もうひとり
私は、運動の一環で。最寄り駅からの歩きだけでは足りないので、ちょっと変わったウォーキングを実行している。
マンションの17階まで歩いて上るのだ。だが、階段を一気に上るのは、なかなかキツい。だから、一階ずつ上っては、東の階段から西の階段に平地を歩き。また、階段を一階分上り、というのを17回繰り返す。
これを、マンションくねくねウオークと名付けている。
そして、それと同じことを仕事として、している人物がいる。それは、警備員の人である。
その、警備員さんに、時々、出くわすのである。
警備員の人も交代でやっているので、いつも、同じ人に会うわけではないのであるが、ひとりの警備員さんと仲良しになって。
出会うと、話しながら上ることがあった。
「運動のためですか?」
「ええ。こんなにいい階段があるのに、これを運動に使わない手はないでしょう」
なんて、得意げに話していると、意外なことを聞いた。
「そうそう、コジさんと同じことをしてる人、もうひとりいますよ」
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
な、なんとっ!
驚きつつ、話をしていると、どうも、私よりも少し上くらいの女性の方らしいということを突き止めた。
私は、同志がいることに、すごく嬉しくなったが、どうも、その人は、昼間に実行しているという。
帰宅時は、もう、会うことはない。だが、休日は、会うかも知れない。
期待しつつ、この、くねくねウオーク、やり続けている。やり始めてから、もう、1年と数ヶ月が経つが。終ぞ、お会いしたことが無い。
会うのは、警備員さんばかりで。いつ、会うことができるだろうか。はたまた、会うことは、できないままなのだろうか。
そんなこんなを語らおうとしてソファーを振り向くと、家内が足を指さして笑って言った。
まあ、コジくんと同じくらい、変わった人なんでしょうよ。その人は。
……。
今日のミッションは、少なめにしておこう。出来ないだろうけれど。
マッサージをすると、家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。