不動産投資の種類③【戸建て賃貸】
複数回にわたり、不動産投資にはどんなものがあるのかを見ていきます。一口に不動産投資といってもその種類は様々です。それぞれ一長一短があり、自分に合った投資手法を選んでいく必要があります。
一連の連載の目的は、不動産投資の典型的なパターンについて、ざっくりとしたイメージを持ってもらうことです。まず、新築区分と戸建てを説明し、次いで地方一棟を都内一棟と比較しながら説明します。今回は戸建て賃貸についてです。
戸建て賃貸とは?
本稿では、戸建て賃貸についてメリット、デメリット両方を確認し、私見を述べたいと思います。また、以下の視点で三段階評価(A:上出来、B:普通、C:困難)を下していきます。
評価ポイント
① 運用益(インカム)
② 転売益(キャピタル)
③ 節税
④ 資産形成
⑤ 投資の容易性
⑥ 取り組みやすさ
では、早速見ていきましょう。
特徴
今人気の戸建て投資です。この手法の私のイメージは、「ちまちましている。DIYをやるならば難度の高い投資手法。コロナ禍で大きなチャンスが来る。」というものです。私も川崎に3世帯持っています。
この手法の第一の長所は、少ない資金でスタート可能であるということです。場合によっては300万円ぐらいで勝負できます。特に、コロナ禍で不動産投資に対する融資が絞られている現在とても有力な手法です。
第二の長所としては入居率と定着期間が長いことです。戸建賃貸は、私は、賃貸借の究極型だと思っています。タワマン等のハイソな賃借人を除いて考えると通常の賃借人は、戸建てに住みたいが、家賃的な問題から1棟のアパートを選ばざるを得ないことが多いでしょう。こうした点で賃貸需要が見込めます。しかし反面、供給数は少ないのです。家賃の価格帯を間違えなければ、高い入居率を期待できるのです。また、戸建てはファミリー層が多く、いったん入居すると定着率も高い傾向にあります。子どもの学年があがればあがるほど転校を嫌がりますのでなおさらその傾向が強いのです。
第三の長所として出口が広い点があります。一棟物と異なり、戸建て賃貸は、賃貸をやめてマイホームとして売却が可能な点が評価できます。つまり、不動産投資の出口が広いのです。
他にも、多少の補修等の問題は賃借人自らやってくれる場合も多かったり、管理を自主管理できる場合が多く、管理費が不要になることすらあります
次に、欠点を見ていきます。
第一の欠点は、賃料が5万円前後と、運用が軌道に乗っても大した利益にならないことです。通常の私の地方1棟では、3000万円程度の物件で、ローンを引いても、20万円ぐらいの利益になります。これに対して、購入時の労力があまり変わらないにもかかわらず利益が少ない気がします。端的に言うと「ちまちましたイメージ」ですね。
第二の欠点は、物件の価格帯が安いために通常の不動産仲介業者が仲介を嫌がる点です。仲介会社が間に立つメリットデメリットはそれぞれありますが、あまり経験のない段階で、仲介会社の関与なく、自ら、単独で不動産の売買を行うのはかなりリスキーな感じを受けます。
第三の欠点は、額が安いこともあり、事前に建物の診断をプロに委ねることなく買ってしまいがちな点も問題です。建物の瑕疵は、大家のキャリアの長い私でも40%はわかりますが、残りの40%は、プロでないと見つけれません。さらに、残りの20%は、プロでも解体しない限りは、見つけるのが難しいです。
第四の欠点は、購入時に補修が必要な場合に、自分でやろうとすると失敗しがちだということです。もちろん、センスがよく、根気が続く方は成功します。とはいえ、時間と根気とセンスがない方は迷わずに、工務店に委ねるべきです。ただし、その場合はかかる金額を正確に把握し、事前に、収支計算に組み入れておくことが重要です。
第五の欠点は、戸建て賃貸は、都内及びその周辺でやることは難しいということです。私は川崎に戸建てを3棟持っていますが、いずれも、利益率が6%ぐらいです。この3棟はいずれも私自身が住むためのマイホームとして購入しており、賃貸の利益を想定せずに購入しています。それを賃貸に転用しているのですが採算がとれません。取得額と家賃が乖離しがちなのです。
第六の欠点とは、マイホームと競合しやすいことです。マイホーム購入のローン負担と競合しないように家賃に設定せざるを得ません。埼玉の北部でマイホームを購入すると想定して、約2000万円とします。これを35年ローンで金利1.3%で計算すると価格2000万円のローンの支払額が月5.9万円となります。埼玉県南部であれば3000万円程度で新築のマイホームが手に入る可能性があります。ローンは、3000万円で月8.8万円です。あなたが借り手だとして毎月の支払いが同じような金額になるのならマイホームを検討しませんか?
評価
(A:上出来、B:普通、C:困難)
運用益 B~C(普通に儲かるが、額が低すぎる、ちまちましている)
転売益 A(通常のマイホームとして売却できるので出口が広い)
資産形成 C(もともと少額でかつ都内でないのでなのでたいした資産にならない)
融資 B(場合による)
手軽さ B~C(自分でDIYすると難度が高くなる。また、価格が安いので周りが支援してくれずにリスクがある)
私ならどうするか?
今、戸建て投資を行う場合、特殊な事情があります。コロナ禍です。戸建賃貸は、コロナ禍により、大きなチャンスが巡ってくると思います。というのも、コロナ不況により、6ケ月以上のローンを支払えなくなった方々がそろそろ出始めるのです。これにより格安な戸建てが任意売却や競売の市場に出てくるものと思われます。もちろん非常に気の毒な事態ですが、その気の毒な方々を救う意味でも購入すべきなのです。
私であれば、競売に軸足を置き、任意売却と両にらみしながらその時に備えると思います。
この記事を書いた人
中島亮(なかしまりょう)
中央大学法学部卒。法務博士
主に地方の一棟アパートを購入する個人不動産投資家。
サラリーマン15年目にアパート投資を開始。
その後、6年間で10棟93戸を購入し、退職。
現在、39棟383世帯所有。年間賃料9000万円超え。キャッシュフローは実質3000万円を超えている。大家向けN塾主宰。
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