靴
笑える新幹線ネタ日曜劇場、第3弾である。
今日も、ちょっと恥ずかしい話だ。だから、いつもよりも、少しだけ少ない字数で、できれば、まとめたい。
私は、企画モノと創作が大の苦手で、この話も、いつもの、ただの実話である。
日本全国を、営業でドサ回りをしていた、独身時代。もう、約30年近くも前のことだ。
いつものように、金曜日の週末、疲れ果てて、キヨスクでお酒を買って、最終に近い新幹線に乗った。
新幹線に乗る時、乗り越さないように、出来る限り、新大阪止まりに乗る。だがその時、どういうわけか、岡山止まりのひかりに乗車した。いつもよりも、多分、早く業務が終了して、とれる新幹線が、それだったのである。
そして悪いことに、ダイヤが少し乱れているか何かで混雑がいつもよりも更にひどく、指定席がどうしてもとれず、自由席に、列に並んで、座って帰ることになった。
いつものように、2本のワンカップを、静岡までに飲み干し、岐阜あたりで起きて、よせばいいのに、残りの3本を、一気に空けた。
京都までは、記憶にある。
だが、次に目が覚めたのが、岡山だった。
ハッと気がついたら、列車はしばらく前から止まっているようで、間違いなく、ここは、岡山。そして、私の他に、乗客は、既に、いない。
しまった!!!
このままでは、操車場に連れて行かれてしまう!!!
私は、大慌てで、身の回りのものをカバンに放り込み、重い出張鞄を抱えて、走って列車を出たのである。
確かに、列車が発車するまでに、ちょっと時間は、あったと思う。
でも、既に人気もまばらなホームで、手持ちの忘れ物がないか、鞄をまさぐるしか、その時の酔っ払いには、気が回らなかったのである。
しばらくして、車両は、ゆっくりとホームを出ていった。
忘れ物、本当に、なかったんだろうか。大丈夫だったんだろうか。
そして同時に、もう、これは、新大阪までは、帰れる時間ではないか.....。
諦めの境地に達しようというその時、とんでもないことに気がついた。
私は、寛ぐために、新幹線の中では、靴を脱ぐ。そして、いつも、ホテルの使い捨てのスリッパを、履いていたのである。
足元を見ると、その、ペラペラのスリッパを履いた、馬鹿な酔っ払いの足があった。
.....。
運良く、ホテルは、駅前で、とれた。しかし、翌朝、すぐには帰れず、お店が開く時間まで待ち、駅前で靴を購入し、その靴に履き替えて新大阪に。その当時は、新大阪に、拾得物収集所があり、新大阪に着く頃に、ちょうど、私の可哀想な靴を、取り戻すことができたのである。
この話をすると、一様に、みんな笑ってはくれるものの、あまりまともに信じてはくれなかった。
ところが、私がその事件を起こしてから、何年か後、たぶん、「徹子の部屋」だったと思うが、たまたま休みをとって見ていたその番組で、あの、大御所俳優が、同じような経験をしたということを、語っているのを目撃したのである。
その俳優さんは、高橋英樹さんである。
高橋英樹さんも、新幹線に乗ると靴を脱いで寛ぐそうで、京都駅につき、慌てて下車したら、靴を車内に忘れてきた、という話をされていた。
それから私は、高橋英樹さんの大ファンになった。
ひとぉつ、人の世 生き血をすすり、
ふたぁつ、不埒な悪行三昧。
みーっつ、醜き浮世の鬼を、退じてくれよう、桃太郎!
私の、決め台詞は、これだ。
もちろん、暗唱している。
でも、いまだかつて、この台詞を使うシチュエーションには、出くわしたことがない。
私の、高橋英樹さんへの片思いは、実は、こんなところに理由がある。
追伸
今日の記事は、少し短くと言っていたが、調子に乗って、短くは、なかった。明日以降は、反省して、少し短い記事を、しばらく続けて書こうと思っている。