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試合中に乱入されても素直に闘う人を見た日(2023年5月2日、ガンバレ☆女子プロレスを観戦して思ったこと)

プロレスもなまもの

 演劇等の舞台は「なまもの」だとよく言われる。全く同じ観客がそろうことはほぼなく、必ずリハーサル通りに進められるとも限らない。ゆえに生まれるアドリブがある。ゆえに生まれるのは喜劇かもしれないし悲劇かもしれない。その不確定さもまた、舞台の魅力の一つなのだろう。
 そうした「なまもの」の感覚は、プロレスにもある。
 薄々感じていたその感覚が、衝撃を伴って主張してきたのがこの日の試合だった。

エキシビションマッチ

 リアラ練習生、デビュー前最後の5分間エキシビジョンマッチ。相手は先月と同じく春日萌花選手。リアラ練習生のエルボーの音が大きくなったな、声がよく出るようになったな、といった成長が感じられた。
 試合は5分時間切れで終了。3カウント取られることもなく、見事5分間を戦い抜いたリアラ練習生へ、春日選手が激励の言葉を贈る。会場に来て応援してくれる人たちがいる、あんたの人生はもうあんただけのものじゃない、心決めて5.5YuuRIにぶつかってこい! と。
 先月、大きな決断をしたことを発表した春日選手だからこそ、深く響く言葉だった。
(ちなみに春日選手のnoteはこちら)


時代を超えるもの

 我闘雲舞提供試合では、一度見たら忘れられない「Too much energy」な小石川チエ選手が登場。観客の外国人に「ハロー」と手を振り、ちびっこを見つけたら満面の笑みでアピールする姿も印象的だった。対するは桐原季子選手。クールで堂々とした佇まいでどんな試合を見せるのかと思ったら、歴史的とさえ言える昭和のギャグをモチーフにした攻撃をチエ選手に放つという意外な姿にびっくりした。

衝撃

 続いては、まなせあみ vs 小橋マリカのスペシャルシングルマッチ。
 「Japanese gal queen」マリカ選手可愛いカッコいい可愛い!!
 先月すさまじいインパクトを残したまなせあみ選手は、この日もペットボトルの水を持ったまま入場。リングイン後、声援を受けて「はーい」と元気に応え、コーナーで「今日もがんばるぞー」と自分に言い聞かせるように静かに気合を入れる姿が何だか健気で、応援したくなるファン心をくすぐる。
 体格差ならあみ選手が有利、経験値ならマリカ選手が有利、さあどうなる……相変わらずあみ選手は「痛いー!」「怖いー!」ととても素直に叫びながらも立ち向かっていく。こちらも素直にがんばれ!と応援する。そんな高揚の中、まさかの事態が起きた。
 突然、黒いレザージャケット姿の女子選手がリングに乱入。マリカ選手をアシストするかと思いきや、マリカ選手にもあみ選手にも攻撃を畳み掛けて暴れる。混乱する選手と観客とレフェリー。ゴングが激しく打ち鳴らされて無効試合となる。
 ひとしきり暴れた女子選手はマイクを要求。待つ間にあみ選手が「誰?」とおそらく観客全員の思いを率直に代弁してくれた。松本都、と名乗る女子選手。どうやら以前からこの試合に出たいと言い続けていたらしく、今日のカードに入っていなかったから来た、試合をさせろ、と主張し、社長に絡むこと絡むこと。お帰りください、という社長の紳士的対応も松本選手には届かず、パートナーとしてアレックス・リー選手を呼び込み、まなせあみ&小橋マリカ vs 松本都&アレックス・リーのタッグマッチを開始。
 ついさっきまで闘い合っていた二人が共闘する衝撃展開。マリカ選手が一方的に攻め込まれると、「よくもマリカさんにー!!」とやはり素直に闘志むき出しになるあみ選手。何度も返されながら、マリカ選手との連携も駆使して、あみ選手が勝利を決めた。
 松本選手は、次の試合に組まれていなかったら家に乱入してやる! という凄まじい捨て台詞を社長に投げつけ、リー選手にも文句たらたらで立ち去って行った……。これはガンジョの危機なのでは?? とハラハラする中、あみ選手がマイクを取る。
(以下、正確な言葉か自信がないのでカギ括弧なしの部分があみ選手のマイク、山括弧内が私の反応)

 プロレスは何が起こるかわからない、とお姉ちゃん(まなせゆうなGM)から聞いていたけど、こんなにひどいことされるなんて思わなかった。
〈本当、怖かったね。頑張ったねあみ選手マリカ選手!〉
 でも、小学校にいました、好きな子にほど意地悪しちゃう子。都さんもきっとそう。マリカさんもそういうところありますよね?
〈え、そう捉える?!〉
 みんなガンジョが大好きなんでしょうー? 仲良くしていきましょう!
〈ポジティブ! あれ? 乱入の事態にちょっと引きそうになっていた心が和んでいる……?!〉

 何この面白い一連の事態。
 そうか、これが(これも)プロレスか!

休憩後

 休憩明けは長谷川美子 vs 本間多恵のシングルマッチ。
 久々の再会だ、と嬉しそうに長谷川選手と握手する本間選手。ガウンが緑色の特攻服だったけど、優しいお姉さんなのかな? と思いきや、笑顔で絞め技を決めていく強いお姉さんな姿が印象深かった。

 メインイベントは春日萌花&YuuRI vs 稲葉ともか&HisokA。「稲葉ともか出てこい」と煽るYuuRI選手。HisokA選手が「出るまでもないっすよ」と稲葉選手の前に出る。その生意気感が、男装女子っぽさ(シンプルにジェンダーレスなのかもしれない)が、可愛い!!
 YuuRI選手と稲葉選手がバチバチに戦い、双方とも交代すると、春日選手が「可愛がろう」と言い、HisokA選手を何度も投げて可愛がる。私はあれほど激しく可愛がることは無理なので、代わりに可愛がってくださった春日選手ありがとう、と謎の感謝を脳内で唱えていた。
 場外で稲葉選手を押さえ込むために捕まえようと、全力でリング外縁を駆け抜ける春日選手の勇姿も印象的だった。

やっぱりプロレスは面白い

 やっぱりプロレスは面白い。
 「なまもの」ゆえの不確定さは、実は現実の生活にもあるもので(むしろ現実の方が要素が多すぎて不定で不安で不確実なことだらけだと思う時もある)、その不確定さが不測の事態となった時に、どう対応するか、どう決着をつけるかという対応力が、もしかしたらこういう「なまもの」を見知っておくことで培われるのかもしれない。
 そんなことを思った試合だった。

 さて、次はどんな試合を観られるかな。

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