銭湯で会う少年の話
・銭湯が好きで、本当によくいく。お湯に浸かりにいっているというより、お湯に使って、サウナに入ったあとの、水風呂に入りにいっている。これがもう最高で、お酒に酔うとかじゃない、気持ちよさ。血液の循環とんでもなくよくなって、体の隅々まで酸素が行き渡り、頭は空っぽになって、リフレッシュできる。その日は呼吸がいつもより深くなってるように感じて、安眠できる。
銭湯好きのぼくが特によくいく銭湯が、大阪アメ村にある清水湯である。脱衣所から螺旋階段をのぼって、ひとつ上の階にお風呂がある。「中温」と書かれたお風呂に入って、ほどよく温まったら、3分間のサウナタイムである。相場は3分なのだが、ここには時計がない代わりにテレビがあって、なんでもない番組がやっている。体内時計で3分を計りつつも、番組のキリがいいところまで見る。それから水風呂にドボン!だ。また清水湯の水風呂の温度が最高なのだ。この至極を3セットする。
・その清水湯で毎週会う人物がいる。彼は人見知りしない。全身全霊のコミュニケーションで自分のことを表現する。家族のことや今週あったこと、友達のことを持ちうるすべての表現で伝えようとする。そして水飛沫があがるほど、全力で湯船に浸かるし、全力で水風呂に入る。彼は小学1年生の男の子なのである。
ぼくは彼の4倍以上生きているので、彼より知っていることが多い。九九だってわかるし、英単語だってたくさん知っている。彼は知的好奇心が強く、興味津々に聞いてくれるので、こっちも調子にのって、3×3=9やらwhiteやらの英単語を教えてみる。
小学1年生で3×3なんて、とっても難しいと思うが、彼は指を3本出して、それをイチ・ニイ・サンとする。はじめは6とか8とか間違っていたのだけど、間違うことを恐れず、なんどもチャレンジするうちに9にたどり着く。彼のように、目の前のことに全力でぶつかっていく心をいつも忘れないでおきたい、と、会うたびに思います。
今週もどうもありがとうございました。それを何度も繰り返してつく力が、実力である。