「指示されたい人」、「指示されたくない人」~上司と部下の関係性~
ビジネスコンサルタントが作った、使えるダイヤグラムシリーズ②
人が複数人集まり組織が出来ると、「指示する人」、「指示される人」という役割が生まれます。これは、会社だけではなく、学校の部活動、PTA、地域の自治会、マンションの管理組合と至るところにこの関係性は存在します。
ところが、この「指示する人」、「指示される人」の仕組みが上手く回っているのは稀で、必ずと言っていいほど、何からかの軋轢が生じてしまいます。
今回は、企業の管理職を4タイプに分類して、それぞれのタイプが失敗するパターンと対処法を考察します。
ここ一番に弱い、中間管理職タイプ
タイプ①の人は、「指示をしたい」性格なので、平常時は、それぞれの役割に対して、やるべき事を割り付けて指示を出すことが出来ます。同時に、「指示されたい」性格でもあるので、上位職掌の人の指示に従いますし、メンバーの意見を聞くことも出来ます。平常時においては、中間管理職として活躍するタイプです。
しかしながら、即断即決が求められる緊急時には、「指示されたい」性格が邪魔をして、上司の上司からの指示待ちとなり、なかなか決めなられないことがあります。緊急時こそ、速やかに指示を出して組織を落ち着かせることが大事なのですが、それが出来ずに組織が混乱します。
そして、緊急事態を脱して平常に戻っても、一度失った信頼は回復せず、上司と部下の関係性はギクシャクしたままになります。
上司の側で、自分がこのタイプ①だと感じる場合は、緊急時は、組織の緊急時だけでなく、自分自身の緊急事態と認識し、指示待ちスタイルを一旦放棄して、速やかに役割を果たすことを強く意識する必要があります。
また部下の方で上司がこのタイプ①の場合は、緊急時には「これで進めていいですよね!」と強く迫るぐらいのコミュニケーションをした方が、上手く回る可能性が高いことを覚えておくといいと思います。
帝国を築き、そして崩壊するタイプ
このタイプ②の人は、「指示をしたい」のに「指示をされたくない」ので、自信を持った明確な指示のもと、組織はしっかりと回ります。緊急時においても、良くも悪くもブレずに、毅然と対応できる場合が多いです。親分肌、場合によっては、カリスマ的な存在になります。
しかし、「指示されたくない人」なので、メンバーの意見を酌み入れるのを好まない場合があります。組織の全てが「指示されたい人」であれば、問題ないのですが、それはまず有り得ません。そして、「指示されたくない人」を中心に不満がたまっていきます。この不満が連鎖すると、組織内に抵抗勢力が生まれ、内部抗争に発展し、結果として組織はギクシャクします。
上司の側で自分がこのタイプ②の場合は、変わろうとして、傾聴を心掛けても、結局、自分の意見に誘導しているというパターンになりがちです。対処法として有効なのが、指示しない項目を決めることです。全てに指示を出すのではなく、指示を出さない項目を決めて任せる。10の項目に指示を出していたのを7に減らし、3任せるだけでも組織の雰囲気は変わります。
また、このタイプ②の人は出世する場合が多いのですが、定年後、組織を離れるとプライドが捨てられず、社会に溶け込めず、孤独になってしまう恐れがあります。
平家物語の
『娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし』
を時折思い出し、謙虚さを失わない意識がとても大事です。
部下側で上司がこのタイプ②の場合、自分が「指示されたい」タイプで、その上司を尊敬、心酔しているのであれば、ストレスも無く問題は無いと思います。一方で、自分が「指示されたくない」タイプで、上司を尊敬していないなら、上司も自分も性格はそうそう変わるものではないので、組織を離れることを選択肢として考えてもいいかもしれません。
我関せず、一匹狼スタイルで組織に混沌を招くタイプ
このタイプ③の人は、「指示されたくない」し「指示をしたくもない」ので、基本的にマイペースで自分の関心事に集中します。研究者やエンジニア集団においては、割と多いタイプです。
「指示されたい」タイプの人は若干不安ですが、メンバーが自立した専門家集団の場合は、メンバーも働きやすく問題なく回ることが多いです。メンバーも自立するしかないので、人も育ちます。
ただ、大きなチームやプロジェクトを組んで、複雑な工程の作業をする場合には、リスクが顕在化します。混沌化したチームが結束して、予想を超えたクリエイティビティを発揮する場合もありますが、混沌の連鎖を生み、致命的な失敗を引き起こし、組織が崩壊することがあります。
特に、このタイプ③の人は、「指示したくない」ので自分一人で対処しようとして、空回りする傾向があります。
上司の側で自分がこのタイプ③の場合は、タイプ①の「指示したい」-「指示されたい」人を補佐につけるのが有効です。
基本的には、雰囲気のいい組織になっていると思いますので、最低限の管理を任せられるいい補佐役と密にコミュニケーションを取ることを意識すれば、混沌の連鎖は抑えられます。
部下側で上司がこのタイプ③の場合は、面倒見の悪い上司と感じるかもしれませんが、自立して行動出来る成長のチャンスと捉え、前向きに取り組むといいと思います。また、このタイプの上司は、専門性や経験が豊かな場合が多いので、よく観察し、技を盗むチャンスでもあります。
空気のような存在となるが、ストレスは人一倍大きいタイプ
このタイプ④の人は、「指示されたれたい」のですが、「指示をしたくない」ので、基本的に管理職やリーダーには向いていません。自分の上位職掌からの指示はしっかりと聞くのですが、それをメンバーに指示して割り付けることが出来ずに仕事が停滞します。
これが続くと、上司の上司の人は、このタイプ④の人をスキップして、現場に直接指示を出すようになります。結果として、このタイプ④の人は、居ても、居なくても変わらない空気のような存在となります。
これで、組織が回ることも多いので、この空気のような管理職は意外に多く存在します。
しかし、元々は「指示されたいタイプ」でもあるので、指示されたことを果たせないストレスが溜まっていきます。組織ではなく、自分自身が壊れてしまう可能性があり、注意が必要です。
上司の側で自分がこのタイプ④の場合は、いきなりスタイルを変えても周囲が戸惑う、もしくは無視される可能性が高いので、自分が自信を持てる項目を一つ決めて、それだけは、自分の指示で回すようにしてみるといいと思います。上手くいくようなら、二つ、三つと増やしていく感じで進めます。
また、どうしても上手くいかないようなら、
自分がその役割に本当に向いているのか?
本当にやりたいと思っているのか?
を自分自身に問い直して、場合によっては、その役割を外れるのも選択肢になると思います。
部下側で上司がこのパターン④の場合は、組織が回っているのであれば、上司のボールをうまく拾いにいくのが有効です。上司に感謝されますし、上司の上司からの評価も上がり、より重要な仕事を任せられるようになると思います。
一方、上司がこのパターン④で、組織が回っていない場合には、上司の問題というより、その上司を任命し、回っていない組織を放置している、仕組みとカルチャーそのものが問題です。組織を離れることを選択肢として考えてもいいかもしれません。
今回は、「指示したい」、「指示したくない」、「指示されたい」、「指示されたくない」の4つのパターンで上司のタイプを比較してみました。
自分のタイプと比較して、何かの気づきがあれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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