Invictus
クリント・イーストウッド監督の「Invictus」邦題「インビスタス/負けざる者たち」を見たのでその感想を少し。
個人的にこの映画を見て、どのような影響を政治が人に与えるのかと、自分が将来したいと思っていたことの映像化がされているなと思ったので、それについて書いておきます。
影響
アパルトヘイトについて私は特別詳しくはありませんし、人種差別も生きてきて感じたことはありません。だからこそそれを知ろうとするわけですが。
つい最近、日本も総理大臣が変わり、今まで長く続いた世襲総理から叩き上げの総理大臣が誕生し、世間では「苦労人」などと呼ばれることもあり、日本をよい国にするのはこの人だ。という雰囲気がメディアやともすれば国民の間にも流れているように思います。
そのような雰囲気が流れる中、この映画を見て私が思ったことは「本当に国民の暮らしを良くしたい、と思う政治家をそもそも私自身知らないのではないか。」ということでした。
私自身20数年しか生きてきておらず、まだまだこれから色々なものを見て、聞いて、評価基準を形成していかないといけないのですが、それにしても私が物心ついてからこれまでに「日本をよい国にしよう」と本気で行動している人は存在したのだろうか。と不思議に思いました。
流石にネルソン・マンデラと比べるのはどうなのだろうかと思わなくもない。時代も、状況も全く違うわけだし。それでも彼は実在した人物で、彼が大統領として活躍していたのはたったの20年ほど前の話だとすると、少なくとも今を生きる政治家達は、私たちはどのような存在なのか、どれほど自分の行動が国民に影響を与えるのか、それらを知っているはずである。と思っても良いでしょう。
この映画を見ると政治がどれほどの影響を国民に与えるのかということがわかりますが、少なくとも今まで私がそれを実感したことはありません。
学者の中には失業率低下や、比較的日本の株価が安定しているなどと言及し、日本社会はうまくいっている風に話す人がいるようですが、日本社会が本当にうまくいっているようには思えない。が、もしかしたら自分が知らないだけで、この状況がうまくいっているのかもしれない。
かなり歳を重ねた人中には、「若者は政治に参加しない」なんてことを言う人もいるようで、それも事実として受け入れないといけないとしても、生まれてこのかた「好景気」を経験したことも、「国民のために働く政治家」を見たこともない世代の人たちが、基準も作れない中「どのように政治に関心を持てば良いのかがわからない」と言うのは気持ちとして凄く理解ができます。
そのようなことを言う人は「誰が国民と真摯に向き合った政治家なのか」をしっかりと示してほしいものです。
生まれてこのかた上昇を知らない私たちに「これこそが」と一種の諦めや、不信感を拭う何かを示す必要がある。「それが先に生まれた人たち」の、「後からやってきた人たち」への役目なのではないでしょうか。と思うわけです。
ある指針
この映画の中で私が一番印象に残っているシーンはラグビー代表選手たちが、黒人の子供たちにラグビーを教えに行くといったシーン。中でもバスに乗り、黒人が多く住む地域を通るシーンに大はきな感動と言えば良いのか、「まさにこれだ」という思いでした。
選手たちは黒人がどのような環境で育っているのかを知らなかった。ただ、大統領からの要請で嫌々ながら現実を知るわけです。
まさにこれがしたい。今現在、人は簡単に情報を得ることができます。本当にありがたいことだと思っているのですが、その反面、自分が見たいものを以前にも増して、自分自身でコントロールできるようになった。
見たくないものに無理に注意する必要がなくなったのではないかと思うわけで。
私はそれが良いことだとは思っていない。
だから、人が見たくないものに、無視したい事実に無理矢理にでも注意を集めることができないか。とずっと考えていました。私にとっては「写真」はそのためのツールであり、たとえ小さい範囲であってもそれは意識していきたい。
そして私の考えていることを達成するためには、もはや意味を持たず、ただ画像が流れていくインスタグラムや、フェイスブックだけでは足りないのです。
そして「写真」だけでもそれは足りません。あくまでそれはツールであり、現実世界で興味のない人たちに「バスに乗っている状態」を作ることは非常に難しいと思う。でも私はそれをやり遂げたいわけです。
まだこの映画を見ていない人は是非この機会に見てほしい。「バスの中」がどのようなものかを見てほしいと思います。