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生成AIを使ってResearchOpsの改善をしてみたらいろいろ考えるようになった話

こんにちは、Ubieでデザインリサーチャーをしておりますawa (@n_awamura)です。
好きな動物は象さんで、Xの背景写真は台北の象山です。

この記事では、生成AIを使って身の回りの業務、具体的にはResearchOpsの改善をしてみたらいろいろ考えるようになった話をします。

僕は基本的に古い人間で、エンジニアでもなく、「個人として飛びつくほどには生成AIに興味を持ってこなかった人」です。
実際、Ubieが生成AIに注力しているのは入社後に意識したくらいです。
でも、生成AIを使ってみて、「ああ、とりあえず使ったほうがいろいろ考えられていいな」と思うに至っています。
(人間とは・・みたいな葛藤でしんどくなるときもありますが、それも含めて)。

もう十分に示唆されているように、技術面で新しい情報は含まれていないと思います。
ResearchOpsの改善、非エンジニアにとっての生成AIへの入り方、についてはなんらかのケーススタディになっているかもです。
そのあたりに興味がある方には、あるいは参考にしていただける部分もあるのかもしれません。

それでは行きましょう。

生成AIを使ってResearchOpsの改善をしようとなった背景

ResearchOpsについては、先日の記事をご覧ください。
「デザインリサーチ、UXリサーチ、マーケティングリサーチなどの円滑な進行を可能とする間接業務全て」かなと思っています。

ResearchOpsには、「人にわざわざ頼むのは気が引けるしめんどくさいけど、ここがこうなればちょっとだけ楽になるんだよね〜」と思いつつ放置してある、超小粒な業務課題がちょこちょことあります。
業務課題というか、手間という語感の方が近いくらいの。
それらの手間は、会社の業務フローとResearchOpsの業務フローとの間であったり、リサーチ担当者の仕事とOpsスタッフの仕事との間であったり、個々人の仕事の仕方や好みの微細な違いの中であったり、にふと存在します。
発生頻度の低い、1件あたり20秒余分にかかる感じの、スケールしない、ROI説明に窮するやつ、とでも言いましょうか。

さて、Ubieには通称dev爺というツールがあります。

また、生成AIでGAS(Google Apps Script)が書ける、という噂は聞いていました。
それなりの年数ITギョーカイにいるので、コードの書き方をほんの少しかじったことはあり、「関数や変数というものがある」、「コメントアウトというものがある」、「コンソールというものもある」などは知っていました。

というわけで、ResearchOpsの手間を生成AIを使ってGASで解決できるか、隙間時間で試してみるかー、と思い立ちました。
軽い気持ちで試してみると、これが案外面白かったのです。

書いてみたGAS〜メモテンプレをコピーして実査フォルダに入れるくん

業務課題とその背景

実査前の細かいけど大事な作業として、「実査中のメモを取る場所を作る」というのがあります。
※実査とは、インタビューなどを実際に行なうことを指す業界用語です。

Ubieでは現時点で実査のアウトプットを互いに連動するNotionデータベースとGoogle Drive内にためていくことになっていて、Google Driveの階層は以下のように設計されています。

  • アウトプット全体のフォルダ

    • 案件フォルダ

      • 実査フォルダ

      • 実査横断で使う各種doc (メモテンプレなど)

とくに変わったところはない感じですね。

案件・実査ごとにNotionやGoogle Driveの構造はOpsスタッフが設定してくれて、リサーチ担当者はその運用を行ないます。

リサーチ担当者目線だと、「メモテンプレをコピーして、実査フォルダに入れる」ところまでOpsスタッフにお願いできれば本来は嬉しいです。
事実、初めはお願いしていたのですが、現時点では難しいことが判明しました。
というのは、仮説検証内容がどんどん変わる(アップデートされる)ので、テンプレの内容がそうそう固定しないためです。
そんな中、仮に「メモテンプレをコピーして、実査フォルダに入れる」をOpsスタッフにしてもらうと、最新のテンプレとフォルダ内にあるテンプレに絶妙に時差が生まれるときがあります (ありました)。
せっかく作ってもらったファイルに手動で最新の内容をコピペするのはさすがに不毛だし申し訳ないので、リサーチ担当者自身が毎回テンプレをコピーします、としていました。

このコピーのときの行動フローは以下の通りです。

案件フォルダにアクセスする(探したりもする)
→ フォルダを開く
→ メモテンプレをコピーする
→ 実査フォルダがどれかをカレンダーと見合わせて確認する
→ 実査フォルダにコピーを置く
→ コピーされたテンプレのタイトルの日付とフォルダ名の部分を変える

この手間を軽くしたい、と。

GAS

以下を実現するGASを生成AIに書いてもらいました。

  • スプシ(Google Spreadsheet)のフォルダ名欄に日付とフォルダ名を入れて、カスタムメニューをクリックする

  • そうすると、スプシに紐づいているGASが立ち上がり、数秒待つと、実査フォルダ内にテンプレがコピーされる。その際、コピーのタイトルに日付とフォルダ名が自動で入っている

  • そして、別タブでフォルダが開く

スプシの全貌
スプシの全貌

それによって、行動フローが以下のように変わりました。

カレンダーを見ながらスプシに日付とフォルダ名を入れて、カスタムメニューを押す
(→ ちょっと待つ)
→ 開いた別タブのファイルを開く (ファイル名にはもう実査情報が入っている)

だいぶ短縮されて満足満足。

そのほかにも書いた

  • Google MeetのURLズレを自動検知するくん

  • 動画を実査フォルダに自動移動するくん

ってのも作りました。
なんかLTとかする機会用の小ネタとして取っておきます笑
(ニッチすぎてそんな機会はなさそうだけども)

てな感じで、生成AIを使ったResearchOps の改善は気づきさえすればいろいろできそうです。
GAS以外にも手段はいろいろあるでしょうし。
いろいろ試していくことになるでしょう。

いま思うこと

「大喜利」から一歩進むためには、勉強する→触るではなく、触る→勉強する、がよさげ

上のGASを書くのを思い立ったのは2024年12月末、年内のスケジュールにちょっと余裕ができ始めたときのことです。
つまり、僕が生成AIを「大喜利」ではない形で触るようになって半月ちょいということです。
(もともと、生成AIになんか面白いことを出してもらう遊びはちょこちょこしていました。それが「大喜利」です)
非エンジニアがこの短期間でここまでできるのかー、と素直に驚きました。しかも正月休み挟んでる。
少なくとも1ヶ月弱で自力でGASは書けなかったでしょう笑

生成AIについては、食わず嫌いですらなく、ただただどう入っていいのかよくわからない、という感じでした。
よく語られる使い方はどうもピンとこないというか。

他方で、生成AIは、ことばで表すことができることには何らか答えを返してくる、という特徴があります。

なので、世の中に出回っている生成AIの使い方みたいなのは初めはあまり参考にせずに、まずは自分の小さな業務課題をことばで表してともかくも生成AIに入力してみる、のが人によって近道な場合もあるのかな、と今は感じています。
僕はそうだったので。
自分ごとの課題だと、エラーが出てもいろいろ試す気になるし、首尾よく成果が得られれば面白くなってきて、関心やアイデアの広がりも出てきます。
そこで、必要に応じて先達の知恵を見る、ので遅くはないかと。

そういう意味では、自分ごとの関心が持てるか、がここでもポイントになるのだろうと思います。
前職の同僚の記事が思い出されます。

世の中としても、各個人が、各個人のために、生成AIを使ってどんどん自分用のソリューションを作る重力がこの先強まるのかな、と感じます。
人に提供するものでないなら、作りながら考えればいいわけで。
(僕も早速週末にいろいろ作り始めました)

この先、ROIの捉え方がけっこう変わってきそう

とある同僚エンジニアが「生成AIでROIの捉え方が変わる。優先度が高まらないものも手がつけられるようになる」とSlackで言っていました。
ここ半月ほどで、体感的にわかるようになりました。
リターンを考える前に生成AIで試行してみる、という進め方が有効な場面も増えていきそうです。

各職種の輪郭が広がりそう

生成AIによって、各職種の「外側」に手が伸ばしやすくなるのは実感しました。
僕で言えば、スキル的な意味だけで言えば、たとえばプロトタイピングができる場面と幅はこの先広がりそうだな、と (実際にするのが全体最適かはまた別で、チーム状況を見ながら考えますが)。

各職種で同じようなことが起こり、輪郭が広がっていくでしょう。
各職種が混じり合った結果、既存職種の再定義が起こり、その中で、アイデンティティに関わる葛藤もまた起こるのでしょう。

スプシの存在感がますます増しそう

あと、参与観察的にスプシ+GAS+生成AIを触っててどうしても思いを馳せざるを得なかったのは、事務作業の未来。

生成AIの高性能化、廉価化はますます加速度的に進むでしょう。
今の有料レベルの性能の生成AIが誰でも触れる時代が来るんじゃなかろうかと思っています。

なので、業務フローが相対的に複雑でない業種・規模の事業者だと、事務作業について、なんらかのソフトウェアを導入するよりスプシを生成AIでああだこうだするのが最適になる重力が強まるんだろうなあ・・。と感じました。

・・そんなことにつらつら思いを巡らせているところに以下の動画を見て、うへ〜と思ったり。

こういった動画を体感を持って見ることができる、というのは、自分ごとの関心を持ったことの効能でしょう。

おわりに

・・というようなことをしたり、考えたりしました。
ただ、やはり生成AIがもたらす未来は、いまだ「さっぱりわからん」のが正直なところで、実践の中で考え続けるのが大事なんだろうなと思っております。

さて、今回の僕の思いつきは、明らかにUbieの環境があったから生まれたと思います。
生成AIについての視界がよい場所であるのは間違いないですし、生成AIに飛びつくほど興味があるわけではなかった人がなんだかんだ実践に入って、そこから学んでいるというのは、まさに環境の持つ力と言えるでしょう。
前回の記事に「まさにいま生成AIへの取り組みが盛んな組織で働くことは、キャリアを考える上で非常に重要なポイントになるのではないかということをヒリヒリと体感しています」と書きましたが、その直後に具体例ができました笑
(狙っていたわけではないけれど、結果的に伏線化してしまった)

というわけで、はじめに「Ubieが生成AIに注力しているのは転職後に意識した」と言っておいてなんですが笑 (巨大な「おまけ」でしたね笑)、Ubieで働くことに興味がある方は、XDMをください
ええ感じにできます。

それではまたどこかで。

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