言い訳
3部作にするつもりは無かったのだが、長男J(注1)と、長女Mの海外旅行について、補足をしておこうかと思う。この話、これで、3日目、今宵で最終回である。
家内は、すごく過保護で。我が家には、過保護のカホコ1、カホコ2、カホオが、存在する。
それぞれ、長女M、次女H、長男Jに、相当する。とにかく、私には頗るキツいくせに、この3人に、甘いのである。
家内の過保護の理念は、こうだ。
過保護は、やれるうちに、やれるだけ、やる。誰に何を言われても、やる。過保護は、してやれる時間に、自ずと限りがあるから。
意外に、まあ、我が家ほどではないにしろ、過保護な家庭は多いようで。誰かに、カホ族と、命名して頂き、私などは、このカホ族、さも一般語かのように多用している。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジも、たいがい、カホ族だがな。
今回の旅行で。Mは、パスポートの手続き。旅行会社とのやりとり、など、すべて、家内に頼み込み。同行し、代理で交渉し、必要書類を取りに行くなど、すべからく、帯同させ絡ませていた。まるで、秘書のごとく。
家内は、そのために何度か平日、休みをとったほどだ。
もちろん、Mの後ろには、黒幕のJが存在する
旅程や値頃感などは、弾丸ツアー慣れしたJが詳しく、家内としては、特にJとLINEでやりとりしつつ、旅行会社との交渉や手続きをしていた。
だから、JもMも、そもそも家内には恩義があり。例え家内が少ししくじろうとも、目くじらをたてることはなかったのである。
一方、私は、今回の旅行については、何ら絡んでおらず。JもMも、さして、私のことは、眼中になかったのだ。
家内が、出立当日、Mの旅行の荷物を積み、職場まで迎えに行き、空港に送り届けると申し出て、Mがその提案に乗り、だが、時間に遅れて、結局はひとり電車に乗ることになり、羽田で落ち合うことになろうとも、そのことは、たいして裏切りでもなんでもないという考え方なのだろう。Mとしては。
Jは、そもそも、家内をも信用していなかったが。
だが。家内が、空港に、ひょっとしたら予定の時間に間に合わないかも知れない、となったとき。
私は、共に、冷静に、その根本原因を探っていった。
すると、そもそも家内に、22時に空港に着こうという意識が薄く。自ら提案した、20時にはMの職場に着くには家を19時には出なければならないという目標に対する逆算が、実は、頭には入っていなかったことが明白になった。
つまり、半額の髪染めを購入しに行ったことそのものが、既に目論見に対してはタイムオーバーのうえでの出来事であったのだ。
だが。いつも使う髪染めが、モデル変更でもないのに半額で。いざ購入してみるとレジでは通常金額で打たれていて。それを、清算して後に、自宅近くまで帰ってきている状態でレシート確認で気づき。改めて店まで赴いてレジ打ちを訂正させるなど、ちょっと、間違っているのである。
ほかの日でも、訂正やクレームは、正統に入れられるわけであるから。
羽田に向かう車の中で、その事実に気づいた家内は、私に、ドスのきいた低い声で、こう、言った。
JとMには、このことは、死ぬまで言っては、ダメよ。
それに、こうも、付け加えた。
我が家は、貧乏だから。合格シール(注2)つきは、生き延びるのに必須アイテムなのっ。
そもそも、コジくんが、残業で遅れて帰ってくると言い出したのが、私のリズムを狂わせたのよっ。
……。
家内の得意技は、責任転嫁と合理的圧力である。わざわざ書くまでもないが。
心の中の、リトルkojuroが、めちゃくちゃ小さな声で、呟いた。
タセキング〜ッ(注3)！
カホ族としては、JとMの帰国時も、もちろんのことだが、小志朗(注4)で羽田まで迎えに行った。
車内で、思い出話が盛り上がった。
小志朗が家の駐車場に着き。荷物を持って帰るときに、JとMが、家内に握手を求めた。
そして、ありがとう。さっちゃん(注5)のおかげ。
私は、すかさず、俺には？と、問うと。
コジは、ただ、好きで勝手についてきただけだから。
……。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
子にとって、あらまほしきは、過保護かな。
いろいろ思い出しながら、洗い物を追えて、机に戻り。あの時の、そんなこんなを家内に語ろうとして。後ろを振り向くと、家内が笑っていた。
そして。
コジくん、キッチンの電気。点いてる。
ハイッ。たっ、たっ、たっ、パチンッ。
マッサージをすると、家内は、上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて、平和である。
だから。
これで、いいのだ。
(注1)Jとは、我が家の長男のことである。呼称は、Jとしようと思う。長女は、M。次女は、H。こう、しよう。
(注2)我が家では、購入するものは、できる限り値引シールの貼ってあるものを狙うことになっている。「半額」か「50%」以上のシールのことを、我が家では「合格シール」と呼んでいる。
(注3)タセキングとは、なんでも他責にする人のことである。私が勝手に作った、造語である。
(注4)我が家の車には、小志朗、という名前がついている。
(注5)我が家の家内の呼称は、「さっちゃん」である。さっちゃんは、女王陛下という別の呼称もある。だが、そもそも長男が飼い出したハリネズミのリキとの関係で、そもそもの飼い主が長男であることから、私は、おじいちゃんだが、家内に対して「おばあちゃん」なんて呼び方は、まかり間違っても、してはならないのである。
■追記■
面ゆるって、なに?
それは、これ。西尾さんはじめ、みんな、面白い作品をあげていて。
私は、だいたい土曜日の夜に、そこそこの過去記事をあげています。
もしも、お時間があれば、みんなの作品、読んで頂けたら幸いです。