札幌銭湯スタンプラリー2024のこと(その15・滝の湯)
2024年8月18日、滝の湯さんへ。
札幌銭湯スタンプラリー2024の15軒目。
♦︎
札幌で一番熱い銭湯はどこか。
「宇宙の外側には何があるのか」と並び、すべての人間が一度は考えを巡らせる壮大な疑問だ。
札幌で一番熱い銭湯はどこか。
♦︎
鷹乃湯。なるほど、大本命だ。プロレスでいえば武藤、びっくりドンキーでいえばチーズバーグディッシュである。
真駒内湯。渋い。プロレスでいえばヒロ斉藤、びっくりドンキーでいえば牛肉プルプルである。
美春湯の薬湯。わかる、わかるぞ。ありゃ堪らん。主浴槽より薬湯が熱いという、トリックスターっぷりもよい。プロレスでいえばケンドー・カシン、びっくりドンキーでいえばパイナップルの乗ったやつである。
笑福の湯。いや、もう廃業してるって。それは「村田兆治の球は170Km出てた」みたいなことだから。確かにめちゃくちゃ熱かったけどさ。プロレスでいえば剛竜馬、びっくりドンキーでいえばメリーゴーランドである。もう会えないんだよ。
いろいろなご意見はあろうが、札幌で一番熱い銭湯、それは滝の湯だ。
♦︎
そもそも熱いとはどういうことか。
「湯の温度が高い」というのは間違っていないが、不十分な答えだ。
よいサッカー選手というのは、遠くにボールを蹴れるとか、早く走れるとか、そういう単純なことではない。
よいプロレスラーというのは、スクワットが何回できるとか、どれだけ重い物を持ち上げられるとか、そういう単純なことではない。
♦︎
単純な数字の問題ではないのだ。
「よいマラソンランナーは、速く走れるかどうかだけだろ」などという声もあろう。
なるほど。じゃあマラソンの世界記録保持者が誰なのかを知っているのか。私は問いたい。
我々の記憶に残っているマラソンランナーは世界記録保持者でなく、爽やかに「こけちゃいました」とコメントしたり、レース後に「初めて自分を自分で褒めてあげたいと思います」と涙を浮かべたり、双子だったりする。数字なんて関係ないんだ。
♦︎
滝の湯は熱いが、それは温度だけの話ではない(温度もめちゃくちゃ高いが)。
滝の湯の熱い風呂は、殺気立っている。これは褒め言葉だが、殺しに来ているのだ。
なぜそう感じるのかは、正直わからない。ただ温度が高いだけではない、何かがある。
水質か、浴場の雰囲気か。
滝の湯の熱い風呂は、シュートを仕掛けに来ている。
♦︎
あの日、木村が力道山に感じたであろう殺気。
あの日、前田がアンドレに感じたであろう殺気。
その殺気が、滝の湯の熱い風呂にはある。
♦︎
やられてたまるかってんだ。エイヤッと肩まで浸かった。
俺とセメントだなんて、いい根性してんなバカヤロウ。こちとらケンドー・ナガサキと同じ中学出てんだよ。舐めんな。
とかなんとか言っているうちに、私は敗れた。ヘロヘロのフラフラで最高に仕上がった。
♦︎
15こめ。ショアッ。