メキシコ生活記録⑨ ー誕生日会とママ会
今回は、タイトル通りの大冒険譚を披露したい。私たちにとって、ビキニでアマゾン川を渡るくらいの冒険でした。
2号のお友達のバースデーパーティー
メキシコは大人も子供もお誕生日を大切にしているようで、ママチャットではこどものと一緒にお母さんの誕生日まで聞かれたほどだ。学校でも毎週金曜日は、その週に誕生日だった子の親が学校へドーナツやカップケーキなどを持ってきて、クラスみんなでそれを頂くという日に設定されている。「今週はクリスピークリームドーナツもらった!」と喜んでいる。もちろん自宅にお友達を招いてのパーティーも、こどもが望べば、ほとんどマストで開催されているんじゃなかろうか。
で、2号にはクラスで特に仲良くしてくれている親友が2人いて、今回はそのうちの1人がお招きしてくれた。パトには入学当初からお世話になっており、2号が学校へ通えるようになったのは彼のおかげと言って過言ではない。なので、パトのお母さんから直接お誘いを受けたときに、「行くやんな!?」とほぼ強制的に承諾させてしまった。でも2号も乗り気だったし、パト本人からも誘われていたようなので、まぁいいかと思っていた。
しかし、「母は一緒に行かない」「PPKidsも一緒」という追加情報が明らかになってくると、2号の雲行きがあやしくなってきた。私が一緒に行ってもよかったんだけど、私がいると2号は私から離れないので、それではせっかくの誕生日会なのに失礼だろう。ということで、そう決めた。決めたので、2号が泣いてもわめいても変えない。そう、土曜日の誕生日会が近づいてくるにつれ、2号は「行きたくない」とゴネはじめたのだ。
わんわん泣き出す夜もあった。でも、もう断わらない。約束は簡単に破ってはいけないし、何よりも、2号が来ると知って喜んでくれたパトに申し訳なさすぎる。パトより自分の気持ちを優先させるのは、この場合我が家では許されない。
でも、2号のゴネは私が同行しないことよりも、「PPKids」という謎の人たちの方に起因してたみたい。私もよく分からなくて「近所の公園でみんなでサッカーするって言ってたから、サッカークラブの友達とかかな?」という私なりの理解を言うと「知らん子が来るなら行かない!」となってしまった。とはいえ、やっぱり自分でも今更断るわけにはいかないと思っていたのか、パトにあげる誕生日プレゼントを頑張って作っていた。サッカー少年なパトへの誕生日プレゼントは、サッカーボール(本物)と折り紙のサッカーボールと手裏剣、それからお手製の手裏剣飛ばし。
そして、当日。土曜日10時にパトの家に送り届けて、14時にお迎えというスケジュール。もし14時前に限界がきたら電話して、と私の携帯を渡す。半泣きの2号を置いていくのは心が痛んだけど、これも成長のためには必要だ。パーティーにはもう1人の親友も来ていたので大丈夫だろう。パトのお母さんにお願いし、2号は蚊の飛び交う公園へサッカーをしに行った。
ギブアップの電話がすぐかかってくるんじゃないかと私はハラハラしていたが、夫と1号はわりとのん気に「大丈夫っしょ」っていう感じで構えていた。まぁ心配しても仕方がないので、クレープを食べたりショッピングしたりと1号と楽しんだ。
そして、なんと電話は、ついにかかってこなかった!だから予定通り14時に迎えに行こうとこちらから電話をかけた。すると「あ、ちょっと今からケーキ切るみたいやから、またすぐかけなおす!はーい」みたいな感じで拍子抜けするくらい普通に電話を切りやがった。夫は「ほらな」って言ってたけど、ほんと私はついていけないわ。
結局「PPKids」の正体は、外注のイベントお兄さんたちだったらしい。こどもたちの遊びを取り仕切って楽しませてくれる人たち。3人くらい来ていたお兄さんたちのおかげで、何をしていいか分からない1人の時間みたいなのはまったくなく、みんなで一緒に公園で宝探しゲームをしたり鬼ごっこをしたりして遊んだそうだ。あんなに恐れていた「PPKids」のおかげで、2号は「メキシコで初のお友達のお誕生日会」というダンジョンを楽しくクリアできた。「PPKidsがおってほんまによかった」と日焼けした顔で熱く語ってくれた。日本にもこういう、個人主催の誕生会とかでも自宅へ気軽に呼べるサービスあるのかな?誕生会などこどもがたくさん集まる自宅イベントに、こういうお兄さんお姉さんが来てくれると助かる大人はいっぱいいると思うけど。
パトの誕生会は、近くの公園でPPKidsと13時まで遊ぶ→PPKidsが帰った後自宅でピザやケーキをみんなで食べて遊ぶ→14時過ぎに解散、というとても分かりやすく楽しいものだった。流れは日本とそう変わらないようにも思えるが、「外注の盛り上げ役がいる」「手料理はない(デリピザと買ってきたケーキ)」「終了時間が設定されている」あたりは、日本と違うかな。終わりが分かっているから2号も安心して楽しめたみたい。ピザがおいしくて食べすぎたらしく、ケーキが入らなかった2号は「せっかくメキシコのケーキを食べれるチャンスやったのに一口くらい食べて来いよ」と私たちから責められていた。
「行ってよかった!」とおおぴらに言うと、私たちや1号に「だから言うたやろ!」と言われるから悔しいのか、あまり大声では言わなかったが「行ってよかった顔」はしていた。
1号の学年のママさんたちとモーニングを食べた
what's upのママチャットでみんなに向けてお誘いがあり、どうしようかと迷っていたら、近所に住むママさんから「うちの車に乗せて行ってあげるから一緒にどう?」と誘ってもらったので行くことにした。夫からは「すごいな…」と言われた。だって私、友達と呼べる人もまだいないし、スペイン語まったく分からないからね。誘ってくれたママさんは英語が話せる人だけど、スペイン語の方がネイティブだし、ほとんどのママさんがそう。英語が苦手な人もいる。っていうか、私も英語苦手だし。どう考えても楽しめないと思うけど、その楽しめない感じも貴重な経験だなと思ってね。
モーニング会場はゴルフ場に併設されたカフェみたいな所だった。そして、ママさんたちが20人くらい(もっとかな?)いた。カフェは借り切り。私はもうすでにけっこう面食らっている。で、とにかく席に座ろうとしていたんだけど、連れてきてくれたママさんはすでに来ていた他のママたちと話していてなかなか座らない。後で分かったんだけど、メキシコの方々は全員にちゃんと挨拶して回ってから座るのがデフォルトみたい。入口から手を振るとかで済ませるのではなく。私けっこう早くに、すんって座っちゃったから失礼なことしたんだな、と後から知る。
大きなテーブルを囲むように座り、みな縦横無尽にずっとスペイン語で話している。時々笑いが起こったりすると、隣のママさんがこういうことを話してるのよって英語で教えてくれる。私はスマホをみたり、テレビから流れている謎番組に目をやったり、何となく話に入っているような雰囲気を出したりしてコーヒーを何回もおかわりして飲んでいた。パクチー抜きでってお願いしたメキシカンモーニングプレートにパクチーが入っていたりしたけれど、辛くない方がきたからよしとしようと思えるほどに、私の心は落ち着いていた。だって、何話してるのか本当に分からないんだもの。
これが日本だったら心底いたたまれなかったかもしれない。知り合いのいない土地に引っ越して、そこで友達のいない大規模なママ会に呼ばれたら、と想像する方が震える。だって小声も聞こえるし、「あれって私のことかな?」とか気になってしまう。でも、考えてみてほしい。みんなスペイン語なんだよ。目の前で悪口言われてたって分からない。もし何か違和感があっても「ま、メキシコ人の感覚分からないしな」と流せるだろう。でも、これが日本なら、私はきっとどこか「分かり合える」という前提でこうした会に参加するだろう。だから「分かり合えない」ことは何がしかの失敗となり、私はそうした状況を恐れるわけだ。
そう考えれば、ママ会@メキシコも案外こわくないでしょう?それに、意地悪されてるわけじゃないしね。ママさんたちみんなやさしくて、私のつたない英語の自己紹介も好意的に聞いてくれたし、私を馬鹿にして笑ったり仲間外れにしようとしてる人なんて1人もいなかった。そういうイヤな感じって、言葉が分からなくても皮膚感覚で伝わってくるもんだから。だから、本当にスペイン語を理解したい、話したいってめちゃくちゃ思った。頑張ろう。
近くに座っていたママさんが「6年間、中国に住んでいたから、言葉が分からない辛さが分かるよ」と言ってくれた。その人は3年くらい頑張って中国語を勉強したけど習得できなかったらしい。私にとってもスペイン語は難しいと言うと、「私にできたんだからあなたにもできるわ!」と励ましてくれた。中国語習得できなかったのに、そんなふうに励ましてくれるメキシコ人のいいかげんさと優しさが好きだなと思った。
で、やっぱり帰りもみんなに挨拶して回る。一緒にきたママさんも「みんなにアディオスするから」って言っててなんかいいなと思った。私もついて行ったので、帰りはみんなにアディオスできた。
エンディング
と、このように私たちの日常は冒険に満ちている。今回誘ってくれたママさんが料理教室にも誘ってくれて、参加することにしたので、そちらの様子もまたお知らせします。
ビキニでアマゾンが、タンクトップでイオンくらいの冒険になる日が早く来るといいな。