髙橋真梨子・2024年・紅白歌合戦
2024年大晦日の紅白歌合戦。
75歳、髙橋真梨子さんの歌唱、素晴らしかった。
出だし一言目、緊張されていたようで「あ、やばいかも」とハラハラしましたが、さすが50年の職人、すぐに持ち直されました。サビのところは、流石でした。
今の、あの雰囲気が良いんですよね、”全盛期”と称される90年代のギラギラして余裕綽々の上手さより、2010年代~2020年代の、技術を駆使して一言一言、一生懸命にお歌いになる、あのマイクスタンド前の佇まいが、個人的には好きです。
ご本人も以前、TVのインタビューで、”大工さんのようにコツコツと歌の仕事をしてきました”と仰っていました。
過去のアルバムの製作数がそれを物語っています。一本気な職人の生き様。
2024年10月18日、福岡サンパレスのライブに参加してきました。
ベストコンディションの歌唱で、感動しました。故郷でのラストコンサートだったので、ご本人の想いも溢れていたのかもしれません。
最後の全国ツアーは、2025年5月まで続きます。
(オフィシャルHP:http://www.the-musix.com/mariko/concert.html)
私が2024年紅白歌合戦の髙橋真梨子さん出演の件にこだわったのは、おそらく最後の出演と思われるからです。
彼女のキャリアはJ-POP発展の歴史。歌唱力に加え、常に新しいサウンドを試行されていて、今でこそシックな佇まいですが、特に80年代はNEW WAVE的な感じ。
「桃色吐息」は彼女の代表曲の一つ。作曲が佐藤隆で、このデモテープを初めてきいた時に、髙橋さんは後の夫・ヘンリー広瀬さんと「この曲、ビートルズっぽいよね」と話したという。(ソースはNHK「ごごナマ おしゃべり日和」2017年4月3日 髙橋真梨子&ヘンリー広瀬 出演分)
佐藤隆さんがビートルズっぽいので、その感想になるのは、良く分かります。
ライブ映像を見れば、ヘンリーさんがいつもアコースティックギターをジャカジャカ鳴らしておられますが、これが佐藤隆のデモテ時点の名残りのような気がする。シンセサイザーのサウンドにアコギの音が融合して、固有の世界観が構築される。
下の「ClaChic」ツアーの「桃色吐息」の演奏は、とりわけ素晴らしい。
日本のロックの殿堂、とも賞してよい名演だと思います。
※ 参考資料として、下は「桃色吐息 (Demo Track) / 佐藤隆」。
作曲者である佐藤隆、自身によるデモトラックです。名曲に歴史ありですね。
上記の事も踏まえて、
2024年紅白の歌唱の直後、髙橋真梨子さんが「ありがとうございました..」と、2度仰ったのには、深い意味があると思う。
歴史的な締めくくりと、現在そしてこれからのJ-POPシーンへの祝福。
とはいえ引退はされないそうですので、これからも歌声を聴かせて頂きたいです。作詞家でもありますので、他のアーティストへ歌詞の提供などの活動もしてほしいと思います。
ここから余談ですが、
▼「祥寺クィーン」(1984年)は、数年前流行した言葉「シティ・ポップ」として再評価していいんじゃないかな・・。色あせないクールさがあります。
▼「黄昏人」(1992年)は、前衛的なシンセサウンド。
実はこの曲は、私の子供の頃のトラウマ曲です。
イントロ~Aメロの雰囲気がダークで、長年、誰の何の曲か分からないまま、「怖い曲」として、脳裏に保管されていました。大人になってから「これは髙橋真梨子の曲だったのか!」と驚いたのです。
真梨子さんは、私が生まれる前からシンガーとして歌っておられますが、このように、”幼少期に聴いて、誰の何の曲か分からないまま、トラウマになっていた曲”・・みたいな形でも、私の人生に影響を与えています。(笑)
今は好きな曲になりました!
▼「別れの朝」「陽かげりの街」
ペドロ&カプリシャス時代の名曲。私は基本的に、作詞家「なかにし礼」さんのファンなのですが、「別れの朝」は、なかにし礼さんの代表曲の一つ。
真梨子さんはペドロ&カプリシャスの二代目ボーカルで、「別れの朝」は彼女のオリジナルではないため、DVD化されている1993年・アメリカ・カーネギー・ホールでのライブ、客席との会話の中で「ニューヨークまできて別れの朝をリクエストされるとは・・」「私のオリジナルじゃないんですよ。だから、歌いたくないですね。」ときっぱり言い切られています。彼女のこの気っ風と矜持、良いですね!
ただ非常に人気が高い曲で、髙橋真梨子さんの卓越した歌唱力が発揮される一曲でもあり、後年はCDに収録されたり、ライブでもよく歌われていますね。
▼「DANCEはひとり」(1990年)
私の一推し、大好きな曲です。時代を感じさせるサウンドですね。
日本がバブル時代だった時の曲ですが、「DANCEはひとり」っていうタイトルとその世界観が、髙橋真梨子さんらしい、佇まいですね。
シンセポップの名曲として再評価されてほしい。
▼「奏」(スキマスイッチのカバー)
スキマスイッチの「奏」は、私はリアルタイム世代で、リリースされた頃からすでに名曲として賞され、いまも歌い継がれる日本のスタンダードナンバーとなっていますが、
この髙橋真梨子さんのカバーが、とにかく素晴らしい。
一語、一語、丁寧に歌い上げておられる。彼女のテクニックや創造性が見事に発揮された名カバーだと思います。
▼そして何と、テレビに出ない事で知られる髙橋真梨子さんが、1995年にダウンタウンの番組「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」に出演されています。
一体何があったのでしょう。
でもこれが今となっては、貴重なトーク映像で、名曲「フレンズ」のPreludeバーションの歌い出し「修羅のごとく生きた 青春の抜け殻」の意味合いが、このダウンタウンとのトークでよく分かります。
若いころの博多時代のエピソードが語られています。
▼「無伴奏」(1997年)
髙橋真梨子さんのバラードといえば、「for you…」「ごめんね…」「フレンズ」などが有名ですが、マイブームはライブで歌われる「無伴奏」。叙景的な歌詞で、素晴らしいです。雨の中にたたずんでいる気分。
私も 無伴奏 一人ぽっち
頬にかかる 雨が似合うの
頬にかかる 雨が似合うの
以上、髙橋真梨子さんの魅力は語り尽くせません。
近年は彼女の公式YOUTUBEで沢山の映像や曲が一般公開されています。
音楽ファンはぜひ、チェックしてみてください!
良い音楽は時代を超えて、次世代に歌い継がれていきます。
髙橋真梨子さん、ありがとう。