札幌銭湯スタンプラリー2024のこと(その24・千成湯)
2024年9月18日、千成湯さんへ。
札幌銭湯スタンプラリー2024の24軒目。
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支払いを済ませて男湯の暖簾をくぐろうとした刹那、ロビーに貼られた矢沢永吉のポスターと目が合った。
永ちゃんのポスター。
千成湯には何度も来ているが、初めて気がついた。
(いつから貼ってあるのか?永ちゃんのファンなのか?Why なぜに生きているのか?)
思案しつつ脱衣場に入ると「アリよさらば」ではなく「SOMEBODY'S NIGHT」が流れていた。
千成湯は永ちゃん大好き銭湯なのだ。確信した。
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「〇〇大好き!」を前面に押し出している店、施設は少なくない。
高校時代、通学路上にビートルズ大好きなラーメン屋があった。
壁にはポスターが貼られ、BGMは常にビートルズ。入店したときの第一声は「へい、らっしゃい!」でなく「ヘイ、ジュード!」だった。最後のは嘘。
午前のみの授業を終えた土曜、下校途中に何度か立ち寄ったことがある。
ラーメンはうまかったが
「ビートルズのファンでもないのに申し訳ない」
という、変な罪悪感を抱えながら麺をすすった。
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社会人になりたてのころ、友人の松原君が
「近所にうまい焼き鳥屋を見つけた」
と誘ってくれた。
松原君に連れられてお邪魔したその店は、ジャイアンツ大好きな焼き鳥屋だった。なお、松原君は鹿島アントラーズのファンであることを付記しておく。
壁にはポスターやサインが貼られ、テレビは常にジャイアンツ。入店したときの第一声は「へい、らっしゃい!」でなく「ヘイ、カール!」だった。最後のは嘘。
焼き鳥はうまかったが
「ジャイアンツのファンでもないのに申し訳ない」
という、変な罪悪感を抱えながら頬張った。
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罪悪感だけではなかった。
他のお客さんや店主から
「今年の投手陣、どう思う?」
などと声をかけられたらどうしようという、恐怖感もあった。
私がジャイアンツに関して知っていることは
・川相はバントが上手い
・元木はクセ者
・馬場は風呂で転んだ
以上である。
「今年の投手陣、どう思う?」
などと声をかけられても
「投手といえば馬場!風呂で転んで引退!プロレススーパースター列伝で読みました!」
と、馬場のプロレスよろしくパワーでねじ伏せるしかない。
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千成湯は永ちゃん大好き銭湯だったのだ。
しかし
「永ちゃんのファンでもないのに申し訳ない」
という罪悪感は湧かなかった。
なにしろ全員が素っ裸である。
永ちゃんファンもジャイアンツファンもビートルズファンも、一様に裸だ。罪悪感も恐怖感も生まれようがない。
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浴後の脱衣場。BGMは岡本真夜。
え?ただの有線?さっきの「SOMEBODY'S NIGHT」はたまたま?だとしたら凄くね?それとも永ちゃんファンかつ岡本真夜ファン?食べ合わせ悪くない?涙の数だけ強くなれるの?アスファルトに咲く花のように?
千成湯七不思議のひとつである。残りの6つを見つけるためにも、またお邪魔するしかない。
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24こめ。Feelin' comes to me.