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電車に乗れない

どうあがいても電車に乗れない。
そんな瞬間がある。
ラッシュにぶち当たったときが特にそうだ。
階段からうぞうぞと湧いてくる人、人、人の波に怯え、縮こまり、何とか構内にとどまる。
来る電車を見つめ、「これは乗れそうか」と考える。
一瞬勇気を出して乗り込む。
一瞬で体が固まる。
こんな場所にいるのは無理、ということで速攻降りる。
何とか乗れる電車が来るまで、1本、2本、3本と目の前の電車を見送る。
帰宅時間は30分から1時間半ほど伸びる。
その間ずっと、人に怯え続ける。

これが私にとっての日常。
まさに今起こっている現実だ。
人口密度の高い駅構内、人間の箱詰めと化した電車を、R18Gくらい暴力的に感じている。

人に近づかれるのが怖い。
人の視線が怖い。
不用意な声や音が怖い。
閉じ込められて逃げられないのが怖い。
全身が緊張する。背筋が粟立つ。
恐怖に耐えるために歯を食いしばる。
手の甲に爪を立てる。

そういうふうにして怯えているところを怪訝な顔で見られるのもつらい。
おそらく私の行動がおかしく見えているのだろうが、私にとってはこんな恐ろしい場所に怯えない人の方が不思議だ。
なぜ平然としていられるのかわからない。
感覚の違いとは恐ろしいものだ。

そんなことを書きながら、今も目の前の電車を見送っている。
ああ、これにも乗れない。

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