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もう誰も失いたくない。

もしまた大切な人が自殺してしまったら。

もしまた家族が自殺してしまったら。

もし今目の前にいる友達が自殺してしまったら。

もし今一緒に働いてる人が自殺してしまったら。

もし今関わっている子どもが自殺してしまったら。

その日は、また、突然やってくるかもしれない。

どんなに元気そうに見えても、
どんなに普通に生活しているように見えても、
もしかしたら、自殺してしまうかもしれない。

私はまた妹の時のように、それに気づけないかもしれない。
私の一言で止められたかもしれないのに、その一言に気づかないかもしれない。
最悪、私の一言で自殺してしまうこともあるかもしれない。

そんな強迫観念のような感覚がずっと私にまとわりついていた。

誰といてもどこか気が抜けなかった。

私の目の前にいる人が落ち込んでいる、悩んでいる。

さらには

「死にたい」

なんていう言葉を聞く。

「また私は大切な誰かを見殺しにしてしまう。」

そんな呪いの言葉みたいなのが私の頭をよぎる。

妹の自殺直後の数年間は、特にそんな状態がひどかったので、私に依存してしまう人もいた。

どんなにどんなに私が寄り添っても、その人は悩みから抜け出すことはなく、私を頼ってくる。

そして、私自身もそういった依存されることに依存していた。

頼られることで自分の存在意義を確かめていた。

だから、本当の意味で誰も救うことはできなかった。

そして、だんだんと、人に寄り添うどころか、人とただ一緒にいることさえも嫌になっていって、一人でいることも増えた。

自分が今嬉しいのか、楽しいのか、悲しいのか、、、そんな感情もよく分からなくなっていった。

そして、ついに心が空っぽになり、体も動かなくなった。

就職してから1年が経つ前だった。

休職せざるを得なくなった。

だけど、そのことをきっかけに、私は初めて自分の感情と向き合うことになった。

自分の抱えている悲しみ、自責感、罪悪感、後悔、絶望感、喪失感、虚無感、焦燥感、、どこからともなく溢れるようにでてきた。

とてつもなく苦しかった。

けど、出てくる感情をただひたすら感じるしかなかった。

でも、ある日の朝、私はその感情が私が作り出したただの感情だったことに気づいた。

すっと私はその感情の中から抜け出すことができ、その瞬間、私の中で今までの感情が喜びや楽しさ、幸福感に変わり、どこからともなく溢れてきた。

うれしくて涙が止まらなかった。

その時に、私はネガティブで辛い感情もしっかり受け止めて感じてあげないと、その逆のポジティブな感情も感じることができなくなるのだと思った。

どんな感情も蓋をしてしまうと、他の感情も感じることができなくなる。

どんな感情も私の大切な一部なのだということを知り、自分の感情を受け止めることの大切さを知った。

そして、本当に人を救うためには、まず自分が満たされていなければ、誰も救うことはできないのだと感じた。

誰かを救う前にまず自分を救わなければいけないということに気づいた。

そして、現在、妹が自殺して13年が経った。

あの時よりは、自分の感情も受け止められるようになったし、自分を満たすことができるようになったと思う。

今現在も自殺する人は、後を絶たないし、その周りで絶望感を感じ、心を痛めている遺族の人たちがいる。

 

「誰かの小さな光になりたい。」

どこか諦めていたけれど
最近また出てきた気持ち。

でも、その反面、私にできることなんてあるのか。
私はまた誰かを自殺でなくすんじゃないか。
また助けることができずに見殺しにしてしまうんじゃないか。
むしろ、逆に私の一言で自殺させてしまうんじゃないか。

そんな気持ちもまだ蘇ってくる。

でも、
この前こんな質問をしてもらった。

「もし、今妹さんがあなたの側にいるとして、あの時のことを妹さんはなんて言っていると感じますか?」
 

その時に感じた私の感覚は言葉にするのが難しい、

妹からの大きな大きな愛のような感覚だった。

妹の苦しみに気づけなかった情けなくて最低な私も、
今もまだ自信が持てずに恐怖感をもっている私も、
一歩踏み出す勇気のない私も、

全部許して受け止めてくれているような
大きくて深くて優しく包んでくれるような感覚。

幼いときに
「お姉ちゃん、すごい!」
って目をキラキラさせて、
私の真似ばっかりしてた妹の姿が見えた。

そして、それを感じることができた自分に驚いた。

13年前の私には、とても感じることなんてできなかったと思う。

今まで自分を満たすことに意識を向けてきて、正しかったんだと思うことができた。

もう、誰も失いたくない。

でも、また誰かを失うこともあるかもしれない。

それでも、今の私にできることを勇気をだして、やってみるしかない。

そう思っている私のことを
妹が「お姉ちゃん、すごい!」
って隣で言ってくれているような気がする。

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