見出し画像

今さらながらビートルズ赤盤・青盤の選曲の謎を解く

ご無沙汰でございます。ということで昨年末に登場したビートルズの新装赤盤・青盤について語りたいと思います。まず、今回オリジナルと比べて収録曲が圧倒的に増えています。そこでそれらがなぜ収録されたのかを考えてみたいと思います。

赤盤追加曲編

I Saw Her Standing There
初期のポール作の名曲であり、ビートルズ初期の定番レパートリー。ポールのソロライヴでも度々演奏されることの多い代表曲ですから、これは順当。
Twist And Shout
I saw her standing thereと双璧をなす、こちらはジョンによるアイズレー・ブラザーズのカバー。一発録りされた(実際は2回録音)ことでも知られますが、ポールとのバランスもあっての収録かと。実は赤盤にはカバーの初収録が多い。
This Boy
これも初期の名バラッドにして、大ヒット曲I want to hold your handのB面曲。人気の高い曲なのでこれも納得。この曲を作り直そうとして失敗したのがYes, it isなのだとか。
Roll Over Beethoven
チャック・ベリー作でジョージのヴォーカルによるこれも初期の代表作。ライヴでも定番でしたが、そもそもアルバムWith the Beatlesからは元々All my lovingしか選曲されていなかったので、よかったのではないでしょうか。
You Really Got a Hold on Me
おそらく誰もが驚いたのがこの曲が収録されたことかと。スモーキー・ロビンソン&ミラクルズのカバーですが、実はこの曲、唯一のジョンとジョージのツインボーカル曲(ちなみにBBCではクリケッツのDon't ever changeが唯一のポールとジョージのツインボーカル)だからではないかなと。後述しますが、ジョージの曲が今回多く追加されたのは理由があると思われ。
You Can't Do That
ジョンの初期の代表作で、ジョン本人も気に入っていたことから収録された可能性が。ハリウッド・ボウルのライヴでも演奏されていました。またジョンの飲み友達ハリー・ニルソンによるカバーも有名。
If I Needed Someone
Rubber Soul収録のジョージの曲。日本公演でも演奏されるなど、ジョージ初期の代表曲で、いよいよジョージ個人の味が出てきたオリジナルということもあり、収録されたと想像。
Taxman
Revolver収録のこれもジョージの曲…とは思えないくらいよくできたファンク・ロック。アルバムの1曲目に収録されるだけある代表曲ですが、これまで赤盤には入ってなかったんですね。
Got to Get You into My Life
ポールの曲で、ビートルズとしては1976年の編集盤Rock'n Roll Musicからのシングルカットの形でも発表(日本では欧米と反対にHelter SkelterのB面)。ポールも気に入っていたのか、79年のカンボジア・コンサートやその後のウィングスの全英ツアーでも定番曲に。ブラスロックの名曲で、これはポールの意向ではないか。
I'm Only Sleeping
これもRevolverから(入れ過ぎの気も)。ジョンの作ですが、これもちょっと意外な選曲の一つ。マッドネスのサッグスによる秀逸なスカ・ヴァージョンも必聴。なんで収録されたんだろ。いい曲ではもちろんありますが。
Here, There and Everywhere
Revolver収録のポールによるバラッドの名曲。これもまあスタンダードなので、今まで入っていなかったことが疑問なくらい。シングル中心に収録したせいで漏れちゃったんでしょうね。
Tomorrow Never Knows
これまたRevolverからのジョン作。こちらは近年の評価から考えても入れるのは妥当。サイケ・ロックのスタンダード。オアシスがSetting Sunでオマージュ(パクリ?)していたのも印象的。
Within You WIthout You
これは誰しも収録に首を傾けたくなるようなジョージのインド音楽。名盤Sgt.Peppersからジョージの曲が全く入らないというのを避けたかったのか…(リンゴですらWith a little help my friendsが収録されていたので)。インドナンバーを入れるならまだLove you toやThe inner light の方がマシだったし、この曲絡みならアルバムLOVE収録のTomorrow never knowsとのマッシュアップを入れた方がまだ良かった(まああり得ないけど)。
Dear Prudence
個人的私見ですが、ジョンのファンは好みますがビートルズ・ファンとしてはそこまでしていれる曲か?という感じも。スージー&ザ・バンシーズや愛息ショーン・レノンもカバーしていたこともあっての収録かな。
Glass Onion
こちらもホワイト・アルバムからのジョン作品。こちらはシンプルにかっこいい人気曲ではあると思うのであまり異論はなし。
Blackbird
ポール作品。ウィングス時代のライヴでも度々演奏されているし、よく知られた曲なので、これも異論なし。後にポールのChaos and creation in the backyardに収録されたJenny WrenはBlackbirdの派生曲のように聞こえる。
Hey Bulldog
これも近年の評価が高いし、アルバムYello Submarine収録の新曲が全く収録されていなかった(まさかジョージの2曲やポールのAll together nowを収録というわけにはいなないし)ので、収録は妥当。Lady MadonnaのMVが実はこの曲の録音風景だったというのがベスト盤「1」の時に初めて知って驚いた思い出も。
Oh,Darling
ファンから熱望されながら頑なにライヴでやらないポールの曲。どうやら69年当時ですらこの声を出すのに苦労したくらい(ジョン談「なんで俺に歌わせなかったんだよ」)なんで、本当はやりたかったんでしょう。ちなみにライヴでやらないもう1曲はMartha my dear(最近のインタビューによるとピアノがめっちゃ難しいらしい)。
I Want You
この曲の根強いファンがいることはわかる。でも収録する必要があったかといえば甚だ疑問。
I Me Mine
Let it be収録のジョージのワルツ。元々アルバムGet backにも収録される予定がなかった短い曲をフィル・スペクターが拾い上げて長くした曰く付きの曲で、これまたわざわざ収録する必要があったのか疑問。
ちなみにジョージの曲が多く収録されることになった原因として、編集盤収録曲はジョージの曲もバランス良く入れること、という契約があるという説も。なるほど、だからAnthology、Live at the BBCでもジョージの曲が優遇された感が確かにある。とはいえ、これは蛇足。これとI want you入れるくらいなら、代わりにFree as a birdとReal loveをやはり入れるべきだったかと。
Now and Then
色々言われている「新曲」ですが、私はいい曲だと思います。I don't wanna lose you〜の部分がカットされたことも問題になりましたが、正直無理矢理感のある展開でしたし、ここの部分のジョンのヴォーカルもヘロヘロだったように思うので、これも正解かと。
ただ気になるのは、ジョージがAnthology プロジェクトの時に「この曲はクソだ」的なことを言ってたらしいこと。何が気に入らなかったのか分かりませんが、実際完成版聞くとジョージの貢献が非常に分かりにくい。スライドギターもポールだし。どうなんですかね?



いいなと思ったら応援しよう!