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担当教員のつぶやき:Zoomでワードウルフ編

吊られました。

ウルフであることを見破られ、ゼミ生投票により吊られて処刑されました。

思い返せば去年も初めての人狼ゲームでひとつ上の学年のゼミ生たちにこっぴどく騙されました。嘘をつくのが苦手な人間にとって、人狼ほど辛いゲームは無いのです。

とは言え、アイスブレイクという意味ではこれは正解なのかもしれません。普段の講義やゼミでは大人しくてなかなか手を上げない人がゲームでは策士だったり、あるいは普段は無駄に偉そうな教員がゲームでは極めて弱かったり。大学の教室で会うとき(緊急事態宣言下の今であれば遠隔での授業やゼミで会うとき)とは異なる姿に触れることができる点で、ワードウルフは的確に条件を満たしていたと言えるでしょう。

遠隔的な連絡手段しか取れない中で、1人ではなく全員で楽しめるゲーム、というお題を出しました。出題者も正解は知りません。スマートフォンの機種の違いをどのように乗り越えるかが課題の無茶なお題でしたが、LINE BOTで解決するという策には一本取られましたよね。

ここからは雑感です。

これだけ話し込む必要があるゲームであれば、確実に聞き取れるようにマイクが欲しいですね。合わせて、接続が途切れないようにインターネットは有線で繋ぐなど、工夫した方が良いかもしれません。

それと社会学者の端くれとして気になるのは、同じ屋根の下で暮らす家族のことです。同じ部屋で対面状況で行うならともかく、ひとりで画面に向かって真剣に人狼ゲームをしていると、怪しいですよね。同居人や家族がその様子を見ると思わず一声かけたくなるのではなかろうか。特に今回なんて大学の演習の時間のはずですから「この時間は大学の授業だって言ってたのに、もしかして遊んでるの?」と心配されても仕方がありません。

思いがけず全ての授業が遠隔化され、思ったよりはPCを持っていないと答える学生が少ないことに安堵しているものの、実はそのPCは自身のものではなく家族共用のPCであったりするのです。兄弟姉妹が同じく大学生だったら、あるいはお父さんやお母さんがテレワークであったら、熾烈な競争を勝ち抜き他の家族を犠牲にしてPCと静音の環境を獲得しているのかもしれません。そうではなくとも、テレビ会議形式で受講している家族がいれば、他の家族は気を使わざるを得ません。同じ屋根の下で暮らす成員から見た時に心配にならないか、あるいは静かな学習環境を維持してあげるに足ることをしているのかというのは実は重要な問題なのではないか。何が言いたいかというと、このゼミの時間は一見遊んでいるように見えて真剣に世のための楽しみ方を探求していますのでご家族のみなさまにはある程度のご容赦をいただけるとありがたいです、はい。

雑感の続き。普通の人狼とは違ってひとつのスマートフォンを回すものではないとはいえ、ワードウルフも本来は対面状況で行うゲームです。Zoomで行おうとするとPCとスマートフォンの両方がないと手間取ります。という意味ではそれなりの準備を強いることになるわけで、誰でも気軽に楽しめるかという意味では疑問が残ります。

それと、本当に遠隔でしか人とコミュニケーションができない場合の解決になっているのかという点でも疑問は残ります。確かに今回はLINEとZoomの併用で滞りなくゲーム実施ができました。しかし、それは元々対面状況で全員揃ったことがあるのでLINEグループが作成されていたからなんですね。コロナ禍が何ヶ月、あるいは何年続くかはわかりません。例えば今年入学した大学1回生(関西の大学では1年生2年生ではなく1回生2回生と数えます)がワードウルフをするにはどうすれば良いでしょう。まずはLINEの友達に追加するところから始めなければいけません。しかし、どのようにLINE友達になるのか。

もちろんテレビ会議ツールを経由してLINEの友達になることは不可能ではないでしょうが、全く対面で会ったことのない人と友達になることにはリスクが伴いますし、LINEアカウントを晒せるほどの信頼関係ができているのであれば改めてゲームで親睦を深める必要もないのです。その点では、今回成功であったワードウルフはしかし、実は対面での接触を前提としており真に遠隔のコミュニケーションしか取れない人同士が楽しむゲームというお題には応えていなかったのではないか。

といったところで辛口レビュー終わり

いや、ゼミ生たちから吊るされた恨みでゲームを批判しているのではありませんよ。ほんとほんと。

批判ができるのは良い企画だった証拠。好き勝手言っていますが、そもそも答えがないのではないかと思っていた状況下で記念すべき1回目に行うゲームとして大成功であったことは間違いありません。

これから数ヶ月をかけて、あるいは1年をかけて、遠隔でしかコミュニケーションを取れない状況下での「遊び方」を見つける旅に出る「全力自粛大学生」たちの船出がこれ以上ない形のものであったことを心から祝福します。この先も担任者が考えもしなかった解決策をどんどん創っていくのでしょう。そんな希望を見せてくれた第1週。えらい。素晴らしい。#略して「えらすば」

5/20追記

ひとつ上の学年(初めての人狼ゲームでこっ酷く騙してきた犯人たち、遊ぶのが天才的にうまい)とZoom飲みしながらワードウルフをプレイしたら程よく面白かったです。

他の参加者に質問をする、というのがワードウルフの定石だそうです。Zoomのチャット機能を使う、それもあらかじめ質問に対する返答を打っておいて「せーの」で開示すると、効率よくウルフを暴くことができます。

ついでに、ゲームしながら都度でバーチャル背景を変えたりなどするのもコミュニケーションになります。Zoomならではの機能と組み合わせたり、飲みと重ねるているのも秘訣だったのかもしれませんね。

それと、初対面同士のLINEグループ作成は先行事例がありました。いま大学に努める研究者が多数参加しているシンポジウムがあるのですが、そこで京大での事例が紹介されていました。

喜多一「オンライン環境での新入生支援 京都大学 工学部 電気電子工学科の取組から」於【第6回】4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム
https://www.nii.ac.jp/news/upload/20200501-4_Kita.pdf
https://www.youtube.com/watch?v=YtwFexlVcTM&feature=youtu.be
(2019年5月20日取得)

ZoomでLINEの連絡先交換だなんてとんでもない!と思っていましたが、案外うまくいくものなのかもしれませんね。柔軟な発想は大切。


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