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20回以上プロレスを観戦して、思い出した本のこと

 気がついたら、会場に足を運んでのプロレス観戦が20回を越えていた。
 こうしてnoteに書いたことを振り返ってみたら、ふと『人はなぜ物語を求めるのか』という、千野帽子さんの本を思い出した。

 人間が、物語・ストーリーを必要とする生き物であること、その理由、利点と陥穽について語られた本だ。

〈世界にたいする「なぜ」という問と、それへの回答(原因や理由)とが、ストーリーのストーリーらしい滑らかさを生むのです。〉
 因果関係が明らかになると物語が滑らかな感じがするのは、〈できごとが「わかる」気がするから〉で、〈どうやら僕たちは、できごとの因果関係を「わかりたい」らしいのです。〉

 この「滑らかさ」や「わかりやすさ」に潜む危険性についても言及されていて、とても興味深く読んだ記憶がある。

〈「このあとどう決着をつけるのだろう」という予測は、意識的な演算というよりむしろほとんど「情動」のような反応〉という一節がある。
〈人間は、事態が「決着をつける」までの展開それ自体を、たんに情報として知りたいだけでなく、〉それを体験したいと思っているようだ、と続く。

 決着をつけるまでの展開それ自体を体験する、とは、まさにプロレスではないか……!

 試合そのものの展開だけでなく、その試合に至るまでに各選手が辿ってきた戦歴・経験・背景というストーリーにも、私は心を動かされている。
 プロレスを知れば知るほど面白いのは、プロレスラーの数だけストーリーがあり、どう展開するのかを予想し続けていけるから、なのかもしれない。

 プロレスラーが見せるストーリーにわくわくする。
 予想の当たり外れに心揺さぶられるのも楽しい。
 プロレスを介して、昔読んだ本をこうして思い出せたのも、面白い。

 さあ、またプロレスを観に行くとしよう。

参考文献

 本文中の〈〉で記した部分は、下記の本からの引用です。
 千野帽子『人はなぜ物語を求めるのか』(ちくまプリマー新書)


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