145万円の高級腕時計を78万円で売って得したと思っている話
泥沼コレクターのドロヌマな決断
「145万円の腕時計」というと、金額としてはスゴイが高級時計の中ではまだまだ序の口、と思う人はたくさんいるかもしれない。ただし僕にとってはこの時計の購入はかなり悩んだし、重い決断がいる時計でした。
買ったのは2023年の9月で、こんな時計でした。
あまり時計に興味がない人のためにサラッと説明しますと、これはカルティエが1980年代の終わり頃に発表した、パシャというシリーズのバリエーションの一つです。紳士用のクォーツ時計ですね。特徴的なのは、時計のケースとブレスレットが18Kゴールド製なこと。
で、僕が購入した145万円という金額が適正かどうかは・・・個人的には適正だと思っています。なぜなら、この時は金の相場が1gあたり8751円(税込)もしていたから。この時計の重さは約180gありまして、全部が金ではない(時計の部品があるから)・また18K(75%が金)と考えても、85万円くらいは金の価値があると思ったのです。なお、金の相場は2023/6/30で9,816 円(税込)となってました。ビックリですね。
あとは時計オタクっぽい話になりますが、こんな35年近く前の時計でも昨今は値上がり傾向が強くて、同じ時計を楽天とかで探すとゴールドブレスレットではなく革ベルトタイプでも100万円とかしているんですよ。そう考えるとゴールドブレスレットつきで、145万円というのはかなりお買い得だったと思っております。でも売っちゃった。78万円で。
「145万円の時計を78万円で売ったら、67万円の損なのでは?」と普通の人は考えますね。実はこの時計を売るにあたり、文字盤に傷があったのでそれを別の部品に交換したり、ステンレス製のバックルを買ったりオークションの手数料が68,640円かかったりと、持ち出しが10万円くらいあります。それを考えると赤字は77万円ですね。
ちなみに売却を決断した時の僕は、特に生活費に困っていたり他に欲しい時計があって差損を覚悟で売り急いだり、といった理由があったわけではありませんでした。それどころか、この時計を買った時から半ば計画的に売却を考えていました。
実は欲しかったのは「時計」ではなかった、ということ
買った時の画像と、売ったときの画像を見ると違いがありますね。そう、実は買った時はゴールドのブレスレットが付いていましたが、売ったときは革ベルトになっています。実は僕が本当に欲しかったのはこのゴールドブレスレットだったのです。
なぜゴールドブレスレットが欲しかったのか?77万円も出して?
実は僕が持っていた、別の時計に着けたかったのです。
これも同じカルティエのパシャシリーズです。今までは革ベルトがついていましたが、どうしてもゴールドブレスレットに付け替えたくてブレスレット目的で買ってしまったのです。
なお付け替えたブレスレットは「パシャ用」として販売されていたものなので、同じパシャなら付け替えても問題ありません。なぜこんなことを説明しているかというと、時計の世界では本来はその時計用ではないパーツ(文字盤とかブレスレットとか)を入れ替えてつけることを「ガッチャンコ(英語ではFrankenstein watch)」と呼び、本物ではない扱いになるからです。
「ブレスレットが欲しいだけなら、それだけ買えばよいのでは?」と思った方。もちろんその通りです。タイムマシンがあったら35年ほど前にタイムトラベルして、私もそうしたかもしれません。何十年も前の製品なので、いまはもう取り扱いがないのです。
しかもこれだけインターネットのオークションが発展しているのに、パシャ用のゴールドブレスレットが単体でリーズナブルな価格で売っているのを、私はこの10年くらいで2件ほどしか見たことがありません(2件とも僕が買っちゃった)。それどころか、私が欲しいと思っているゴールドブレスレットがついたパシャですら出物が激減していて「このまま待っていてもブレスレット単体の出物はないかもしれない」と危機感を持ち、今回のチカラワザ的な購入(腕時計を丸ごと購入して、ブレスレットだけ残して売り払う)に至ったわけです。
そしてこの取引に関して、僕は「とても得をした」と考えています。
そもそもこのゴールドブレスレットは18Kの塊で、重さが100g弱あるため2023/6/30の金相場で換算すると税込みで710,433円の価値があるからです。原材料費だけでもこんなにかかるので、下手すると新品ではこの3倍以上の値段がついても不思議ではありません。そういう意味でも77万円でこのゴールドブレスレットを手に入れることができで、僕は「とても得をした」と考えているわけです。
パズルの最後のピースがカチッとはまる感じ
「ブレスレットなんて腕時計の付属品みたいなものなんだから、そんなにこだわらなくてもいいんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。それは否定しません。そもそも時計なんて時間が分かればいい、と考えると時計自体にこだわる必要もないのでしょう。
ただ僕はこだわってしまったのですね。
なぜならば、これでパシャ用のゴールドブレスレットが3種類ともそろったから。
僕は集めたゴールドブレスレットをこれまた複数持っているパシャに付け替えて楽しんでいます。もちろん、たまには革ベルトにすることもあります。夏場は汗で革ベルトが痛むので、主に冬場ですが。
こんな風に時計だけではなく、その付属品まで追いかけ始めるのは「コレクター病」が進行している感じがします。否定できません。
ただ「3つあるうちの2つが手元にあって、残る1つを手に入れることができた」というのは、15年くらいかけてやっていたパズルの最後のピースが「カチッ」とはまった感じがして、とても気分がいいのです。
ちなみに今回ブレスレットだけ残して売ってしまったパシャですが、「ひょっとしたら気に入るかもしれない。その時は自分のコレクションにしよう」と最初は思ってました。傷のある文字盤の補修パーツを手配したのも、そのためですね。でもやっぱり「違うなあ」と思って、売ってしまいました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。