硯友社である。
第4問 昭和の経済
問1.(1)解答 ①:輸出 ②:輸入
解説 世界恐慌の中で金解禁を断行した結果であり、「正貨の海外流出」となったのだから、日本のものが売れず外国のものに正貨を支払うこととなった、つまり輸出の減少、輸入の増加である。
(2)解答 生糸
解説 「アメリカ向けの輸出に依存」「農村にも大きな打撃」と言えば、幕末以来日本の主要な輸出品であった生糸である。
(3)解答 あ:旧平価 い:新平価
解説 金解禁の詳しい理解が必要な問題。井上準之助蔵相は円の国際的な信用を落とさず、生産性の低い不良企業を整理・淘汰して日本経済の体質改善をはかるために、円高で輸出商品が割高になることを覚悟で、100円=46.5ドルの新平価ではなく100円=49.85ドルの旧平価で金輸出を解禁(金本位制の復帰)をしたのである。
(4)解答 重要産業統制法
解説 昭和恐慌の際に制定された、「基幹産業のカルテル結成を促すことを目的とした法律」とは重要産業統制法である。政府による統制経済のきっかけとなった。
問2.(1)解答 ③:近衛文麿
解説 「1938年」「国家総動員法を制定」から近衛文麿内閣と判断。
(2)解答 ④:議会(帝国議会)
解説 国家総動員法の内容についての問題。政府が議会の承認なしに戦時の労働力や物資の統制・運用する権限を与えられた。
(3)解答 国民徴用令
解説 「国民を強制的に軍需産業などに就労させる」勅令といえば国民徴用令である。
(4)解答 価格等統制令
解説 価格の「据え置き、値上げを禁止する」勅令なので価格等統制令である。なお、(3)も(4)も「勅令」とあるのは、(2)で見たように議会の承認を得ずに政府だけで成立させたものなので勅令となっている。
(5)解答 企画院
解説 「物資動員計画の作成など経済統制の中心的な役割」を担ったのは1937年に設置された企画院である。
問3.(1)解答 ⑤:石炭
解説 「傾斜生産方式」において、「鉄鋼」「電力」「肥料」の他に資材や資金を集中した分野なので、石炭が当てはまる。
(2)解答 あ
解説 難。傾斜生産方式を提唱した経済学者であるが、青木周蔵は条約改正を進めた明治期の外務大臣、河合栄次郎は『ファシズム批判』が発禁となった戦中の経済学者、河上肇は『貧乏物語』を記した大正期の経済学者、福田徳三は大正期の社会政策学派の経済学者。有沢広巳は人民戦線事件で検挙されたが、戦後傾斜生産方式を提唱した。
(3)解答 復興金融金庫
解説 「基幹産業への資金供給に重要な役割を果たす」「インフレーションを激化させる要因ともなった金融機関」とあり、戦後復興期の復興金融金庫が該当する。「正式な名称」なので、略称の復金は不可だろう。
(4)解答 360円
解説 経済安定九原則における単一為替レートでは、1ドル=360円に設定された。これがニクソン=ショックを経てスミソニアン協定により1ドル=308円となり、1973年からは変動為替相場制へと移行した。
以上で終わり。ほとんど山川出版社の『詳説日本史』から引っ張ってきたような内容でした。久しぶりに論述問題の解説は無かったのですが、問題数がそこそこ多かったです。一部マニアックすぎるなぁといった感じでした。
次は高崎経済大学の世界史。