聖地厚別と共鳴した日。 ~来年もまた、大好きなこの場所で応援しよう~ #consadole
2-2に追いつかれてからのゴール裏の雰囲気はすごかった。
小林悠のゴールで逆転されても負ける気はしなかった。これは1997川崎戦の再来だ、と思った。
2022年10月1日 川崎フロンターレ戦 @厚別陸上競技場
日本ハムファイターズの本拠地移転に伴い、来シーズンのリーグ戦は全試合札幌ドームで行うという報道があった。
北海道コンサドーレ札幌公式からのリリースではなかったので、真偽は定かでない。実際のところはおそらくまだ決まっていないのだろう。
もしリーグ戦が全試合札幌ドームになってしまうとしたらとても残念だ。
例え今回がリーグ戦の最後でなかったとしても、室蘭や函館の試合のように、「これが最後ですよ」という日がないままに、いつの間にか厚別での試合がなくなっている可能性も十分にあるだろう。
そんなわけで今回は、もしかしたら厚別で応援ができるのは最後かもという想いで、私の中で一つ心構えをして臨んだ試合だった。
札幌ドームは、雨が降っても雪が降っても快適に試合が観戦できる優等生なスタジアムだ。交通の便も良い。面白味はないけど、他のスタジアムと比べて異様に高いスタンドの壁に貼った応援団の幕もかっこいいし、3万人の観客が集まった時の圧迫感のある雰囲気はとても良い。
でも厚別は特別だ。
クラブが生まれて26年、この場所で歴史が生まれ、継承されてきた。
サポーター仲間との会話で幾度となく話題にあがる、札幌が26年間で山あり谷ありここまで這い上がってきた軌跡。
JFLリーグ戦での「21勝0敗」記録、
2000年の浦和戦での『12』の人文字と大森健作の決勝ゴール、
上原のアディショナルタイム逆転ゴール、
四方田監督が完全に風の流れを読んで勝利した柏戦、
たくさんの思い出が厚別で作られ、札幌の歴史に刻まれた。
数々の試合をその目で見届けてきた昔からのファンだけではない。若い世代のサポーターや、最近ファンになった人も皆、厚別を「聖地」として認識し、「我らの厚別」と歌ってきた。
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私にも厚別の思い出がある。
2001年7月7日 ジェフユナイテッド市原戦
もちろん試合の内容は覚えていないけど、母の作ったおにぎりを食べた記憶がぼんやりと残っている。(まさかJ1残留の立役者となったウィルのゴールをこの目で見ていたことは先日初めて知った。)
思い出づくりとして、1枚だけ残っていた写真が撮られたであろう場所に行ってみた。柵まで届かなかった身長が倍くらいになっていた。
さらに、サポーター仲間と昔のユニフォームやグッズを持ち寄り、写真を撮った。
2000年ごろ、スタンドの観客全員が持っていたであろう応援メガホンがいい味を出してる。
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だけど、今考えるとこんな写真なんかはどうでも良くなってしまった。
人工的に作り出したノスタルジックな写真や、言葉での説明なんてそもそも必要がなかった。
その後の試合結果が、厚別が特別な場所であることを完璧なまでに証明してくれたからだ。
シャビエルが倒されてレッドカードが出されてからのゴール裏の空気感は、言葉では言い表せない。
10分近く試合が中断していた中で、ずっと厚別の応援歌を歌い続けた。
我々と厚別は共鳴していた。
正直無我夢中でピッチ上で何が起こっていたのか分からないことが多かったが、何点ゴールが取り消されても勝てると信じていた。
厚別がゴールを呼んでいた。「厚別とはこうだ」と、我々サポーター、選手、そして厚別が三位一体で熱く表現していた。
文章にも映像にも残らない、現場にいた人にしか分からない、あの雰囲気がそれぞれのサポーターの中で思い出となり、歴史として受け継がれる。
これが札幌で、これがフットボールだ。
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試合後には、ドーレくんがパフォーマンスを終えた後も、幕と共に写真を撮ったり、ゴール裏中心部に絡みに来たりと、昂っていたのが印象的だった。
1997年から札幌のホーム全試合を現地で見届けているドーレくん。ピッチに立っていたどの選手よりも厚別の思い出をたくさん持っているはず。
決勝ゴールを決めた小柏も、1997年川崎戦で反対側のゴールからサポーターの元まで走ってきたバルデスのように、ゴール裏まで走ってきてくれたら良かったなと少しだけ思うが、それはどっちでも良いことだし、選手には選手の戦いがあるんだと思う。
おそらくこの世のほとんどの人は、この日の試合結果を見て「すごい試合を見に行ったね」と言うのかもしれない。
でも私には単なる目撃者でいたという感覚は全くない。
102分間、厚別を信じて作り上げたあの雰囲気。
我々が勝利した。厚別と勝利した。
あの結果になったのは必然だ。
この記事を書いている今日は試合の翌々日であるが、常にこの試合のことばかり考えている。すごい経験をしたんだなと思う。神話の1シーンの中にいたかのような不思議な感覚である。
長々しく文章で語るのも馬鹿馬鹿しくなるような特別な1日だったが、やはりこれからの札幌のために、ここに書き残しておくことにした。現地にいたファンからこの感覚が受け継がれていってほしいと思う。
そして来年もまた、大好きなこの場所で応援しよう。