
札幌銭湯スタンプラリー2023のこと(その3・末広湯)
札幌銭湯スタンプラリー2023、3軒目は末広湯さんだ。
ここまで寿湯、美春湯、末広湯と来ている。めでたい屋号が並んだ。意図したわけではないものの、幸先がよい。
もっとも、縁起の悪い屋号の銭湯など存在しない。死にボクロ湯とか666湯とか、あるならむしろ入ってみたい。
♦︎
末広湯は我が社からギリギリ徒歩圏内だが、自宅と逆サイドなため、なかなか足が向かない。
しかしスタンプをモチベーションにし、小雨の中を進んだ。
宅麻伸似の易者などをやり過ごし、石山通を越えれば目的地はすぐそこだ。
♦︎
末広湯は石山通の少し西側にある。
ごく個人的かつ失礼な印象だが、この辺りはいわゆるエアスポットだ。
東に進めばススキノがある。
西に進めば医大が、円山がある。
しかし石山通の少し西側は、石山通の少し西側でしかない。
何者でもない、というやつだ。まるで私じゃないか。
♦︎
「コンバンハ!何者でもない私が来ましたよっと!」
ご陽気に暖簾をくぐり、スタンプ用紙を番台に差し出した。左手でズドンッと力強くスタンプ。

♪テテテテーテーテーテッテレー(FFで戦闘に勝利したときの音)
早くも結構な充実感だが、まだまだ序盤。10分の1だ。古畑ならまだ殺人も起きていない。
♦︎
木曜18時台の末広湯。なかなか賑わっていた。医王ラジウム風呂から洗い場を眺める。
和彫のお兄さん。
メガネのおっさん。
禿頭のおじいさん。
みんな、何者でもない。彼は彼でしかなく、私は私でしかない。
いやでも、それは尊いことだ。
♦︎
末広湯の面々に限らず、人はそれぞれ失敗、後悔、敗北、失恋、死、サービス残業、巻き爪などを乗り越えて、今を生きている。
だから彼が彼で、私が私であることは尊い。
♦︎
「僕が僕らしく僕であるために」と唄った人がいた。(俺注・尾崎じゃないよ)
「ぼくはネスだ」というセリフはゲーム史に残る名言だ。
だから彼が彼で、私が私であることは尊い。
♦︎
医王ラジウム風呂で無償の愛と平和を感じ、止まない小雨の中を西11丁目駅まで歩いた。プリンスホテルと吉野家が世界に向けて微笑んでいた。明日も彼は彼で、私は私だ。それが宇宙の法則で、全ての真理なのだろう。
(医王ラジウム風呂に違法な成分は含まれていません)