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文学賞に落選。心機一転再スタートを切る② 情報端末の多様化で活況を呈するネット小説

文芸書の出版で、ケータイ小説が我が世の春を謳歌していたのは2007年。次の年から、携帯電話を取り巻く社会環境に変化が起きていく。

アップルが2007年に発表したスマートフォンの「iPhone」は革新的な端末で、感覚的に操作できる使いやすさ、デザイン性の高さもあって、注目を集めていた。

iPhoneは2008年から国内販売が開始され、2009年にはグーグルが提供するOS(基本ソフト)のアンドロイド対応のスマートフォンが発売された。

フィーチャーフォン(通話のみのベーシックフォンに対し、カメラやインターネット接続機能など持つ携帯電話のこと。日本の場合はガラケーと呼ばれることが多い)からスマートフォンへの移行が始まったのだ。ハード面で起きたイノベーション(技術革新)も、ケータイ小説の退潮に影響を与えた。


スマホやタブレットの登場でネット小説時代へ


iPhoneに切り替える若者が増えていく中、多くの携帯サイトが2009年時点ではiPhoneに対応していなかったため、閲覧者が減りケータイ小説に影を落とす。

ノートパソコンの普及、2010年に発売されたアップルのiPadなどのタブレット型コンピュータの普及で、小説を書く手段も、読む手段も多様になった。

小説を書いたり、読んだりする端末はケータイである必要がなくなり、ネット小説、ウェブ小説、オンライン小説と呼ばれるようになる。

その後、ネット小説の主戦場は小説投稿サイトに移っていく。インターネットが生活に入り込み、アクセスする手段が広がると、小説に興味を持つ読者と書き手をつなぐ小説投稿サイトへの参加者が増えていった。日本国内だけでなく、英語、スペイン語、フランス語などに翻訳すれば、全世界の読者にメッセージを伝えられる時代が来たのだ。

「どの文学賞を受賞すると作家になれるの?④ 賞金に幅があるライトノベルの文学賞」で述べたように、小説投稿サイトはピーク時に100を超えていた。

現在も残っている数十の小説投稿サイトをチェックし、特色のあるサイトをピックアップした。サービスを開始した順に、私が注目した小説投稿サイトを紹介しておこう。

主な小説投稿サイトのサービス開始時期と特色

サイト名    サービス開始時期     特色

小説家になろう


2004年4月  小説好きの梅崎祐輔が個人サイトを開設。後に法人化
小説家になろう - みんなのための小説投稿サイト (syosetu.com)

魔法の図書館


2006年3月  魔法のiらんどが運営。投稿、閲覧機能を持たせる
【魔法のiらんど】人気のWeb・ケータイ小説/小説投稿サイト (maho.jp)

野いちご


2007年5月  低年齢の女性向け、スターツ出版の小説サイト
野いちご - 無料で読めるケータイ小説・恋愛小説 (no-ichigo.jp)

アルファポリス


2008年2月  アルファポリスwebコンテンツ大賞の開催開始
アルファポリス - 小説・漫画・ビジネス等の総合エンターテインメントサイト (alphapolis.co.jp)

エブリスタ


2010年6月  小説、コミック投稿サイト。メディアドゥ系
【エブリスタ】おすすめの携帯・web小説が無料で読める/小説投稿サイト (estar.jp)

Berry's Cafe


2011年10月  スターツ出版の大人の女性向け小説サイト
女性に人気の小説を読むなら ベリーズカフェ (berrys-cafe.jp)

note


2014年4月  文章、画像、音声、映像作品を楽しめるサイト
note ――つくる、つながる、とどける。

カクヨム


2016年2月  KADOKAWAと「はてな」が共同で運営
無料で小説を書ける、読める、伝えられる - カクヨム (kakuyomu.jp)

ツギクル


2016年11月  SBクリエイティブがウェブサイトを開設
無料小説・小説投稿・登録サイト | ツギクル (tugikuru.jp)

ノベルバ


2018年1月  コミック配信サービスのビーグリーが買収
ノベルバ - PC・スマホ・アプリ完全連動の小説投稿サイト (novelba.com)

NOVEL DAYS


2018年8月  投稿サイトの運営を講談社が引き継ぎ、拡充
NOVEL DAYS (daysneo.com)

ノベマ!

  
2019年4月  スターツ出版のノンジャンルの投稿サイト
小説サイト ノベマ! (novema.jp)

ノベルアップ+(プラス)


2019年7月  出版とホビーの開発のホビージャパンが運営
小説投稿サイトノベルアップ+ | 読んで、応援して、作品を育てよう! (novelup.plus)

*noteは、小説投稿サイトに特化しているわけではないが、このリストに含めている。

13の小説投稿サイトを選んだが、サービスに関わっている企業に上場企業が多い。信用力、経営基盤の安定が小説投稿サイトに求められているということだ。M&A(企業の合併と買収)も活発である。

ビジネスを拡大し、既存の事業とのシナジーを上げたり、小説分野に新規参入する企業も、小説投稿サイトがツールとして有用だと考えているようだ。

上場企業とその関連会社を挙げると、ライトノベルや小説投稿サイトに力を入れているKADOKAWAをはじめ、スターツ出版(親会社で不動産業のスターツコーポレーションも上場企業)、アルファポリス、ビーグリー、エブリスタの親会社のメディアドゥ、SBクリエイティブの親会社のソフトバンクグループの6社が関与。

13のサイトのうち9つのサイトが上場会社関連で、出版・情報・ITなど幅広い業種の企業が関わっている。

出版社のアルファポリスは、文学、ビジネス、サブカルチャーなどエンターテインメントを追求した書籍を出版している。ホームページのタイトルは「電網浮遊都市」。
 
ビーグリーはコミック配信サービスの「まんが王国」を核に、コンテンツのプラットフォーム事業を展開する。小説投稿サイトの運営会社のノベルバや、漫画雑誌や単行本を発行するぶんか社を子会社化している。

そのビーグリーは2021年12月に日本テレビホールディングス(上場企業)の持分法適用関連会社になった。

小説投稿サイトの登録ユーザー数は230万人強

小説投稿サイトにアクセスすると、カラフルな画面、きらびやかなイラストが目に飛び込んでくる。「ランキング上位の小説」「おすすめの小説」「書籍化された作品を紹介」などのコンテンツもある。

読みたい作品を「人気キーワード・ジャンル」や「キャラの設定・作品の傾向・関係性」でそれぞれの項目を選択すると、条件に合った小説が検索できるサイトもある。

「文学賞やコンテストの紹介」のバナーがあったり、「1000万のPVに感謝」などの文字が踊っていて、活気を感じる。

小説家を目指す人々が参集し、しのぎを削っている。「小説家になろう」の登録ユーザー数は230万人強に上っており、読むだけのユーザーもいるが、小説家や作家志望者の裾野は広い。

私の場合、まずは推敲中の長編小説の出版が最優先課題であるが、多くの作家たちの意気込みを見て、新たに小説を書いて、文学賞に応募してみたいと考えている。(敬称略)

アマゾンのキンドル出版で、2023年8月、ペーパーバックと電子書籍の小説が発売されました。「権力は腐敗する」「権力の横暴や不正を許さない」をテーマにしており、お時間のある方はお読みください。
『黒い糸とマンティスの斧』 前原進之介著

この連載記事は、以下のような流れになっています。
1 小説を書きたいと思い立った「いきさつ」
2 どうしたら小説が書けるようになるの?
3 小説講座を探そう 
4 どの文学賞を受賞すると作家になれるの?
5 文学賞に落選。心機一転再スタートを切る

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