ほむあんラーメンシリーズ外伝 龍を継ぐ焔と杏子

「魔法少女まどか☆マギカ」の暁美ほむらと佐倉杏子が二人でラーメンを食べるだけの話。

こちら

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22628500

から作者本人が転載したものです。

以下本文 ↓



「なにっ」

 出先で昼メシ探してるとほむらのヤツが上を見上げたのであたしも上を見る。

「なにっ」

 そこにある看板に書かれている文字、それはーー

「龍星」

 な、なんだあっ。

「はいっ店確定。ぶっ入店するぞ」
「待ちなさい。店選びはこれから面白くなるのよ」
「この期に及んで問答無用だろ」

 ほむらが、はぁ、と溜め息を吐く。

「ふたりで選ぶから尊いのよ。絆が深まるのよ」
「ふうん、そういうことか」

 あたしとほむらは再び看板を見上げ、店構えを確認し、

「しゃあっ」
「しゃあっ」
「いらっしゃいませー」

 う あ あ あ あ あ。
 店主が頭にタオルを練り被ってる。ラーメン屋だここ。

「ご注文どうしますか?」

 コッコッ、とあたしとほむらの前のカウンターにお冷やの入ったコップを放ちながらラーメン屋が訊く。

「あっ。あたしはーー」
「わたしは醤油ラーメンをください」

 ふんっ、下衆のラーメンなど掠りもしないわ、といつもの調子のほむら。

「はいよ、醤油ラーメン一丁ね」
「あ、じゃあ、あたしはなんかオススメで」
「ラーメンあるけど辛いよ?」
「のぞむところっス」

 文句があるんならいつでも喧嘩上等っスよ。

「あと、ふたつください」
「なん・・・・・・ですって・・・・・・!?」

 ほむら、落ち着け。どうせおまえ醤油ラーメン食べたあとあたしと同じやつ頼むだろ。

「はいっ注文確定。醤油ラーメンとラーメン二丁ね」
「お願いします」
「よろしくおねがいさしすせそ」

 うぁぁぁ、て・・・店主が厨房であたしとほむらのラーメンを練り作り始めてる。

「う あ あ あ あ あ」

 ほ、ほむ!? ほむらおちつう あ あ あ あ あ。

「うぁぁぁ!?」

 じ・・・地元の常連客が練り入店してきてる。

「はいっラーメンお待ち」
「う あ あ あ あ あ」
「う あ あ あ あ あ」

 な、なんだあっ。濃い茶色のスープの中にゴロゴロしたひき肉が練り潜入してる。

「おじさんオレいつもの」
「半チャンセット」
「ラーメン・ジョー、オナジノクレヤンケ」
「はいっ醤油ラーメンお待ち」

 ちょっと待って、最後ロボ混じってう あ あ あ あ あ。ほむらの注文した醤油ラーメンもう出てきた。

「はいっ着丼。ぶっ食べるわ」
「おう、喰え喰え」

 つかさっさと切り上げないとヤバイぞここ。なんであたし同じラーメン二杯たのんだんだよこのバカ。

「ず る る る る る」

 う あ あ あ あ あ。
 のどごしの良さに定評のあるあのバランスのいい極太ちぢれ麺選手がッッ・・・・・・。

「つ る る る る る」

 ホムラチャン!?
 怒らないで下さいね。そんな本物ののどごしの良い中華そば啜られたら、あたしがバカみたいじゃねえか。

「ずぞっ」

 ほむぅ!?
 ネギ・チャーシュー・メンマ。俺たち三人が中華そばを支える。ある意味“最強”じゃねーかいい加減にしろよてめえ。

「う あ あ あ あ あ」

 穴空きレンゲにひっかかったニラとネギはあたしの腹の中でもう荼毘に付したよ。
 うぉオン。あたしはまるで人間火力発電所だ。
 というか、このレンゲの穴空いてるヤツ、プラスチック製だ。
 プラスチック製! そういうのもあるのか。

「うぁぁぁ」

 ほむらおまえもう、ほむら!?

「ず る る る る る」
「う あ あ あ あ あ」

 なんで? あたしの頼んだラーメン二杯目もうほむらが喰ってるんだよ? 二杯目なんで?
 ほむらおまえ醤油ラーメン――もう完飲してるじゃねえか!!

「はいっ半チャンお待ち」
「ふーっ、やりますねえ」
「やめろっ」

 半チャンまで出てくると話がややこしくなるから。
 隣の兄ちゃんに半チャンが着弾するその間にも、ほむらはずるずるとラーメンを啜り上げていて、あたしはたまらず取り分け用のちっちゃいドンブリを手に取る。
 ほむらっ・・・・!
 もういい…!
 もう…。
 休めっ…!

「ず る る る る る」
「ず る る る る る」
「う あ あ あ あ あ」
「う あ あ あ あ あ」

 上に乗ってると思ってた卵、白身だけだったあああああ。
 底にしっかりポーチドエッグにされた黄身のほう居たわ。
 おいおいおい。
 分けるわコイツ。

「参ります」

 ほむら、入刀(割り箸)。
 スッ。半分こ。

「ヨシ!」
「やったわ」

 半々ぐらいがちょうどいい!

「ハムッ! ハフッ!」
「もそもそ」

 カッチカチ。玉子の黄身カッチカチだよカッチカチ。どうしてくれんのコレ?

「モソッ?」
「もそもそ」

 うぁぁぁ、く…口の中の水分が練り吸収されてる。
 あーそーゆーことね。完全に理解したわ。
 なんだろう。水分。確実に、着実に、脱けて行っている。あたしの口の中の方から。でも、止まるんじゃねえぞ、あたし。中途半端はやめよう。最後までやり切ってやろうじゃん。

「ゴッゴッ」

 地獄の門のご開帳だあっ。ほむらの胃袋にラーメン・スープを放てっ。

「カッカッ」

 ヒュンッ。
 ちいっ、なんでウェイトレスのおばちゃんなんか雇ってるんだよ。
 お冷やのおかわりのタイミング気持ち良すぎかよ。

「ゴッゴッ」
「ゴッゴッ」

 ぷはーっ、今日もいい天気。

「ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ」
「ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ」

 真夏の日差しにカラカラになった百億の細胞どもがキンッキンに冷えたクーラーの効いたラーメン屋で甦り、灼熱のラーメン・スープが五臓六腑に染み渡るぜ。
 あたしが、あたしたちが、ガンダムだぜ。
 ダム湖の奥に熱水噴出孔を隠し持った頑丈なダムだぜ。
 そしてあなたたちも一人一人がガンダムだぜ。
 いいな?

「ゴッ」
「ゴッ」

 はいっ完食しました。ぶっ生き返ります。

「ごちそうさまでした」
「ごっそさんっス。お会計オナシャっス」
「2200円ね」

 スッスッ。
 あたしが英世さんを二枚出すと、

「カッカッ」

 ほむらがその上に百円玉を二枚置く。

「丁度ね。毎度」
「ごちそーさまっしたあーっ」
「ごちそうさまでした」

 改めて厨房のラーメン屋にも声を掛けると、暖簾の奥の顔がニコっとする。白いTシャツの下のその乳首はきっとピクピクしている。
 そうして外に出ると、ほむらが元来た方を指差し、言う。

「わたしは東」
「あたしは西」
「そこに」
「なんの」
「違いも」
「ありはしないわ!」

 ガシッ。
 あざーす。
 あたしとほむらはラーメン屋の前で解散した。
 そして夜になって集合した。ディアスポラを経て、再びバベルの塔を建て始めたわけだ。
 結果としては、今日一日、なんの成果も!! 得られませんでした!!


《完》


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?