AI活用の可能性が見えた1年(ソーシャルリスニングとChatGPT)
みなさん、こんちはソーシャルリスニングBlogです。
今回は、(もしかすると複数投稿に分けて)2022年の振り返りとして、今年1年を通じてソーシャルリスニングにとって特徴的だったテーマを扱ってみようと思います。
ソーシャルリスニングのビジネス活用や手法的な側面など、いくつか特徴的な話題があるんですが、この投稿では「AI活用」を取り上げます。
AIの活用に関しては、このブログでも複数回にわかって扱ってきました。今回はその集大成的な内容になることを目指して、1年を通じて感じたソーシャルリスニングとAI活用についてまとめていきます。
AIをソーシャルリスニングに活かす2つのポイント
まず、結論から言うと、ソーシャルリスニングにおけるAI活用は大きく2つ存在すると思います。
1つは、AIを使って膨大なデータ(投稿群)から、分析の入り口を発見するという点。もう1つは、分析を深めていくときの分析軸を考えるヒントを得る点です。
AIで分析の入り口を発見する
まず1つめですが。AIをうまく使うことで、数万~数十万以上件以上の膨大なSNS投稿のどこに注目して分析を進めていけばいいか、という「分析の入り口」を捉えることにAIを活用することができます。
具体的にここで利用するAIは、教師データなし機械学習のうち「文書クラスタリング」等と呼ばれる類の技術です。
大量のSNS投稿をAIを使ってクラスタリングすることで、無限とも思えるSNSデータを有限な数の「話題」に集約することができます。そして、AIが投稿に含まれる単語の組み合わせでグループ(クラスター)を作ったと言うことは、各クラスターに何かしらの意味の共通性があります。この共通性を人が読み解き、そこからどのような解釈ができるかを考えていくことで、そのままでは手も足も出ない超膨大なSNSデータを効率よく理解・分析していくことが可能です。
AIがしてくれるのはファクトの整理
もちろん、一般的な自然言語解析で行われる形態素解析や共起ネットワークのようなものでもアプローチすること自体は可能です。しかし、うまくクラスタリングが出来ると、ぶつ切りの形態素(かその組み合わせ)を見ていくよりも、効率的で効果的であるケースが少なくありません。
ここで勘違いしてはいけないのは、クラスタリングした話題のかたまりは、ただの「ファクト」でしかないことです。
そのAIがまとめたファクト群のうち、それぞれが何を意味していて、どのクラスターには価値があり、そのクラスターからどのような解釈を得ることができるのか、を考えるのは人間の仕事です。
(この点について、こちらの投稿もご参考まで)
私のチームでも、このクラスタリング活用はここ数か月で本格化したものです。まだまだ研究の余地があると思います。
まだ分析におけるデータクラスタリングの可能性に気が付いた段階ですので、今後さらに、高い精度でクラスタリングするテクニックが生み出されていくものと思います。
データの層化によって深い視点を得る
クラスタリングの精度をあげるテクニックのひとつに「層化」があります。
データをひとカタマリでクラスタリングすることは最初のステップとして必要だと思います。しかし、データをいくつかの分析軸でサブグループに分け、それぞれに対してクラスタリングを行うことで、全体のみに対してクラスタリングする時よりも、より細かく詳細な視点を得るケースが少なくありません。
例えば、日本人とお金の関係を理解する、といった分析テーマがある時、お金関連のデータをひとカタマリでクラスタリングしても、様々な話題を抽出することができます。
しかし、これを「お金を使う」「お金を稼ぐ」「お金を貯める」という3つの軸に層化し、それぞれのサブグループに分けたデータに対してクラスタリングすると、より細かく具体的な話題=分析の入り口を見つけることが可能です。
このように、AI活用といっても、目の前のデータに対してAI機能をポンと単純に当てはめるだけでは得られるものに限界があります。
そこに、分析者が持つ仮説や分析軸のようなものを当てはめることで、AIの機能を最大化させることができます。
このあたりの話はこちらでも取り上げているので、よければご覧ください。
仮説や分析軸を考える労力
しかし、ここでひとつ悩ましい問題が生まれます。
この層化するために必要な仮説や軸をどのように思いつけばいいのだろう・・・
もちろん、ここはどこまで行っても人が考える領域です。
その意味では、分析者自身が発想する、関係者同士があつまってブレストする、過去レポートからヒントを得る、等々、様々な方法があります。
でも、ここでもAIにアシストしてもらう事ができそうです。
ごく最近になって公開された対話型インターフェースの大規模言語モデルである「ChatGPT]というものがあります。
私自身はAIの専門家ではないので、もしかしたら少し違うことを言ってしまうかもですが、このChatGPTはテキスト化された情報を大量に学習したもので自然文で質問することで、様々な返答を得ることができます。
大規模言語モデルの威力
ChatGPTの詳しい内容は他の記事やニュースに譲りたいと思いますが、いくつか使ってみた印象では、かなり広範囲で網羅的な情報やデータを端的にまとめてくれるところが特徴的です。
そして、このChatGPTをブレスト相手として、様々な問いかけをすることで、仮説や分析軸の参考になるような情報を得ることができます。
例えばこんな感じ、、、
大規模言語モデルを使う”人の知性”
ChatGPTはあくまで、人が準備した情報を学習させたモデルなので、その結果を分析内容としてそのまま使うことはできないと思います。あくまで、超大量に学習した中から、質問に関係ありそうな文字列の断片をかき集めてきて、自然な文体になるように再構成しただけのものです。
ChatGPTが何かを思考したわけではありません。
しかし、ChatGPTの返答を「ふーん、ほんまかいな」「なるほど、そういう側面もあるのかもね」くらいの姿勢で眺めると、色々な仮説や分析軸への着想を得ることができそうです。
このある意味、創造的批判性というか、クリティカルな視点をしっかりもたないと「おお、、AIさまのお導き・・・」と無意識にバイアスを生んでしまうでしょう。
仮説や分析軸のブレストは人と人との対話が重要だと思いますが、それに加えてChatGPTのような大規模言語モデルをうまく使って、有限メンバー同士のディスカッションでは思い至れないポイントや、過去に作成された(それがテキスト化されて学習対象になっている)論文、記事などの要約からヒントを得ることは、とても強力なツールになると思います。
ChatGPTのような大規模言語モデルは、ここ最近になり一般ユーザーレベルでも利用可能な形に進化している印象ですし、学習内容が今後も爆発的なスピードで進むことを考えると、今の時点で得ているベネフィット以上のインパクトを生んでいくのだと思います。
人は「思考のハブ」
このように、AI(大規模言語モデル)ともブレストし、仮説や分析軸を拡張し、AI(文書クラスタリング)で消費者理解・市場理解の入り口に効率的に辿り着くことが、ソーシャルリスニングにおけるAI活用の大きなポイントになっていくのではないかと考えます。
ただし、AIが仮説を考えてくれることなく、分析軸を提示してくれることもなく、どの話題に価値があるかの判断もしくれなく、その話題のカタマリから何を解釈できるのかを考えてくれる訳ではない、という重要な点は改めて強調したいと思います。
AIが提示してくれた情報から、どんな仮説や分析の切り口を考えるのか、AIが提示した話題群のどこから、どのような解釈を深めるのか、はどこまで行っても人の役割になるのだと思います。
あくまでAIは人の「思考ハブ」としての役割に対するアシスタント、もしくは、労働作業の代替ルーツでしかありません。
今後のソーシャルリスニングとAI活用
しかし、超大量なデータの中から関係しそうな情報をより集めて整理する(人がやったらネット検索、論文や記事のデスクリサーチで数日かかる)作業を数秒で完了する、または、数万・数十万のSNS投稿を全てチェックして類似性でグルーピングする(人がやったら数日でも終わらない)ことは、人が「思考ハブ」として活動するための非常に重要な道具になっていくでしょう。
AIが分析を深めて何かを洞察してくれることは、まだまだ実現しそうにはありませんが、このような領域でAIを活用することで人の作業が劇的に変化することは十分起こっていくのだと思います。
おわり
今回も最後まで、ありがとうございました。
12月の投稿ということで、こちらで2022年の発信は最後になるかなと思います(もしかしたら、もう1投稿するかも・・・)。
日本ではまだまだこれから、といった状況のソーシャルリスニングですが、少しでも業界の発展や、それぞれの立場でソーシャルリスニングを頑張っている皆さん同士をつなげるきっかけになればと思い、微力ながら個人的な経験や考えを発信してきました。
データやAIを活用し、マーケティングリサーチ・消費者理解・市場理解を深める活動はこれからも発展していくと信じていますので、来年も引き続き、ご愛顧いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?