箱物に消えた「消滅年金換算2兆円」は本当に取り戻せないのか!?
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日本の年金積立金の一部は、採算が取れないリゾート施設「グリーンピア」をはじめとした「箱物事業」に多額の投資が行われました。これにより最終的に約3,682億円の損失が発生し、年金財源が浪費されました。一方で、同額を世界株式インデックスファンド(例:MSCI ACWI)に投資していた場合、20年間で最大約3.5倍(元本1,914億円が約6,699億円)に増加する可能性がありました。年金の適切な管理と法的な責任追及の必要性が指摘されています。
詳細報告
1. 年金積立金の無駄遣いと「箱物事業」
1990年代から2000年代にかけて、年金積立金の一部が全国各地の高齢者向けリゾート施設「グリーンピア」に投資されました。厚生省(現在の厚生労働省)と社会保険庁が主導したこのプロジェクトは、年金財源を活用して16施設が整備されましたが、維持費や利用者の低迷により赤字が続き、最終的に総額3,682億円の損失を生みました。建設費用として投じられた1,914億円が、売却総額約48億円にしかならなかったため、大幅な損失が確定しました  。
2. もしETF(例:オールカントリー)に投資していた場合
同じ1,914億円を世界株式インデックスファンドである「MSCI ACWI」に20年間投資していたと仮定すると、配当込みで約3.5倍、すなわち6,699億円まで増加する可能性があったとシミュレーション結果で示されています 。これにより、年金積立金の効率的な運用が年金財源を長期的に増やす可能性があったことがわかります。
3. 投資失敗に関わった団体とその責任
「グリーンピア」プロジェクトには厚生労働省、社会保険庁、年金事業団、厚生年金関連の予算管理部門が関与し、一部の担当者が天下りなどを通じて利益を得ていたとされています。こうした無責任な投資決定の背景には、年金財源の安定的な運用に対する認識の不足が指摘されています。しかし、当時の法制度では、こうした官僚や関係者に損失の責任を求める仕組みがなかったため、年金財政の責任を追及する方法が整備されていませんでした。
4. 責任追及と法的枠組みの必要性
年金の不適切な運用を行った担当者に対し、個人としての法的責任を問う仕組みは整備されていません。今後、年金財源の持続的な確保と適切な管理を実現するためには、責任者が直接損失に対して責任を負う制度が求められます。また、インデックスファンドなどへの適切な分散投資の導入も、年金財源の安定した成長に向けて重要と考えられています。
参考文献
• 野村アセットマネジメント「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」