その10. 自身のニーズ、使命感、情熱があるものは強い【新規事業・新商品開発における10の法則】
最後の項となる「その10. 自身のニーズ、使命感、情熱があるものは強い」について解説します。
これまでの1番目から9番目は、比較的テクニカルな話が多かったですが、10番目では、エモーション(気持ち)の話になります。
自身のニーズと使命はあるか
みなさんは、商品やビジネスの企画を考えているときに、
自分自身が心の底からその商品がほしい
そのビジネスが提供するサービスがほしい
と考えているでしょうか。
また、自分が作らなければ誰も作らないかもしれない、だからこそ、
自分がやり遂げなければいけない
といった覚悟を持って企画しているでしょうか。
こうした「想い」はとても大切です。
こうした想いがないと、ビジネスを立ち上げた後、多くの困難が訪れた時にすぐに心が折れてしまいます。
ビジネスを立ち上げる時は、その企画段階よりも実際に立ち上げた後の方が大変なのです。そしてそれをやり遂げ、大きなビジネスとして成長させていくためには、自分自身が本当に欲しいと思っているか、使命感を持っているか、こういった感情がないとなかなか成功することができないのです。
チキンラーメンの開発事例
一例として、安藤百福さんのチキンラーメンの開発秘話が挙げられます。
戦後焼け野原の貧しい日本。ご飯を食べられなくて空腹な人がたくさんいました。
そんな姿を見た安藤さんは、
「やはり食は大事。食べ物はとても大事である」
という考えに至ったそうです。
そして麺類が好きな日本人。お湯をかけるだけで簡単に食べることができるラーメンができたら、きっとみんな喜ぶに違いないと確信しました。
自宅の庭に小さな小屋を建てて、1日4時間の睡眠で丸1年間、失敗を繰り返しながら開発を続けました。
そして生まれたのがチキンラーメンです。
現在のカップヌードルの原型が完成した瞬間です。
この苦労続きの開発の中で成功にたどり着いたのは、何と言っても安藤さん自身の強い使命感、そして自分自身がほしいという強いニーズがあったからに他なりません。
「お湯をかけるだけですぐに食べられるラーメン」という、当時としてはとても奇抜でユニークなアイデアそのものも価値がありますが、何と言っても自分のニーズ、そして使命感が強かったことが成功に導いたのではないかと考えます。
ウォークマンの開発事例
そしてもう一つの有名な事例が、みなさんご存知のソニーのウォークマンです。
当時、創業者の井深さんは、頻繁にアメリカに出張されていたそうです。
その時、このようなニーズがあったそうです。
小型のテープレコーダーに、再生だけでいいからステレオ回路を入れてくれないかな:井深氏(当時70歳)
ソニー株式会社 公式ホームページより引用
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-06.html
そして飛行機の中で音楽を楽しみたいというニーズがあったそうです。
実際にこの商品を開発してくれとお願いしたところ、現場では「録音ができないカセットレコーダーなんて売れるはずがない、と意見があったそうです。
一方共同創業者の盛田さんは、下記のように話し確信したそうです。
この製品は、1日中音楽を楽しんでいたい若者の願いを満たすものだ。音楽を外へ持って出られるんだよ。
録音機能はいらない。ヘッドホン付き再生専用機として商品化すれば売れるはずだ:盛田氏(当時60歳)
ソニー株式会社 公式ホームページより引用
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-05.html
結果はどうだったでしょうか。
みなさんご存知の通りです。
ソニーのウォークマンの登場により、家の中でしか楽しむことができなかった音楽を、外に持ち出すという新たなライフスタイルが生まれたのです。
20世紀の代表的なイノベーションの一つが生まれた瞬間です。
そして、この成功の陰には、井深さんの「飛行機の中で聞くテープレコーダーがほしい」という自身の強いニーズがあったからこそ生まれたのです。
良いアイデア以上に大切なものとは
いいアイデアはそれ自体が価値のあることですが、それ以上に本当に自分が欲しいと思っているのか、それを開発することに自身が使命感を持っているのか、この点を再度チェックしながら開発を進めていくことがとても大切です。
もし、自分自身がほしいと思っていない、使命感がないということであれば、そのアイデア自体をもう一度見直すもしくは全く違うアイデアを考えてみるのも重要かもしれません。
以上で新規事業、新商品開発における10のツボの解説は終了です。
この10のツボですが、みなさんが新商品や新規事業の企画を考える際のチェックリストとして頭の片隅に置きながら活用していただけますと幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今後もビジネスコンサルタントとして実践的な内容を発信していきますので、「スキ」や「フォロー」をいただけたらとても嬉しいです。