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天下一品と千原兄弟と愛染湯のこと

これの続き。

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国立競技場を後にした私は、天下一品に向かった。

「わざわざ東京で天一ってwww」
心無い声が聞こえてきそうだが、とんだ見当違いである。
数年前、満を持して北海道に上陸した天一だったが、そう長くは持たず、気がつくと姿を消していた。

「こってり」が北海道民の舌に合わなかったのか「あっさり」と撤退した。

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笑点をやっている場合ではない。
とにかく、北海道民が天一を味わうには、海を渡らねばならないのである。

久々の天一。
「ご注文はこちらのQRコードからどうぞ」
といわれ
「すげー!最先端!未来!SF!すこしふしぎ!」
と思っていたら、店内には「お支払いは現金のみです」という貼り紙。最先端でも前時代的でもこってりでもあっさりでも大好きだよ。

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天一のあとは千原兄弟の定例トークライブ「チハラトーク」を鑑賞するため、ヨシモト♾️ホールへ。

何を書いても野暮ったくなりそうなので端折るが、大変に面白かった。

終演は日曜日の22時半。
私が向かうのはホテルだが、他のお客さんはほとんどがお家に帰るのだろう。彼らは千原兄弟のトークを堪能した数時間後に、職場や学校へ向かうのだ。

東京はすごいや。

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翌日。

夕方のフライトで札幌に戻ること以外、何も決めていなかった。昨年末に東京へ来すぎていたため、やりたいことはもう何もなかったのである。

映画でも観ようかと思ったが、月曜の昼前からやっている銭湯があると知り、心は決まった。
月曜真っ昼間に銭湯って。東京はすごいや(reprise)

しつこいが、月曜の昼前である。人がいるとは思えない。東京銭湯貸切チャンスだ。

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しかし、愛染湯という屋号のその銭湯は、期待とは裏腹にそこそこ混んでいた。みんな、愛に染まりたいのだろう。

この混雑ぶりは、恐らく今日に限ったことではない。つまり、私がヒィヒィいいながら仕事をしているときも、この銭湯では誰かが汗を流している。

一方で、私と同じようにヒィヒィいいながら仕事や学業に励んでいる人も、もちろんたくさんいるだろう。

全ての生活が尊い。愛で染めよう。

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脱衣場も洗い場も新しく綺麗で、ホテルの大浴場かと見紛うほどだった。露天風呂まである。

余裕でバックパックを収められるロッカーが旅人にはありがたかった。
備えつけのシャンプー類が旅人にはありがたかった。
レンタルタオルセットが旅人にはありがたかった。

総じて、旅人にはありがたかった。

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タオルセットにはバスタオル、フェイスタオルに加え、ナイロンタオルが含まれていた。

はは〜ん、このナイロンタオルで旅の疲れをこそげ落としちゃえよってことだな。オッケー、任しとけ。

私は狂ったように身体を擦り倒した。俺 like a カレー鍋の頑固な焦げ。

鬼の形相で擦りに擦った。何が私にそうさせたのかはわからない。愛か。あるいは東京か。

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私が愛に染まることはなかったが、身体は赤に染まった。

赤みのかかった皮膚を熱い湯に晒した。
「沁みる!痛い!でもそれがいい!」

SとかMとか下世話なことをいってはいけない(M)。

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サウナ室のテレビでは
「昨夜、都庁を使ったプロジェクションマッピングが初日を迎えました!」
というご陽気なニュース。

つまり昨夜は都庁が彩られ、千原兄弟がしゃべり、恐らく誰かがこの湯でノホホンとしていた。

東京はすご(略)

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今ごろ、札幌の同僚たちはヒィヒィいいながら仕事をしているはずだ。

露天スペースで見上げた空は雲ひとつなく、永遠みたいに青かった。
ありきたりだが、この空は繋がっている。同じ空の下で、仲間たちは必死に仕事をしているに違いない。

ざまぁみろ!血ヘドを吐くまで働くがいい!貴様らは社会の歯車だ!俺は、俺は東京の真っ昼間に、東京の銭湯で、東京のニュースを見ているんだぜ!ざまぁみろ!

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天罰はちゃんと下る。帰りの便が欠航になった。新千歳空港が雪でエラいことになっているらしい。

しかし、変に旅慣れている私には屁でもなく、別の便での帰札を果たした。

馬鹿みたいな雪に風。こんな土地に山ほどの人が暮らしている。札幌もすごいや。明日は私も社会の歯車だ。

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