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丙午

家内は、丙午ひのえうまである。結婚するときに、確かめられたのである。

丙午の女性は、夫を焼き殺すらしいけど、焼き殺されてもいい?それでも、結婚する?


心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、つぶやいた。

嫌だよ……。


リトルの声は、その当時の家内には、聞こえなかったようである。


私は、どうしてか、古典的な歴史ある競技が好きで。その代表格は、相撲で。次に、競馬がくる。

無論、野球やサッカーも好きで。スポーツ全般が好きなのだが、相撲と競馬は、ちょっと別格なのである。


伯父が、大学時代、馬術部に入っていて。その大学の馬場ばばが、自宅のすぐそばにあった。そこは、やがて私が入る高校の馬術部も使っていた。

私の通っていた保育園がまた、そのすぐそばにあり、毎日のように帰りに立ち寄り、ひとしきり馬を眺めては帰宅する。そういう幼少時代を過ごした。

次第に時を経て宅地開発が行われるたびに、馬場は狭くなり、私は、大好きな馬場が消えてしまうのではないかと気が気では無かった。

高校に上がると、馬術部に入部することも考えたが、母が断固反対した。装備費と部費が膨大すぎる、と。

母の逆提言の言葉がまた、良かった。

ユニフォーム費用を考えたら、相撲にしたら?

あいにく相撲部は既に廃部していて無かった。


それからというもの、住むところも、学校も、競馬場に近いところにしていて。足しげく通った。入社してから独身時代の寮も、結婚してしばらくのところとも、転勤してから2度の引っ越しも。大きな競馬場にまつわる沿線を選んでいる。そして、今でも。


競馬に賭けると、儲かる訳なんてなく。どれだけつぎ込んだかは、到底計り知れない。

中央競馬会JRAの、競馬場の毎年のクリスマスの飾り付け費用くらいは軽く出していると思う。


あまりにも莫大な出費をして何のリターンも無いので、20年前の年末、家内にこっぴどく叱られて全面禁止を言い渡された。


それから、トンと、やらなくなった。

ところが。去年の年末、有馬記念を機に、勝手に宣言をして突然復帰を果たした。

何の前知識も無く数万円を投入してオケラとなり。家内は、多くて1万円くらいだろうと見積もっていたらしく、叱られはしたが、追求は無かった。知らぬが仏とは、このことだ。


そこからだ。


有馬記念を過ぎても、重賞レースはある。年末のホープフルステークスでは、散々調べてシミュレーションをし尽くして。有馬記念の負け分を取り返し。

さらには東京競馬の東京大賞典にも手を出し、小銭を稼いでトントンまで戻した。


そんなこんなを語らおうとしてソファーを振り向くと、家内が足を指さして笑いながら釘を刺してきた。


コジくん、もう、やめなさい。で無ければ、焼き尽くすよ。


……。


焼き尽くされるのはゴメンだ。だから、手を動かすミッションに勤しみつつ、G1だけは、少額ででもやらせてほしいと稟議をあげようと思っている。



マッサージをすると、家内は上機嫌になる。

家内が上機嫌だと、我が家は平和である。





だから。





これで、いいのだ。

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