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カクテルを飲むルール

ハタチを過ぎた誕生日、あれは20歳だったか21歳だったか自分への誕生日プレゼントという女子力の高い方法によって僕はカクテルセットを買った。

銀色の容器でショットを測るタンブラーがついているやつである。
そう、僕はその頃はビールはあまり飲めなかったがお酒は好きだった。なのでビールは一杯だけにして、その後はいつもカクテルを注文していた。


カクテルと一言に言っても種類は多い。オシャレなイメージの三角グラスの入ったカクテルからタンブラーに注いで混ぜるだけのやつもある。
オシャレな三角グラスのカクテルはあのシャカシャカとするやつだ。僕はカクテルの中でモスコミュールが好きなのだけれど、モスコミュールはシャカシャカしない。


シャカシャカしたいのだけれどシャカシャカできないのだ。なぜならモスコミュールには炭酸が入っている。なので炭酸が飛ばないようにタンブラーにウォッカとジンジャエールを入れて炭酸が抜けないように下から掬い上げるように1,2回混ぜて完成だ。

僕がモスコミュールを好きな理由は二つある。一つは味で、もう一つは歌手のゆずの影響が大きい。


中学生の時、貪るようにゆずを聞いていた。ゆずの曲で四時五分という歌がある。この四時五分という歌の二番の冒頭で「モスコミュールが大好きでした。」という歌詞があるのだ。
中学生の僕はモスコミュールがなんなのかなど知らない。今のようにネットが発達していた時代ではなかった。分からないときは本で調べるか、人に聞くかである。
僕はモスコミュールがもしエッチな単語だったらどうしようかなと思いながら親に聞いた。そしてモスコミュールはエッチな用語でもなんでもなくお酒の種類だということが分かった。


それから僕は自分がお酒を飲める頃になったらモスコミュールを飲んでやるぞと意気込んでいた。そして実際に飲んだらとても好みの味で今でも好きなお酒の一つだ。


そんなこんなでモスコミュールが好きになったのだけれど、カクテルといえばモスコミュールのようにタンブラーに入ったものではなく三角グラスに入ったもののイメージが強いのかもしれない。暗がりのオシャレなバーで三角グラスのカクテル。
オシャレ女子、インスタ映え、味だけではない。見た目や雰囲気を演出する空間がそこにはある。


マスターがシャカシャカと降って小洒落た名前がついた飲み物。青だったりオレンジだったり綺麗な色をしている。世に疲れた紳士淑女が行くのも良し。お気に入りのあの子を連れて行くのも良し。
もしあなたがお気に入りの女性を連れて行った時のために今日は一つの雑学をプレゼントしよう。


あの三角グラスである所以は、何もオシャレに見えるからという理由ではない。味を損なわないようにあの形にデザインされている。カクテルは温度によって味が大きく損なわれるのだ。そこで人間の体温によってカクテルの温度が変わらないようにあの形になっている。だから三角グラスを持つときは当然あの細い足を持たなければならない。
だからシャカシャカするときもできるだけ容器に接地する面を少なくするため最小限の指で容器を持って素早く振るのだ。あれはパフォーマンスではない。
なので、グラスに注がれたカクテルを飲むときもできるだけ温度が損なわれないうちに飲まなければならない。


そのような理由から、三角グラスのカクテルを飲むときは3分以内に飲むか、三口以内で飲むというのが美味しいカクテルを飲む方法である。
でもそんな飲み方をしたらもちろん大いに酔っ払う。アルコール度数もなかなかなのだ。なので女性を口説きたいときはそんな雑学片手に飲むのもいいと思う。
女性を酔わすために使うのも良し、逆にこの知識を語った上で「そういう男がいたら気をつけなさい。」とか「そんな小洒落たルールは無視をして今日は楽しく飲もう。」とその雑学を否定して相手から信頼を得るも良し。使い方はあなた次第だ。


今日はそんな大人のカクテル講座の時間でした。


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