カジノ(IR)法案について
例のカジノ法案(統合型リゾート(IR)整備法案)が12月14日(水)参院本会議で可決・成立しました。(カジノ法が成立 未明に衆院採決 年金抑制法も成立)
カジノ法案について、日本の成長戦略に位置づけるつもりのようですが、これまでの日本のリゾート開発の失敗を見ていると、またハコモノで終わりそうな感じがします。他にもギャンブル依存の問題や治安の悪化なども心配されていますが、ここではその経済効果のみ考えてみます。
日本国内のお客のみでは経済効果は期待できない
まず、カジノを含むリゾート(IR)開発では日本国内のお客がメインではその経済効果は限定的で、それよりも海外から日本人を大幅に上回るお客に来てもらって沢山のお金をIRに落としてもらうことが大事です。それだけの魅力ある施設が作れるかどうか、そこにかかっています。
すでにIRはマカオ、マレーシア、フィリピン、ネパール、韓国、インド、スリランカ、カンボジア、シンガポールになど東アジア各地にあり、特にシンガポールはアクセスの良さで成功をおさめており、その後追いを日本がやって他国を凌駕する利益を見込めるかどうか、その立地だけを見ても微妙な気がします。立地だけで言えば外国からアクセスの良いシンガポールの方が圧倒的に有利です。
IRを作ってみたものの結局儲かったのは建設に関わった業者だけ、と日本がこれまで繰り返してきたリゾート開発の失敗と何ら変わらないばかりか、それこそ治安も悪くなって老朽化した施設だけ残って良いことは一つもなかった...ということにもなりかねない気がします。
外国人観光客に日本に来てもらうような魅力を高めることの方が重要
それよりも、IRに頼らずに外国人観光客にもっと日本に来てもらうような日本の魅力を高めることの方が重要と思います。外国人観光客は2013年は年間1000万人で27位でしたが、最近は中国や韓国からの観光客が増えたためか約2000万人の16位となっています。およそ3年で外国人観光客数は倍増しているわけで、無理して治安が悪くなる可能性のあるIRを作る必要はあまりないように思えますね。
ただ、日本の観光産業はそのままで良いかというとそうではないと思います。外国では観光は他の国から観光客を呼べる重要な「資源」と考えており、古くからある伝統的な町並みを保存したり、通訳やガイドのサービスだけでなく、各種イベントで観光地を盛り上げることを行い、積極的に観光客に来てもらえるような仕組み作りを行っています。それで得た収益を文化財や町並みの修復や保存に回すことがでさらに魅力のある観光地にして地域経済活性化や雇用を産むという好循環となっています。日本でも部分的には地元の商工会が中心になって町おこしをしたりしていますが、ヨーロッパのような町並み保存や文化財の保存・修復は自治体や国まかせ的になっています。これは日本の文化財はあくまで「保存」が主目的で観光客に楽しんでもらうことを重要視していないからで、予算もあまりないのでガイドや通訳も十分つけることは出来ず、せいぜい英語の立て看板があるくらいで「観光資源」という視点でシステム的に文化財保存と経済活性化を狙った組織作りまでには至っていないように思えます。
明治以来の欧米に追いつけ追い越せから脱却を
日本は昔からそうなのですが、古くからある建物や分化を大事にするよりは、目新しいものや目先の利益を追いかける良くない傾向があります。外国のお客を日本に呼ぶには既に外国にあるようなカジノを含むリゾート施設を日本に作ってもあまり意味はないような気がします。このあたり、明治以来の欧米に追いつけ追い越せの思考パターンから脱却できてないなぁと思うわけです。