
名前はそんなに重要ですか?
日本における大学と就職
今の大学制度が日本にできたのは明治時代で、その当時、大学に通っていた人は貴族クラスでした。明治期の日本は欧米諸国に追いつこうとしているところで、大学を卒業した人を財閥の幹部や政治家やキャリア官僚として採用し、インテリな人を集めて日本の近代化を進めました。この当時の大学は今より大学の数も少なかったので、本当に選ばれた人しか行くことができませんでした。
日本が近代化を進め、二度の大戦を経た昭和中期に明治期同様、発展が日本の最重要課題であったため同じようなことが起きます。「いい大学を出て、いい会社に就職する」という考え方はこの時に生まれた考え方であり、この考えを持った人が身近にいるはずです。僕の祖父母はまさにこの考えの権化といって言いほどこの思想を信仰しています。高度経済成長期は終身雇用が約束され、一度就職すれば安泰でした。実はこの終身雇用は日本では戦後にできた制度で、戦前は欧米のように転職が当たり前だったそうです。つまり、「いい大学を出て、いい会社に就職する」という考え方は発展途上中の考えであって、発展後の考えではなく、今の日本には適していません。
これまでは大学を重んじる時代でしたが、ここから大学名を重んじる時代に突入します。平成に入るまでは大学を出ていることがブランドで、さらにそこに名の知れた大学だとさらに価値が上がりました。しかし、今は大学全入時代で大卒といってもそれだけでブランドにはなりません。そこでどこの大学を出たかを見るようになったのかもしれません。平成初期までは大卒であれば、一定ラインをクリアしているので大学名のチェックは加点要素で、それ以後は足切りラインと言えます。今の日本で大学の名前が重視されるのは大学によってレベルが大きく違います。これは文科省の利権が絡んだ教育行政の失敗と言えます。昭和から平成にかけて、日本も大学を重んじる時代から大学名を重んじる時代になったのです。
学校重視?専攻重視?
欧米では日本と異なり、大学名を聞かれることはほとんどありません。最初に聞かれるのは専攻について聞かれます。僕もドイツに行ったときに何を専攻しているのか?と聞かれました。専攻の次に聞かれたのはどこ(地域・地名)で学んでいるのかでした。欧米で大学名を聞かれることはほとんどありませんでした。大学名を聞かれたのは国際学生証代わりに使っていた当時の英文の在学証明書を見せたときぐらいでした(笑)。
欧米では昭和の日本のように大学に通っているだけで、学力が担保されていると考えられています。そのため、大学がどこであるかと行ったことはあまり気にしません。昭和の日本と異なるのが発展途上ではなく、欧米は経済成長後であるため、国の経済成長を支えるために大卒の人材をすぐ確保しなければならないことはありません。さらに日本は総合職採用でジェネラリストを育成しようとしますが、欧米ではスペシャリストを採用します。日本の就職システム(新卒)では、スキルがなくても会社で育てればいいという考え方で、最低限の経歴と能力さえあれば問題ないという考え方に立っています。
それに対して欧米では、そのスキルが会社にとってどう役立つのかをアピールしなければなりません。そこで、学校ではなく専攻を見られるのです。第二新卒を除く中途採用は欧米的な発想でスキルを求められます。このスキルは資格ではなく、どういった仕事をどのようにしてきたかです。ここを勘違いして、転職活動に失敗する人が多いそうです。大学を学んだ知識をどうやって、その会社で活かせるのかをアピールすることが欧米では求められます。そのため、「○○大学出ています!」だけでは、「で、何ができるの?」と言われておしまいです。欧米では何を学んだかを聞くのは勉強した内容だけでなく、その人自身の哲学を聞くという意味もあるそうです。何かに対する哲学というものを向こうでは非常に大事にされます。面接を受けるときに仕事に対する哲学や何かに取り組む哲学を持っているとアピールしやすいと思います。