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ティアーズ・フォー・フィアーズ「シャウト」:売れたアルバム検証シリーズ④
久々に売れたアルバム検証シリーズ、マドンナ、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース、フットルースに続く第四弾は、ティアーズ・フォー・フィアーズの「シャウト」を取り上げます。
「シャウト」以前のTFF
アルバム「シャウト」(原題"Songs from the Big Chair")は彼らの2枚目のアルバムですが、それまでの彼らの知名度というと、イギリスのチャートを追っていた人たちくらいしか知らなかったんじゃないかという程度だったはず。デビュー・アルバム「チェンジ」(原題"The Hurting")は、イギリスでは1位を記録(アメリカは73位止まり)、シングル3曲も全てトップ10に送り込むということで、まさに新進気鋭のイメージでした。が、その後シングルのみで発表した"The Way You Are"が英24位とかなり微妙なヒットに終わり(確かに今聴いても微妙な出来)、戦略を練り直したのか続くシングル"The Mother's Talk"で路線変更を図ります。ところがこれもトップ10入りを逃し(英14位)、短命に終わるのではないかと思っていたところにシングル"Shout"が大ヒットとなりました。
アルバム「シャウト」のヒット状況
さあそこからの快進撃は以下の通り。まずはシングル・チャートから。
Shout(英4位・米1位)
Everybody Wants to Rule the World (英2位・米1位)
Head Over Heels (英12位・米3位)
I Believe (英23位、イギリスのみのシングルカット)
Mother's Talk (米27位、アメリカのみカットのリミックス・シングル)
さらにイギリスではこの間、ファーストからの再発シングルとして"Suffer the Children"と"Pale Shelter"を発売するなど、1984〜85年にかけて彼らの人気はうなぎ登り。日本でも"Shout"がテレビCMに使用され、大いにヒットしました。
アルバムは英2位・米1位。85年の年間チャートは英5位・米10位、翌年も66位と19位と大ヒット。
収録曲
シャウト
静寂なパーカッション類のイントロから力強く始まり、"Shout!"と続くインパクト抜群の名曲。2つのパートからなる曲ですが、どっちがサビなのか判断がつかない感じでした。このアルバムにはこの曲を含め6分越えの曲が3曲もあるんですが、長さを感じさせません。
ザ・ワーキング・アワー
ファースト・アルバムが神経質そうなイメージだったのに比べ、セカンドはスケールの大きさと重厚さを湛えているイメージで、その代表格でもあるのがこの2曲目。ファーストからのファンはこの辺りで彼らの変化をまざまざと体験することになります。
ルール・ザ・ワールド
おそらく彼らの曲の中でもトップクラスの知名度を誇るであろうこの曲。作曲には彼ら以外にプロデューサーのクリス・ヒューズが関わっています。この曲のアレンジの影響は殊の外大きかったようで、XTCの"King for a Day"、リック・スプリングフィールドの"Prayer"(そっくり)などによく現れています。
マザーズ・トーク
前述の通り、アルバムからの先行シングル。サウンド的にはアルバムの典型でありながら、曲的には"Shout"と同じ構造で、2つの構成部のどちらがサビなのか曖昧になっています。アメリカではリミックスがシングルになりましたが、正直オリジナルの方が出来がいいイメージ。
アイ・ビリーヴ
ひたすら重い。よくこんな重い曲をシングルにしたなというところではサード・アルバムからの"Woman in Chains"と双璧。
ブロークン
"Mother's Talk"タイプの曲。後半でやっとヴォーカルが出てくるため、インスト曲のイメージ。途中で次の"Head over Heels"のリフが登場します。
ヘッド・オーバー・ヒールズ / ブロークン
重厚さが中心のこのアルバムにおいて、"Everybody Wants to Rule the World"と並び、青い空が開けてくるようなイントロに導かれるメロディアスなポップ・ナンバー。図書館が舞台となったMVも印象的。曲の終わりには先ほどの"Broken"がリプライズされます(シングル・ヴァージョンではカット)。
リッスン
この重厚なアルバムの締めくくりにふさわしいしっとりとした曲。非常に印象に残る曲です。