父親を超えたと思ったこと
世の中的な「男子」にとって、父親の存在を超えることは一つの大きな課題だと思う。特に自分も働き始めて、父親がどれくらい稼いでいたかを知った後とかね。
僕の場合は、大学生3年生の時に寮に入るときに経済状況の調査用紙を渡されて、そこで父親のざっとした年収をしって軽くめまいを覚えた。多すぎて。
その次は確か大学院に入ったころ、父親が生活費として母親に渡している額を聞いて、これまためまいを覚えた。月額にして36万円だったと思う。
もちろん3人の子供の学費--つまり大学生二人と私立の女子高に通う妹の学費とかも含めた額だったのだけど、当時学習塾のアルバイトで頑張っても毎月15万円程度しかもらっていなかった僕にとっては、父親が経済的に非常に大きな存在に見えた。いつになったら、父親の月収を超えられるのだろうか?と。
「転機が来た」と僕が感じたのは、僕が仕事を初めてインターネットにも詳しくなり、今の相場よりかなり安く買うことができたアンティークのロレックスを父親にプレゼントした時だ。ケースもブレスレットも18kのいわゆる「金無垢」ですね。タイトル画像の写真がそれです。僕自身、金無垢のロレックスを買ったのは初めてで、父親にプレゼントしたロレックスの2本目にあたる。1本目は父親の50歳の誕生日に母親と折半したコンビのデイデイトだった。コンビのロレックスはビジネス用なんだけど、やっぱり金無垢のロレックスは華やかで、父親としても「贅沢だなー」ととても気に入ってくれた。その父親の気に入り具合を見て、「良いことができたな」と僕自身も感動したことを覚えている。
僕はそのころ自分のビジネスを立ち上げたばっかりで、百戦錬磨の不動産屋である父親を経済的には超えてはいなかったと思うけど、「自分の世界で得意なことで親を喜ばせることができた」というのは、自分的にもとても嬉しかった。それを転機と感じたのだと思う。
僕は仕事上で「いわゆる成功者」といわれているビジネスパーソンと雑談をする事も多いのだけど、「この人のことを個人的にもっと知りたいな」と思ったときに必ずする質問がある。それは「お父さんにプレゼントしたもので、一番高額なものは何ですか?」だ。もちろん質問としてはストレートすぎるので、流れを見たりもっとオブラートにくるんだりするのだけど。そしてビジネスパーソンだけではなく個人的な知り合いにも、「もう少し仲良くなりたいな」「友達になってもいい人だろうか?」と思ったときには、この質問をしている。
答えは様々で、たいていは素直に教えてくれる。僕の知っているものもあれば、ブランドも知らず金額の検討もつかないものもある。大事なのは「その人にとって、値段の張るものをちゃんとプレゼントしている」という事実で、品物や金額ではない。だから僕は回答そのものはたいてい忘れてしまう。
気をつけなくてはいけないのは、「親父にプレゼントしたことがない」という回答ですね。親父とはそりが合わなくて、この10年くらい一言も口をきいていないとか、親とは絶縁しているとか、「なんで親なんかに?まずは自分のために使うでしょ?」とか答える人は要注意だ。特に自分はポルシェを3台も乗り回し、正規店で高級時計を定価でバンバン買うにもかかわらず、親にプレゼントするという概念を持っていない人は、少なくとも僕は個人的には友人にはなれない。そしてその時は羽振りが良くても、何年か経つとビジネスに失敗して没落していることもよくある。
「親を超える」「親に喜んでもらう」というのは、かなり青臭いとは思うけど50歳を超えた僕の基本ルールです。それが生きていく上での「背骨」になっている気がする。固い背骨を持っていないと、自分も周りも幸せにすることはできないような気がします。