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ボトル
中学時代の友人が、脱サラをして、何年か前にワインを売る会社を立ち上げた。そして、今年の春、他の友人経由で繋がり、私の誕生月に、連絡してきた。
その連絡というのが、10%値引きクーポンだった。
私の家内の拘りポイントは、ポイ活とクーポンと節約である。
すぐさま家内に相談し、購入することを申し出ると、しぶしぶ、了承してくれた。
家内は、お酒を一滴も飲まないのである。だから、お酒をもらっても、購入しても、私ひとりの楽しみになる。だから、しぶしぶなのだ。
それが、秋口のことだった。
冷蔵便で来た。そしてすぐに、冷蔵庫に入れて保管した。すぐに、飲むつもりだった。
私は、金曜日と土曜日しか、飲まないことにしている。飲むと、食事が進むのと、飲んでしまうと、ダレて、眠くなり、やるべきことも、サボって、やらなくなる。
何に一番支障が出るかといえば、マッサージである。何より、もう、歳なのだろう。そして翌日の朝も、厳しいのである。家内は、それもあって、家で平日飲むのを、あまり好まない。
私自身も、いろんなことが先送りになったり、出来なくなるので、平日は飲まないようにしているし、週末も、忙しかったりすると、飲まなくなる。
9月も、10月も、週末に、家内や私や、子供たちの所要があり、すっかり、飲むことが少なくなっていた。
心の中の、リトルkojuroが、ニヤニヤしながら、呟いた。
美味しいビールは、飲んでいたけれど、な。
まあ、それは、置いておいて。
10月も中旬を過ぎてから、このワインを、ようやく出してきて。刺身を買ってきて。金曜日の夜遅くに、飲んだ。
ワインは、久し振りだった。だから、まず、家内と、ワインオープナーを、探した。
それは、食器棚の引き出しの、奥の方に眠っていた。
ワインの口を見ると、何やら、厳重になっている。なかなか、開封できない。コルクに、オープナーをねじ込もうとするが、入らない。
いろいろ確かめてようやく、普通のキャップ式だということが、判明した。
キャップを捻って、開ける。
グラスに注いで、飲む。
美味しい。
お酒の味は、あんまり、分かる方ではない。だから、ほんとうに、美味しいかどうかは、分からなかったのだと思う。だが、それなりに結構な値段だった。だから、本能的に、美味しいと思おうとしたとも、言える。
ひとしきり飲んで、良い気分になったところで、家内から、声がかかった。
コジくん、ほんの少し。
そして、脚を指さしている。
家内は、片足15分ばかりの、少しの時間マッサージをすると、上機嫌になった。
家内が上機嫌だと、我が家は、平和で明るくなる。
だから。
これで、いいのだ。
私の机の上には、空のワインボトルが置いてあった。いつの日か、こういうワインを、思う存分、飲んで暮らすようになりたいものである。
また、死ぬまでに叶えたい夢がひとつ、この歳になってなお、増えた。