らぁ麺
長男は、かなり太っている。私と2人でダイエットしようと何度も誓い合ったが、2人とも、まったく取り組む様子を見せていない。
長男のこだわりポイントは、サッカーのマンチェスターシティとF1のルイス・ハミルトンと、美食である。その美食の中でも、ラーメンには、目がないのである。
長男は、小学校の高学年くらいから、ぽっちゃりしだして。良からぬスポーツの英才教育を施そうという親の欲目で、私のせいで、かえって運動嫌いにしてしまった。
だから長男が太り気味なのは、私からの太り体質の遺伝と、運動嫌いにした、私の間違った教育方針の両方が原因なのである。
だが、美味しい食べ物には目がなくて。その魅力には、長男のあらゆる欲求の中の、何ものも凌駕し得ない。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
育て方、間違うたな。
……。
私も、ラーメンは好きで。でも、並んでまで食べるほうではない。
だが、長男のラーメンへの欲求は、サッカーよりも、F1よりも、深く濃く抗い得ないもので。
ダメだとは知りつつ、その長男の欲求を後押ししてしまうことも、しばしばなのだ。
夏休み中のある日。静岡の、ラーメンの名店に行きたいと、ある日、あるサイトにエントリーするように言われた。
私も、家内も、長女も、言われるとおりにエントリーして。昼の12時きっかりに抽選のボタンを連打したが、終ぞ、当たらなかった。
そう。この店は、ネットからの予約エントリーしか、受け付けない、予約のとれない名店なのだった。
かくして、そのラーメンの店に、みんなで食べに行く計画は、頓挫した。
だが、そこは、過保護な家内と私だ。そして、長男は、過保護のカホオである。
ついつい、こういうものを、買ってきてしまった。長男のために。
実は、長女も、ラーメン好きで。長男が大切に保管していたものを、先にひとつ、食べてしまった。
長男は、たいそう怒ったが、残りのもうひとつを、指をくわえてみている私の目の前で、たいらげた。
と、そんな話を、休日出勤から帰宅した家内に話をすると、家内は、大笑いをしていた。
私は、いや、もう、あいつには、ダイエットをさせねば、必ず成人病になる。
そう言うと、家内は、それは願わぬ夢だと笑った上で、その前に、と、脚を指さした。
マッサージをすると、家内は、上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。