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-櫻井昭二を偲んで-
『西公園こけし塔』 と
『櫻井家』に受け継がれるこけし
こんにちは。
桜井こけし店の櫻井尚道です。
早いもので昨日、令和5年3月27日は先代櫻井昭二の一三回忌でした。
皆さまには生前より変わらぬ、ご厚情に対し、厚くお礼申し上げます。
この度、西公園のこけし塔が40年振りに修繕されたこともありまして
祖父の櫻井昭二を偲んで、『西公園こけし塔』 と 『櫻井家』について
少し書かせていただきます。
宮城県仙台市の西公園にあるこけし塔が40年振りに修繕されました。
– 西公園『こけし塔』 –
西公園『こけし塔』は昭和36年(1961年)
宮城県の「伝統工芸・観光振興のシンボル」として、仙台商工会議所が中心 となり設置された鋳物のこけしである。大沼又五郎作とされる鳴子こけしを基に、安倍郁二さん(産業 工芸試験所東北支所長)がデザインしたものであり、高さ7.4m(秋保石で造られた台座も含めた高さ は9.8m)、重さ約8tである。山形市の(株)鈴木鋳造所で鋳造され、陸上自衛隊の手で、関山峠を越え て仙台に運ばれ、3日がかりで建立された。
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西公園にひっそり立つ
こけしの塔
幼少期、
鳴子温泉から
たまにしかいかない仙台
西公園の前を車で通ると
昭寛(父)が
『家(櫻井家)で作ってる、大沼又五郎のこけしがモデルになっている塔だよ』
と通る度に必ず言っていたのを覚えています。
また、昭二(祖父)は
幼少期
大沼又五郎のこけしを製作している昭二(祖父)に
何を作っているのか聞くと
『鳴子こけしの創始者である、大沼又五郎のこけしを作らせてもらっているんだ』
『尚(私)も、こけし屋さんになって作れるようになるといいな』
と誇らしげに言っていた笑顔が今でも思い出されます。
『西公園こけし塔』と『櫻井家』の関わりは
先代、櫻井昭二から始まります。
昭和三十年代中頃
いよいよ仙台市西公園のこけし塔の完成が近くなってきた頃
鳴子のこけし工人数人に、『こけし塔落成記念こけし』の見本製作の依頼があったそうです。
『西公園こけし塔』の図面が渡され、
昭二はその図面を参考にしながら、自分なりのこけしを作り送りました。
昭二の作った見本のこけしが採用されることとなり、
100本の『こけし塔落成記念こけし』を注文いただき、
製作することになったそうです。
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昭二はこの製作が
その後、自分が大沼又五郎型のこけしを作る
きっかけになったのではないかと言っていました。
(大沼又五郎のこけしと櫻井家についてはまた、今度書かせていただきます。)
40年振りの修繕を記念して
【こけし塔修繕記念こけし】の製作 そして寄贈
冬のある日に、
仙台市の公園課の方が、
こけし塔について話を伺いたいとお店にやってきました。
お話を聞くと、
令和5年3月末ごろに西公園のこけし塔が、
40年振りに修繕する予定であるとのことでした。
その話を
昭寛(父)と二人で聞いていた時、
昭寛(父)はちょうど仙台市に寄贈するために
仙台市広瀬通りに生えていたイチョウの木を使って
こけし等のモデルとなった
『大沼又五郎型』のこけしを製作しているところでした。
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担当者の方と話しまして、
仙台市に『こけし塔の修繕記念』として、
『仙台市広瀬通りのイチョウ材を使った 大沼又五郎型』のこけしを
仙台市に寄贈させていただくこととなりました。
また、昭寛と二人で話し
修繕工事が終わるのが、令和5年3月末とのこと
ちょうど祖父昭二の13回忌というのもあり
これも何かのご縁だろうと
昭二が製作した『こけし塔落成記念こけし』を元として
【こけし塔修繕記念こけし】を製作し
関係者の方々に寄贈することにしました。
【こけし塔修繕記念こけし】を作るにあたり
昭寛は今回、
大沼又五郎のこけしと向き合う中で、
『古いんだけど、新しい、、、
新しい自分のこけし作るんだと言われているようだ、、、
不思議なこけしだ・・・』
と言っていました。
今回製作にあたり、櫻井家にある
こけし塔の資料を再度見直し製作を行いました。
【こけし塔修繕記念こけし】は
先代、昭二が製作した『こけし塔落成記念こけし』
を元にしながらも、
『大沼又五郎のこけし』
『西公園のこけし塔』
『こけし塔建設の図面』
『こけし塔落成記念 縮小版 七寸鋳物こけし塔』
『戦災復興事業完工記念 七寸鋳物こけし塔』
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左:戦災復興事業完工記念 七寸鋳物こけし塔
それぞれの特徴を踏襲し、昭寛なりの解釈で製作したこけしとなりました。
また、当初の予定にて塗装の色が茶色の予定と聞いておりまして
その色に合わせ有色材である山桜の木材にて製作しました。
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―そして寄贈―
仙台市への寄贈
3月21日 昭二の十三回忌の法要を行い
3月22日 こけし塔を仙台市に寄贈、
また、関係者の方々にも寄贈させていただきました。
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左:又五郎型(仙台市広瀬通りのイチョウ材を使用)
仙台市から
『今後もこけし塔のこけしを作っていただき、
西公園のこけし塔、こけしの文化発展に役立てください』
とのことでした。
寄贈する関係者の中に、こけし塔をデザインした
安倍郁二さんの娘様がいらっしゃりたくさんのお話を伺うことができました。
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設計当時、安倍郁二さんが何度も何度も天江富弥さんのところを訪問し
こけしの話を伺い、大沼又五郎のこけしを何度も見に行ったこと
こけし塔に込めた『考え』や『想い』を伺うことができ
感動いたしました。
また、寄贈したこけしを大変喜んでいただき
『このこけし塔のこけしを次の世代に繋いでいってください』と
言われた事は、嬉しさと同時に身の引き締まる想いで
よりこけし作りに精進していかなければと思わせてくださいました。
―最後にー
四十年振りに修繕された事で、
これからも仙台市の方々を初め多くの方々に
このこけし塔が愛されて残っていくことでしょう。
当時の関係者の方々が工芸の発展を願い作りあげた、
このこけし塔に込めた『想い』が
次の世代へと受け継がれ、
東北の工芸が今後も発展していく事を願っております。
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筆者:櫻井尚道
(写真:小林仁美)