玉坂汐音という存在#2
玉坂汐音、君は一人で生まれたのではなかった。君の存在に疑問を抱くことに15年もかかってしまったのも、それが大きな要因かもしれない。
前述したかは覚えていないが、私は中学2年、3年時のクラスが大好きだった。それなりに仲が良く、上手くグループを繋ぐかすがい役がおり、クラスで話し合いをする時は活気があり笑いもあり、とても穏やかなクラスだった。もちろんその下では誰かの鬱屈とした思いがあり、隠した敵意があり、打算があった。中2の冬に、クラスメイトの一人が消えた。それでも、私はあのクラスが好きだった。
だから、自分の頭の中に別の世界を複製した。複製しておきながら、全員に違う名前を付け、違う人物として扱った。現実との違いが生じることはきちんと分かっていたんだと思う。だから、保険をかけたのだ。同一人物ではないと。私は彼女たちへの思いを、”彼女たち”へ放出した。
私のずるいところは、結局は、”彼女たち”を彼女たちと同一視していたところにある。そこに、何の疑問すら抱かなかった。私の中で、彼女は”彼女”であり、”彼女”は彼女であった。
その中に、君はいた。玉坂汐音、君は”私”だ。