【レポート】2024年SL琵琶湖シリーズ MZシニア -FIRST SURVIVAL-
激闘を繰り広げた2023年シーズンから5ヶ月の時を経て、
2024年3月31日、SL琵琶湖シリーズ MZシニアの2024年シーズンが幕を開けた。
「-FIRST SURVIVAL-」と名付けられた今大会は14台がエントリー。昨年の上位ランカーはもちろん、他カテゴリーからの刺客や別業界の道で活躍する現役アスリートの参戦等、メンバーは更に豪華となりレースを盛り上げてくれた。
公式練習、タイムトライアル
2024年シーズンからレースフォーマットに若干の変更があり、公式練習5分とタイムトライアル5分を立て続けに行われた。これにより、前日のセットアップや準備が重要視されるフォーマットとなることとなった。
レベルの高さは、ここから目の当たりにすることに。
午前9時。公式練習、タイムトライアルが始まった。
一斉にコースインして走りながら位置取りを探る者、大きく間合いを空けて確実にクリアラップを狙う者、戦略は人それぞれとなった。
5分経過、日章旗が降られタイムトライアル開始。残りの5分間で各車アタックラップに入る。
これまでのコースレコードは昨年の第1大会で#10 平野佑真(Vifonte with Ash)が叩き出した51.294。これがターゲットタイムとなる。
これを真っ先に更新し50秒台に入れてきたのが#99 瀧口純輝(Vifonte with HMRACING)だ。その後も勢いは止まらず50.770を叩き出し堂々のトップタイム。
2位にはこちらも50秒台を叩き出した今季初参戦の#2 八田宗之(Vifonte)、3位には51.025で昨年のチャンピオン#1 上島太陽(VehCOOL)がつけた。
トップ5が前年のコースレコードを超えるという、ハイレベルなタイムトライアルとなった。
予選ヒート
予選ヒートは8周で行われた。この順位結果で第1ヒート(第1戦)のスターティンググリッドが決められる。
前年度から更に磨きのかかったバトルの連続。
スタート直後、瀧口、八田、上島のトップ3が若干リードし、2周目に早速3台でのバトルが始まる。6コーナーで八田が瀧口のインに飛び込みトップへ、瀧口はすぐに3周目のコーナーで抜き返す駆け引きなしの真っ向勝負が繰り広げられた。
バトルが始まった瞬間、4位 #44 加藤翔馬(Vifonte)、5位 #3布川雄介(Let Wing)、6位 #81 萬雲恒明(KC NAGAHARA)も一気に追いつき6台パックに。
この集団で一目散に順位を上げてきたのが、今回が初参戦となる加藤だ。バトル中にできた隙を一つも見逃さず、着実に順位を上げ4周目にはトップに躍り出る。
しかし、この快進撃に他も黙ってはいない。直後の6コーナーで瀧口がトップを取り返し、八田も8コーナーでそれに続く。加藤は3位に後退した。
その後も加藤、八田、瀧口の戦いは続き、目まぐるしく順位が変動していく。
7周目、トップを走る瀧口に八田がコーナーでインに飛び込む。その真後ろから加藤も続けて襲い掛かり、瀧口は3位に後退。失速した隙に3コーナーでも布川に抜かれ、後の6コーナーでやり返すもトップ2とは離れてしまい万事休す。トップ争いは八田、加藤に絞られた。
最終ラップ、加藤は2コーナーで八田のインに飛び込みトップに浮上。その後はペースの良さを活かし加藤はトップを守り切った。2位は八田、3位には瀧口となった。
また、この予選ヒート中に瀧口は50.651を叩き出し、このシリーズのコースレコードとなった。
第1ヒート(第1戦)
予選ヒートの着順でスターティンググリッドを決め、13周で行われた。
加藤はスタートダッシュを決め、誰にも仕掛けられぬままトップを快走する。
その背後では3コーナーで八田と萬雲が互いのラインが交差してしまい接触、八田はその衝撃でチェーントラブルに見舞わられ早々にレースを終えてしまった。
これにより、3位集団は失速。前を走っていた加藤、瀧口は一歩抜け出し、トップ争いは早くもこの2名に絞られた。
2名に絞られたトップ争い。
他者を一切寄せ付けない異次元のバトルへと発展する。
3周目。後続を2秒以上離した途端、6コーナーで瀧口が動く。インに飛び込みトップに浮上、加藤は真後ろにピッタリ張り付く。
6周目まで3位との差を広げ、2コーナーで加藤がトップを取り返す。しかし瀧口は3コーナーですかさず応戦、そこに加藤は4コーナーで再びやり返す。更に8コーナーで瀧口がトップを奪い返す。1周の間に何回も順位を入れ替える激しい戦いが繰り広げられた。
7周目も6コーナーで順位が入れ替わるも、最終コーナーでやり返す等、瀧口、加藤はほぼ全てのコーナーでオーバーテイクを連発していた。
にも関わらず、3位との差は縮まらない。2人のバトルは他者を一切寄せ付けない異次元のバトルへと発展していた。
瀧口を先頭にレースは進み、迎えた10周目。再び加藤が動く。ここでも2人はあらゆるコーナーで抜きつ抜かれつを繰り返し、12周目の最終コーナーで瀧口が加藤のインをこじ開け前に出る。
そしてファイナルラップ。瀧口は巧みなブロックラインで加藤を抑え一切隙を見せなかった。
この勝負は瀧口に軍配が上がり、第1ヒートは瀧口が制した。2位には僅差で加藤。3位は最終ラップでジャンプアップに成功した萬雲となった。
第2ヒート(第2戦)
今年からリバース対象が第1ヒートの順位結果の上位最大10位から6位に変更された。
今回は最大となる上位6位がリバースグリッドとなり、第2ヒートが行われた。
ポールスタートとなった布川はホールショットを決めトップを死守。その背後ではは5位スタートだった加藤が一気に順位を上げ2位に浮上する。
3位は #27 舟橋弘典(Let Wing)、5位の瀧口は4コーナーでスピンした車両を避けた事で出遅れてしまった。
加藤は2周目の2コーナーで難なく布川をパス。そのまま引き離しに掛かると思われたが、第1ヒート程の勢いはなく、真後ろで布川、上島が喰らい付きチャンスを伺っていた。
しかし、加藤のペースが徐々に上がり、後続の2人は少しずつ引き離されていく。そして2人の背後には3周目に舟橋をパスした瀧口、最後尾スタートから追い上げてきた八田が迫ってきていた。
上島、布川をパスして7周目には2位に浮上した瀧口は、迷いなく加藤を猛追する。ペースの良い瀧口は9周目に加藤を射程圏内に捕え、6コーナーで勝負に出る。ここからが本当の戦いの始まりとなった。
スタート順位など関係なし。
最後には役者が揃いクライマックスへ。
ここからトップ2は駆け引き無し、抜きつ抜かれつの攻防戦を繰り返していた。次第には背後につけていた布川、上島、更には八田までもがトップ2に追い付いた。
前年のランキングトップ3と、初参戦ながら常にトップ争いに食い込んだ2名が一騎討ちに。これで役者は揃った。
リバースグリッドだろうと、最後尾スタートだろうと、最後に残ったのはこの5人だった。
運命の最終ラップ。1コーナーで加藤が瀧口のブロックをこじ開け横並びで2コーナーへ、背後では八田も上島に並びかける。イン側の2名は両者共にオーバーテイクに成功、加藤、瀧口、八田、上島、布川と続く。
もちろん、このままでは終わらない。瀧口は6コーナーで加藤の狭いイン側にねじ込みトップを奪い返す。ここで失速した加藤を今度は八田が8コーナーで捕えた。ここで瀧口、八田のオーダーはほぼ確定。
残るは3位争い。怯んだ加藤に上島が最後のチャンスと最終コーナー進入で捩じ込んだ。しかし捩じ込んだ先で両者は接触、バランスを崩しコースアウトとなった。その背後にいた布川は2台の接触を回避し、3位に繰り上がる。
これで勝負あり。優勝は瀧口、2位は八田、3位は布川となった。
瀧口は前年度の2連勝、更にはレインボースポーツでの1勝と続き今季2連勝。通算5連勝という快挙を成し遂げた。
"最強親子チーム"の誕生
今回、数え切れないほど戦いを繰り広げ、見事に「競り勝ち」2連勝を飾った #99 瀧口純輝(Vifonte with HMRACING)
彼はVifonteのマネジメントを受けて参戦しているとはいえ、体制としては父親がメカニックを勤める「親子チーム」だった。
年々MZシニアはレベルが上がり、メーカー直系チームやスペシャルフレームの投入等とチーム体制も過激化が進んでいた。
そんな中、彼らは「カートの本来の楽しみ方」を象徴する体制で挑んでいたのではないだろうか。
名だたる名門チームを相手に、親子二人三脚で最強のマシンと体制、そしてドライビングを兼ね揃えてきたのは間違いない。
この場では実績も身分も関係ない。純粋に、真っ直ぐに極めた者が勝利を掴める事を彼らは証明してくれた。
今後とも、彼らを期待せずにはいられない。