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つばめ号
父は、高校の教師をしていた。本を読むのが好きで、とにかく勉強好きだった。週末も、朝から夜まで本を読み、勉強をしていた。だから、あんまり遊んでもらった記憶が無い。それでも、父が教えてくれた遊びの中に、一生忘れられないことが、いくつか、ある。
その中で、今日は、紙飛行機のことを、少しだけ書こうと思う。
紙飛行機というと、この紙飛行機がオーソドックスだろう。
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これは、安定性抜群で、本当によく滑空する。折り方も簡単で、手軽に遊べる。これの折り方も、父が教えてくれた。
父が教えてくれた紙飛行機は、実は、もう1つある。それが、ちょっと変わっていた。作るのにも、一工夫がいる。だが、その、一風変わった容姿が、実に、格好良かった。
父は、尾翼を三角に切り込み、
これが、つばめ号だ。
そう、教えてくれた。
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教えてもらってからというもの、私は、その姿と名前に惚れ込み、毎日のように何機も作っては飛ばし、作っては飛ばしして、
紙が勿体ないと言われて、叱られた。
紙というと、当時は、わら半紙。この、薄茶けた紙が、また、良く飛んだのである。
紙飛行機には、夢があった。滑空する姿が、何とも言えず、子供心をそそった。
長男や、長女、次女にも、この、つばめ号の作り方は、伝授した。だが、彼らは、あまり、紙飛行機には、ハマらなかったようだ。
今日、久しぶりに作ってみた。小さなメモ用紙で作ったので、ミニチュアだ。実際には、あんまり飛ばないだろう。
そして、つばめ号は、尾翼は、本当は、もっとスリムにハサミで切る。燕尾も、もっと、格好良く、スパッと切るのだ。今日は、ハサミも手元に無く、ちぎって作った。
でも、この朴訥さも、結構味があるなんて自分勝手に、思ったりした。
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俺にしちゃ、なかなか、格好良くできたよ。
そう、口に出して言ってみた。
そう言ってはみたものの、父はもう、隣には、いない。