バネ
ある日、キッチンのゴミ箱が、壊れたのだ。フタが、跳ね上がらなくなった。理由は、ハッキリしていた。
根本のバネが、とれたのである。
家内が家に帰らなくなるずっと以前から、ゴミ出しは、私の仕事である。私は、こう見えても、ゴミ出しに関してだけは、きちんとしていて。どんなに遅く帰宅しても、帰宅して最初に手がける仕事を、ゴミ出しと決めている。
だから、溜まることは、本来、無い。
ところが、世の中の包装というものは、過剰だったり、堅くて変形しなかったり、ゴミ箱の許容量を超えてしまうようなものも、多々、あるのである。
どうも、長男によると、長女が、それを無理やり入れようとしていた、ということまでは判明して。ゴミ箱破壊の容疑者は、長女であろうことは、ほぼ明確となった。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
するべきは、犯人捜しではなくて、ゴミ箱の復旧だぞ。
失敬。その通り。
フタのバネは、周辺をくまなく探して、ひとつのみ見つかった。あまりしたくは無かったが、ゴミ袋をひっくり返し、丹念に探すこと40分。それでも、見つからなかった。
長男と、長女にも事情を話し。そして、二つ目があるかも知れないから、見つけたら、所定の場所に置いておくようにと伝えた。
果たして、一週間後。もう諦めていたが、バネがふたつ、揃った。
私の目の前には、いつもの、マイクロテープが置かれている。
お疲れ様。コジくん。
今回のミッションは、キッチンのゴミ箱を元通り修復することだ。
分かっているとは思うが、途中で挫折したり、放棄したりして証拠隠滅を図るような、エージェントにあるまじき行為だけは、決してしないように。
例によって、君、もしくは君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。
プシュ〜。
ミッションを伝えるマイクロテープは、消え失せた。
ものの2分で、復旧した。ミッション、コンプリートだ。
久し振りのミッションだったので、喜ばしくて。ソファーを振り返ったが、空のソファーが、ただ、笑っているだけだった。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
今回は、女王陛下のミッションでもないし、ね。
家内は、あるプロジェクトに参画していて。都心のホテルに泊まり込みで仕事をしているのである。
昼間のやりとりからすると、家内は、元気なようである。
家内が元気だと、我が家は、明るくて、平和である。
だから。
これで、いいのだ。
■追記■
面ゆるって、なに?
それは、これ。西尾さんはじめ、みんな、面白い作品をあげていて。
私は、だいたい土曜日の夜に、そこそこの過去記事をあげています。
もしも、お時間があれば、みんなの作品、読んで頂けたら幸いです。