毒見
ちょっと古いものが見つかって。確実に消費期限を過ぎているものだが、匂ったり少し味見したりして、まあまあ、フードロスハンター(注1)の私なら食べられると判断したものがあり。
家内がそれをどうしても食べたいと言うので、本格的に毒見をすることになった。
そして、私が、その一部を先に食べた。そして家内には釘を刺したのである。
「最低でも6時間くらい経ってから、大丈夫かどうか判断して、きちんと安全性を伝えるから」
家内は、やけに素直に、コクリと頷いた。
そして、それから3分も経たないうちに、家内はその問題の食べ物の残り全部を勝手に食べてしまったのである。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
なんてこった!
家内に、まるで毒見にならないじゃないかこれでは、と言うと、全く理解していなくて。
食中毒というのは、だいたい消化吸収が始まる、食べてから6時間後くらいから症状が出るときは出るもので。本格的に毒見をするなら、それくらいの時間を置かねば意味が無いだろうと改めて説明するが、とうとう、あまり理解しないまんまに終わった。
家内の表情からは、こう、見て取れる。
なんのはなしです関。
まあ、ふたりとも食中毒にはならなくて事なきを得たが、家内は、気に入ったものは見境無く手をつけてしまうので、本当に気をつけねばと思わされる一件だった。
そんなこんなを語ろうとしてソファーをみると、家内が脚を指さして笑って言った。
コジくん、また、毒見してね。
いや、毒見の本当の意味、わかってないだろ……。
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。