
開発者が追及すべき「驚き」とマスコミが求める「驚き」は別物である
何かしら大きな製品発表があったときに、以下のような論調を見かけることがよくあります。
インパクトに欠ける
目新しいものがない
しかし、開発者は以下のことを意識しておく必要があります。
マスコミやアナリストが求める「驚き」と
開発者が追求すべき「驚き」は全く別物である。
これを認識していないと、会社自体が迷走してしまうことすらあります。
《マスコミやアナリストの求める「驚き」》
彼らは、専門家を名乗っていても、あくまで ”その分野の記事を書く専門家” であって、技術者ではありません。
彼らが求めているのは、視聴率やクリック数などを稼げる「刹那的な驚き」です。分かりやすく、説明しやすいというのが条件になります。
◎宣伝効果を狙った差別化
製品開発においても「分かりやすく、説明しやすい」というのは意識されます。ただし、それは「驚き」を作り出すためではなく、宣伝効果を狙うためです。

いくら良い製品を作っても、手に取ってもらわないことには良さが伝わりません。
開発者は・・・
手に取ってもらえれば、商品の良さが分かります!
と言いがちなのですが、手に取ってもらうための施策も製品開発においては、大切な要件となります。
しかし、それは開発者が追求する「驚き」とは異なります。
《開発者が追求すべき「驚き」》
製品に「刹那的な驚き」しかない場合、ユーザーは製品の宣伝には驚くかもしれませんが、製品が発売される頃には興味を失ってしまいます。
開発者が追求すべき「刹那的でない驚き」を私は以下のように定義しています。
誰も気付いていないが、潜在的に存在する問題を解決している

◎誰も iPhone を要求していなかった
ベタな例ですが、iPhone は以下のように形容されています。
iPhone が発売されるまで、誰も iPhone が欲しいとは言っていなかった
電話は、携帯電話があればよかった。
音楽は、携帯プレーヤーがあればよかった。
通信は、PDA があればよかった。
誰も文句は言っていませんでした。

しかし、気付いていないだけで、実は皆 iPhone のような製品を欲していたわけです。
◎問題を解決しても、新たな問題を提供してはいけない
日本では全く売れなかった初代 Xbox ですが、次世代機が発売され、日本にも投入されました。
実は、初代 Xbox は「ゲーム専用機は開発しづらい」という問題を解決していました。ゲーム開発者からは人気があったのです。

しかし、エンドユーザーに対して
デカくて邪魔
壊れやすい
という問題を提供してしまいました。
誰かの負担を減らしても、他の誰かの負担が増えたのでは意味がありません。
初代 Xbox は、高スペックである必要もなく、見た目にインパクトがある必要もなく、”普通のゲーム機” であれば売れていたと思います。
《「驚き」は予想できない》
私が以前勤めていた会社の社長の言葉です。
成功法則を見つけたと思った時点で失敗する
開発を長年されている方なら共感できると思いますが、以下のようなことは多々あります。
せっかく開発した目玉機能が全く注目されなかった
開発者が意図しないウケ方をして売れてしまった
そもそも、なぜ売れたのか分からない
潜在的に隠れている問題を見つけるのは困難であり、
また、問題とは一度解決してしまうと問題ではなくなってしまいます。
「・・・そんな、元も子もない」

と思ったかもしれませんが、これが製品開発の現実なので仕方ありません。けど、ひとつだけ言えることがあります。
マスコミやアナリストの記事に書かれている
「この製品は◯◯があるから売れた」
という表面的な特徴を捉えた分析や
「製品が売れるには◯◯が必要だ」
といった、誰でも気付ける問題点にヒントはない
ということです。